暗黒にまみえる背徳の司祭 共通②
「ただいま」
「ああ……おかえり聖愛」
兄は暗い顔をしている。
「おかえり、荷物をおいたらすぐにリビングへ来てくれ。話があるんだ」
なにやら重たい空気が辺りに漂う。
「話って?」
「お前は養女なんだ」
「え!?」
――私が本当の娘ではない?
今までそんなそぶりはなく普通の家族として暮らしてきたのに、鈍器で頭を殴られたかのような衝撃を受けた。
「そして本当の父親が生きていて、お前にはその人が決めた婚約者がいる」
「婚約者……私と結婚する?」
気がつけば私は家を飛び出していた。
「はー……はぁ……」
体力が限界になり、きれいな建物の庭に私は倒れこむ。
「大丈夫ですか?」
目が覚めると薄い茶の髪をした神父が私の顔を覗き込んで心配していた。
「はい、ごめんなさい」
「急に立っては……」
起き上がろうとすると、制される。
「でも、早く帰らないと……」
――帰ったら生まれた時から家族のフリをしていた他人がいて知らない相手との結婚が待っている。
「荷物を持たず走っていたところを見ると、家出の類いではなく何か危険から逃げてきたのですか?」
そう思うと気は重くなり、立ち上がりたくない。
「実は……」
出会って間もない相手だが彼は神父だから、こんなことでも吐露出来る気持ちになってくる。
「では暫く、ここで祈ってみてはどうですか?」
なんか、つい最近見かけた金髪の男もそんなこと言っていた。
困った時は無駄だとしても祈る事しかできないものだなあ。