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6.大切な場所

本日も2話更新しています。始めに《5.パーキングエリア》をお読み下さい。

やっと目的地である地元についたのはそろそろ昼になろうって時間帯。

だから。


「遅い!」


って言われてもまぁしょうがないんだけど…。


「いーじゃねーか、混んでたんだから」


ようちゃんってば…平然と嘘ついてるし…。

結局パーキングエリアに30分以上いたしなぁ。

あ、でも言うなって言われてるんだっけ。


「…目が泳いでるぞ、朱美」

「…え、な、なんの…」

「お前相変わらず嘘下手だなぁ」


なんで皆私が嘘付いてるってわかるのかなぁ。

霞に限らず友達全員百発百中っていうのも…どうかなぁ。

しっかし…確かに会わなくなって10年近く経ったけど…岳ちゃん身長伸びすぎだから!

むぅー3人仲良しこよし的に身長伸びてたはずなのに…いつ頃から私だけこんな低くなったんだろぅ。

くやしいなぁ。

ようちゃんの隣にいても全く違和感ないのは小さい頃から一緒だったからか…それともようちゃんに負けず劣らず整った顔立ちをしているからか…。

ん〜、二人とも私と駈けずり回って泥んこになってた仲間だったはずなのに…。

…あ、私だけ?

垢抜けてないの。

――今度から霞の言うことに耳傾けようかな…。


「しっかしお前クリスマスに呼び出すとはいい度胸だよなぁ」

「ふっ、それで来るお前もなw」

「んで?なんだ?頼みたい事って」

「プレゼント買うの付き合えよ」

「はっ!?おまっ――それだけの為に呼び出したわけ!?」

「だってお前今年暇だって言ってたじゃんか」


あ、なんかようちゃんが何も言わずに威嚇してる。

この二人って見てると楽しいんだよね、昔から。

相容れなそうな感じな癖に息ぴったりだからなぁ。


「んで?どんな奴なん?」

「ん。あの子だよ」

「は?あの子って言ってもわかるわけ…――ってもしかしてガキの頃の?だってお前名前しか知らなかったじゃねぇか」


小さい頃??

っていうと…よく公園に居たあの子かな?

3人で遊んでてもあの子見つけると岳ちゃんあの子のとこ行ってたしなぁ。


「まぁホント偶然。お前らと一緒だよ」

「ってか待てよ?なんでわざわざこっち呼び寄せた?お前だって都内暮らしだろーが」

「まぁそれはちょっと…ね」

「なんだよ」

「しらねーの?最近この辺りよく紹介されてるじゃん」


あ〜、そういえば。

なんか大きなショッピングモールが出来て、そこのイルミネーションがすごい綺麗らしくてよく中継入ってたかも。

来ることないと思ってたから聞き流してたけど…。


「なぁ朱美?」

「え、あ、うん。あんまり詳しく見てないから詳しくはないけど、そんな特集してたね」


急に振られるとは思ってなかったからビックリしたよ〜。

また顔に出てたのかなぁ?


「ふーん。で?何買うんだ?プレゼント」

「あ〜それは…」


ん?

何?

なんで私見てるの??


「――陽輔は買ったのか?」


なんでそこでようちゃんなんだろう?

あ、でもそれ知りたい。

あげる相手いるのかなぁ?

あ…私せっかくクリスマスだっていうのに…プレゼントなんてすっかり忘れてた!

――どうしょう…。


「俺の事は…どうでもいいだろ」


だからなんで二人して交互に私を見るんだってば。

私なんも発言してないよ?


「へぇ。ま、お前でも苦労することあるんだな」

「…なんとでも言え」


ん〜、なんなのかよくわからないけど…。

話がわからないから…つまんなぃ。


「ようちゃん、岳ちゃん。懐かしいしちょっと向こう行ってくんね」


そういって背を向けた私に向かって、


『迷子になるなよー』


って…幼馴染二人に揃ってそういわれる私って…。


「――…そんなに方向音痴じゃないゃぃ」


なんてつぶやいてみたって絶対二人には聞こえてないとは思うんだけど。

今年のエイプリルフールにも一度はここに来たけど、あの時は突然の再会でバタバタしてたからあんまりゆっくり見て回る時間なんてなかったんだよね。

10年間お世話になった土地。

エイプリルフールの時には全然気付かなかったけど、町並みにあまり古さを感じなくなったなぁ。

なんだろ?

近代的になったって言えばいいのかも知れないけど…。


(昔の方がいいなぁ)


なんて思っちゃう私はちょっと町の発展を考えなさすぎ??

ん〜でもなんか…古いっていうか赴きのあるあの町のがしっくり来るのはそういう町で育ったからかなぁ。

確かに見慣れた感じなんだけど…近代的ってちょっと冷たい感じがするんだよね。

なんか古い建物の方が温かみがあるっていうか…。

ん〜、なんなんだろうね。

歩く足は自然に自分の家があった方へと進む。

生まれてから10年間育った家。

人に売っちゃってそのあとどうなったのか見てないんだよね。

春の時はそんな暇なかったからなぁ。

駅からは近いから二人に怒られることもないだろうし。


(えーっと、ここを右であそこ左に曲がった角だよね)


小さい時は何度か道を間違えて家にたどり着かなかったことも何度か…。

父さんがよく探してくれたみたいだったけど、何処にいてもまず私のこと見つけるのはようちゃんだったんだよなぁ。

あの辺りから多分幼馴染以上になったんだと思うけど…。


(あ、ここ…)


駅から歩いて5分足らず。

心躍らせて歩いて来た場所にあったのは――何もない空き地。


(そっかぁ、壊されちゃったんだ)


なんか…ぽっかり穴が空いたみたい。

確かにここに私の家があって、皆でワイワイしてたのに…。

今は私の家でもないし、全然違う人の土地だっていうのはわかってるんだけど…。


(ちょっと…残っててほしかったなぁ…)


例え自分の家でなくても…。

物心付く前から住んでた家。

ようちゃんの家とは違って私の所は父さんの転勤で引っ越しただけだから、変わったのはホントに家だけなんだけど…。

それでも…10年という歳月を過ごした家がないのはどこか寂しくて。


「――朱美?」


そう耳元で呼ばれるまで呆然とその前に立ってたんだ。


「あ、行く?」


振り向いた先にはようちゃんと岳ちゃんがちょっと心配そうに私の事を見て、次に何もなくなった空き地に視線を移す。


「ん、あぁ、…家、取り壊されちゃったんだなぁ」

「ん、そうみたい」

「ま、家がなくなっても朱美が忘れない限りはここは俺達の地元だろ?」

「――…うん」


なんでだろうね。

さっきまであんなにも寂しかったのに…今は温かい。


――家がなくなっても、私はここで育った――


そうだよね。

私はここで10歳の誕生日を迎えたんだ。

家がなくなってしまっても…私は覚えてるから。

それでいいよね。


「んで?何処行くの?」

「あぁ、ショッピングモール行くつもり。二駅先らしいしな」


そういいながら私は空き地に背中を向ける。

私の生まれた家。

私が育った家。

たくさんの思い出が詰まった家。

そして…なくなってしまった家――。

――でも…、大事なことを教えてくれた家…。


「――…ありがと」


チラリと振り返った時に小さく呟く。

隣を歩く二人にも聞こえないぐらいの小さな声で。


「朱?なんか言った?」

「ううん、なんでもないよ」


きっとまた来るね。

――私の育った大切な場所に。




明日は3話更新いたします。全部で9話構成になっていて、明日はいよいよラストまで。楽しんで頂けるといいのですが(´∀`)

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