澄み渡る風と晴れた夜 ‐すみわたるかぜとはれたよる‐
意思の力には個性がある。
時に、その形や性質を変えていく。
世界はそれを『クオリア』と呼んだ。
精神工学が発達し、今まで見ることの難しかった多くのクオリアが認識できるようになってから、そんなに年月は経っていない。
その黎明期からずっと共にある『リアライズ』、
その『部隊ハルスミヤ』の部隊長が俺、晴澄夜だ。
リアライズは企業とも宗教とも言い難く、共通認識のようなものだ。
最高幹部とかそういうものは無く、それぞれの部隊がそれぞれの目的を持って活動しており、個人で活動している部隊も多くある。
部隊ハルスミヤの隊員は今のところ
俺 晴澄夜と、
凉詠夜、
曜極夜、
揺蕩夜、
焜槻夜の5名。
夜型体質な者達が集まったため、主に午後から夜にかけて活動している。
部隊ハルスミヤの主な活動は、精神工学の哲学的研究と広報部隊への情報提供だ。
あらゆる情報や事象現象などから総合して、その影響、原因、対策などを導き出し、クオリアの発展に役立てていく。
大掛かりな研究設備を私有しているわけではないが、隊員ひとりひとりの知識や分析力が重要な設備ともいえ、そのクオリティの高さは結構自慢したい。
そしてわりと良質なものを提供できているらしく、生活に少し余裕ができたので、最近部隊の拠点兼住居を建てた。
個室が充分にあるので、ほとんどの隊員はそこで生活している。
俺も、やっと落ち着ける自分の空間を手に入れる事ができた。
夜型体質という事は、かつて日中の生活で何かしら強いストレスを感じていたのだろう。
夜は一人になれる。
そんな病んだ隊員達を癒すのも、俺の重要な仕事だと自負している。