7.プレゼント
(ん〜、男の子も買い物長かったりとかするんだ…)
なんて備え付けのベンチで何度思ったことか。
新しく出来たというショッピングモールは田舎で土地が広いだけあってかなりの店舗が入っていてちょっと圧倒された。
都会は狭いとこに所狭しと並んでたりするからなぁ。
通路がものすっごく余裕を持って設計されているのは田舎ならではだと思う。
かれこれショッピングモールに来てから早2時間。
ショッピングモールまで来たはいいんだけど…。
(岳ちゃんにようちゃん取られちゃったよ…)
一人だけ置いてけぼり。
なんだか女の私がいると不都合らしぃ。
…クリスマスだっていうのに一人残されるってどぉよ?
周りを通るのはカップルばっかり。
「………」
確かに一人だけ女の私って邪魔かもしれないけど…。
(女の意見聞こうとか思えないわけ!?)
って考えてもみても私がプレゼント探しに役立つとは自分でも考えられないから…まぁしょうがないか。
手当たり次第ってわけじゃないけど、いくつかのお店回ってみたりはしたけど…。
(霞いないと選べない私って…)
どうしても今までどおりの服装になっちゃう。
イコール霞の言葉を借りるなら女の子らしさが足りないらしぃ。
まぁ、帽子で髪隠してる時に逆ナンされたり…とかあったけどさ…。
…やっぱりちょっとは霞の助言聞こうっと…。
赤い風船を持ってはしゃぐ女の子だったり、走り回る男の子。
ショッピングモールっていってもファミリーで来る人の方が多いみたい。
駐車場広かったし…この辺りほかに何もないからそんなものなのかなぁ。
色とりどりのリボンでラッピングされたプレゼントを持った男の子がはしゃぎまわってる。
(…あ、ようちゃんのプレゼント…)
ようちゃんも岳ちゃんも見える所には居ないし…。
携帯電話を手に取ると慣れた手つきでボタンを押す。
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TO:小野 陽輔
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ちょっとブラブラして
るから終わったら教
えてねー。
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『送信完了』の文字を確認するとベンチから立ち上がる。
買おうと思ったものは頭の中では一つ。
目的のお店に着くとウィンドウの中を覗き込む。
あんまりブランド物には興味がないからこういうのってよくわからない。
でも、前に『財布が壊れた』って聞いたことがあって、パーキングで見たときの財布も変わってなかったから多分まだ買ってないはず。
だからプレゼントはお財布。
いつもポケットにいれて持ち歩いてるからあんまり分厚いのは却下だし、長財布は持たないみたいだからそれもなし。
ずっと使ってほしいからしっかりしたものがいいよなぁなんて事を思いながらウィンドウを回っていると。
(あ、あれ、ようちゃんに合いそ…)
見つけたのは二つ折りの皮財布。
とてもシンプルでどんな格好の時でも違和感がなさそうなデザイン。
大きさも多分今ようちゃんが持ってる財布とあまり変わらないと思うし。
(…あ…バイト真面目にやっててよかったかも…)
値段を見ると一応手持ちのお金で買えるし。
「すいませーん、この財布お願いします」
「コチラですね。プレゼントですか?」
「あ、はい」
綺麗な店員さんに案内されてお会計を済ませ、綺麗に包装された商品を受け取るとなんだか一気に恥ずかしくなる。
(…買っちゃった…)
プレゼントが持ってる鞄の中にすっぽり入る大きさだったのはよかったかもしれない。
そんなことを思ってると鞄に入れていた携帯が着信を告げる。
「ようちゃん?」
「朱〜?こっち終わったけど今何処にいんの?」
…ここにいるとは言わない方がいいよなぁ。
「ようちゃん達こそ何処にいる?」
「最初に別れたベンチのトコだけど」
「んじゃそこまで戻るねー、5分ぐらいで着くと思う」
「迷うなよー」
「くどいってばw」
携帯を切ると買ったプレゼントを鞄の置くに見えないようにしまいこむ。
(果たして渡すことなんて出来るのかな)
なんて思いはするものの待たせたくないので慣れないヒールで頑張って歩く。
そんなに目指したお店が遠くなくてよかった。
「何か買った?」
「え?あ、ううん…」
ついそういった言葉を肯定してもらおうと岳ちゃんに助けを求めるが…。
「朱美…お前嘘つけないんだから諦めろ」
あいにく通じなかったらしい。
「――ちょっと小物…って、そんなことよりプレゼント何にしたの?」
「内緒w」
「えー!ずるい!私には聞いといて!」
「それは朱美が嘘つけないだけだろー」
そんな感じで岳ちゃんとじゃれてるとガシッと後ろから本日二回目の羽交い絞めを受ける。
「ようちゃ…」
「お前時間ないんだろ?」
「そうだった、んじゃ、朱美また三人で遊ぼうぜ。俺これからデートだから〜」
…なんだろ…そういえば昔もあの子のとこ行く時の岳ちゃんって年相応に見えたっけ。
ってか、ここまで人のデート邪魔しといてデートかぁ〜。
…いいなぁ。
「ほら、朱、ぼーっとしない!俺らも行くぞ!」
「え?何処に?」
岳ちゃんとの別れを惜しむ暇もなく強引に歩き始めるようちゃん。
「東京」
「――って帰るだけじゃんかぁ〜」
イルミネーション綺麗だっていうんだから見て行くのかと思ってたのに…。
でも私の抗議の声なんかまったく聞かず、どんどん歩いていくようちゃんに引っ張られるような形でショッピングモールを後にする。
「こっちよりも回るとこは一杯あるし。ってか、予約に間に合わなく…」
「…予約?」
何それ?
聞いてない。
何か予約したの?
「――ぁ…っと――…なんでもない」
あ、視線そらした!
しかもあからさまに!!
なんかあるんだきっと。
「ねぇ予約って???」
「なんでもねぇーってば」
「ねぇねぇ!」
「なんでもねぇーって言ってるだろ!」
「そんなことない!絶対何か隠してる!」
なんて会話をしながら半分以上追いかけっこみたいな感じで私達は朝来た道をトンボ返りしたんだ。