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屁たれたちの挽歌  作者: 栗須帳(くりす・とばり)
11/19

11 さらば友よ

 


「分かった、直美ちゃんはフリーの方がええんやな」


 建物の陰に隠れて、五人が作戦を練り直していた。


「当然やん。こんなん、ペア組んだら足引っ張られるん目に見えてるもん。さっきの二人見て、よぉ分かったわ」


「ほんだら……俺は藤原、お前と組むわ」


「おぉ」


「ぼ、僕は?」


 本田が泣きそうな顔で聞く。


「心配すんな、お前は坂口さんと組んだらええ」


「……う、うん……分かった……」


「坂口さんは、それでいいですか」


「ああええよ、何とかなるやろ。それよりな、ここにきて一つ問題が起こったんや」


「え……なんですか、問題って」


「聖水がなくなってしもたんや。最初に景気よぉ使いすぎた」


「は、はぁ……」



 その時、本田のポケットから携帯が突然なった。


 健太郎が頭を抱える。


「おえ本田、お前何考えとんねん。こんな所に携帯持って来て、何に使う気やねん」


「うん。あのね、宏美ちゃんと連絡取り合うんに持っててん」


 本田が携帯を手にする。


「アホやめとけ、罠や罠や」


「大丈夫やって。ほら、画面にも『宏美ちゃん』って出てるやろ」


 健太郎が止める間もなく、本田が話し出した。


「はいもしもし、宏美ちゃん?」


 しかし携帯の向こうから聞こえてきた声は、当然の如く宏美ちゃんではなかった。


 低い男の声だった。




「…………アホ」




「え……?」


 そう漏らした声と共に、本田が白目を剥いて倒れた。


 耳から灰褐色の脳味噌がどろりと流れ出し、そして四人の前で見る見る内に石化していった。


「そやから()うたやろが……」


 健太郎が頭を抱えた。


 坂口は好奇の目を本田に向けている。


「なるほどなるほど……これが石化の瞬間なんか」


 直美がすっくと立ち上がった。


「私にまかせてもらうよ。次は銃や。銃がどんだけ効くんか試してみる」


「お……おえ直美ちゃん、こんな所で銃撃ったら周りの石像に聞こえてまう、やめときって」


「気ぃ弱いなぁほんまに。金玉ついてるんやろ。そん時はそん時やんか」


 言うか言わないか、直美は本田の額に向けてSIGを構えた。



 ボンボンボンッ!



 三発の銃弾が顔面にヒットした。


 顔にひびが入り、首から上がボロボロと崩れ落ちた。


「それから……ショットガンや。おい脂肪、ちょと貸し」


「お、おぉ……」



 ズドンッ!



 本田の腹に大きな穴が開いた。


 しかしまだ、本田の体は動いている。


「やっぱし、とどめはこれやね」


 そう言うと直美は、蹴りの猛蹴をぶちかました。


「うおおおおおおおおおっ!」


 最後に股間に一発蹴りを入れると、本田の体は完全に粉々になった。


「やっぱ、銃もあんまし役に立たへんね。肉弾戦の方がてっとり早いわ」


 そう言って再び額の汗を拭った。


 坂口が粉々になった本田の残骸を前に、十字架を掲げてぶつぶつとつぶやく。


「君の事を我々は生涯忘れないだろう……速やかに汝の魂が神の元へと辿り着ける事を我らは祈る。汝の魂に永遠の安息がもたらされん事を。アーメン、ナンマイダ」


「本田……」


 健太郎と藤原も、坂口に続いて手を合わせる。


「ほんで、山本君」


「はい」


「いやな、もう聖水がなくなってしもたからな、代わりにな」


「分かりました」


「しゃあないですね、ほんだら……」




 ジョオオオオオオオオッ!




 健太郎、藤原、坂口が本田の残骸に向かい小便をかけた。


「本田、すまん!これで勘弁してくれ……往生してくれっ!」


「ダークジェノサイト、お前の事は忘れんからなっ!」


「アーメン」


 その時であった。


 健太郎が妙な気配を感じ、慌ててチャックを閉めて言った。


「坂口さん!」


「ん?どないした」


「どないしたやおまへんて。今の銃声で石像らがこっちに気付きよったみたいですわ」


「私は単独行動とらしてもらうよ」


「よっしゃ、ほんだら直美ちゃんはやつらをかく乱してくれ。好きなだけ暴れてや。俺らはかたまって行くから」


「そうさしてもらうよ。生まれて初めてやから楽しみなんよ、リミッター外すん」


「ほんだらな……」


 健太郎が腕時計を見た。


「今は9時半……昼の13時に藤原のマンションに集合や。そんで涼子ちゃん助けて一気に脱出する。ええな、直美ちゃん」


「ええよ、こっからやったら約5キロやろ、十分やんか」


「僕は首に十字架さげてと……よし、行こか」


「はいなっ!」



 石像たちが徘徊する中、四人が一気に走り出した。




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