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4.ドライブ

本日も2話更新しています。《3.当日》からお読み下さい。

駅までの道のりはそんなに長くはないんだけど、履きなれない靴での歩く練習には丁度いい。

ヒールのせいか見える景色がちょっと違う。

そんな些細なことが嬉しく感じちゃうのは今日という日をようちゃんと過ごせるからかなぁ?

いつも10分もかからない道のりが今日は15分。

早く出てきててよかったかな。

駅にある人の気配はそんなに多くはない。

駅まで迎えに来るって言ってたから改札まで行こうかな――と、駅の階段を上がりはじめた途端。


――ブッブー


と、大きな音がするので振り向くと、ロータリーにある青い車の窓が開く。


「朱美、こっち」


運転席から助手席側に顔を乗り出して名前を呼ぶのは大好きな顔。


「ようちゃん!…うっわっ!!!」


数段ある階段を駆け下りようとして履きなれないヒールで躓いてこけそうになる。


「朱っ!?」

「えへへ…ごめん、平気」


なんとか踏みとどまって舌を出す。

ようちゃんを見ると…やっぱりというか…呆れ顔。

あはは…やっちゃったなぁ。


「ったく、気をつけろよなぁー。ま、早く乗れよ」


そういってようちゃんが中からあけたドアから、ようちゃんの車に乗り込む。

車の中は結構綺麗に片付いていて、置かれたクッションがふかふかで気持ちいい。

駅集合っていうから電車で行動するもんだとばかり思ってたから、慣れないヒールで歩くの頑張ろうと思ってたけど…、車での移動ならそんなに苦にはならないかもしれない。


「ようちゃんが車持ってるなんて知らなかったよー」

「あー、言ってなかったっけ?」

「全然!持ってるって知ってたら行きたいトコ一杯あったのになぁ〜」


知らなかったよぉ〜、車持ってるって知ってたら二人で色々行けたじゃんかぁ〜。

ん〜、まぁそれは別にしてもホントに行きたいトコ一杯あったんだけどなぁ。

友達皆車持ってないし免許もないからいけなかったトコ。


「んじゃ来年でいいか?」

「え?何が?」

「行きたいトコあるんだろ?」

「え?連れてってくれんの!?」

「だって、行きたいんだろ?」

「うん!約束だからね!」


やった、やったw

これって…誘ってもOKってことだよね!?

あ…でも…。


「じゃぁようちゃんに彼女居なかったら誘おうっと♪」

「おぅ。約束だからなぁ〜?朱に彼氏居たって行くぞ?」

「あははw来年も彼氏なんていないと思うよ〜」


(ようちゃん…私に彼氏なんて出来ないよ。出来るとしたらようちゃんだけだもん)


なんて、心の中で言ってもしょうがないか。

車はスムーズに駅のロータリーを抜けていく。

なんていうんだっけ?

あんまり車とか詳しくないからわからないんだけど…多分コレ運転の難しい車。

ん〜っと『まにゅある』って言ったっけ?

ようちゃんの手が忙しなく動いてく。

前を見ながら真剣な顔をしている姿がすっごくカッコイイ…。


「朱?どした?顔になんか付いてる?」


――見惚れてた――なんて言えない…よね。


「え…と、何処向かってるのかなぁ?って」

「あ〜、一回地元の方戻ろうかと思って」

「地元?」


地元っていうのは多分、あの丘の木があるところ。

今は二人とも戻るべき家はないけど…。


「そ、岳伊匠タケイ タクミって覚えてる?」

「え?岳ちゃん?」


岳伊匠っていうのは私ともようちゃんとも仲のよかった男の子の名前。

地元から引っ越してから会うことも連絡を取ることもなかったけど。


「そ。引っ越してからあいつとは連絡取ってたんだよ。知らなかっただろ?」

「…ぇ、だって、岳ちゃん知らないって…」


確か…ようちゃんが引っ越してすぐに仲のよかった岳ちゃんに聞いたら…岳ちゃんも知らないって…。


「俺がそう言えって言ったからな。ってか、朱今連絡取ってないだろ?」

「うん、引っ越す時携帯とかも持ってなかったし」


お互いなんかようちゃんが間に居なくなったら縁遠くなっちゃってたし…。


「こないだ匠の方からメール来てたからさ、朱美のコト話したら会いたいってさ」

「岳ちゃんなんて懐かしい〜!!会う、会う!」


懐かしい!!

岳ちゃんって確かすっごく綺麗な顔してたから…、今はもっと綺麗なのかなぁ?

私とようちゃんと同じでやっぱりやんちゃで、かといってそれだけじゃなくて頭もよかった岳ちゃん。

会いたいけど…でも…それって…二人っきりじゃなくなるってことだよね?

うぅ…デートだって思ってたの私だけだったのかなぁ。

運転していて前を見てるようちゃんの顔をジーっと見つめてみるけど…そんなことわかるわけもなくて。


「朱?今度は何?」

「…なんでもないよーだっ」


子供っぽいのなんて自覚してるけど…でもなんか…二人っきりで過ごせると思ってたんだけどなぁ。

はぁ…あ〜でもドライブなのは変わらないよね??

地元行くまでは二人っきりなわけだし…いっかな、それで。


「どれくらいで地元着くの?」

「ん〜、この調子だと2時間くらいかな」


車はスイスイと走っていく。

もっと混んでたら一緒に居られる時間長くなるんだけどなぁ〜とは思っちゃうのはしょうがないよね?

まぁでも2時間は二人っきりの時間なワケだ。

っていっても特に何かっていうのないんだけど…。

意味もなく好きな人のコト見つめてしまうのはしょうがないよね??

どんなに見てても飽きないんだから…ん〜、不思議だ。


(ようちゃん睫長いなぁ。…私より長いかも?…うぅ〜なんか…負けた気分…)


今まで気付かなかったことに気付いて一喜一憂。

これもデートの醍醐味――だと思う。

これが初めてだからよくわからないけど。


「そいや朱普段そういう服着るの?」

「へ?えと…ううん、着ないけど…」

「そ?まぁ…その方がいいよ」


チラッと私をのカッコを上から下まで見てからそういったようちゃん。

――似会わないってことだよね…、それって。


「…似合わない?」


って思った瞬間口に出す私も私。

これで肯定されたら…今日一日ブルーかも知れない…。


「あ〜、いや、そういう意味じゃなくて…似合ってるよ。友達の見立て?」

「あ、うん」

「あんま頻繁にそういう格好するなよ?」

「なんで?」

「…動き難いだろ?」


ん〜、どういう意味なんだろう?

…似合ってるって思っていいのかなぁ?

それとも遠まわしに違うって言われたのかなぁ?

ん〜、よくわかんない。


「もっと違う格好の方がよかった?」

「あ、いや…今日は車だし…、動き難いとかないだろ?」

「ん、まぁ…」


んーよくわかんなぃ。

何考えてるんだろ?


「――あんま深く考えなくていいから」

「…うん」


まぁ…ようちゃんがそう言うんなら…きっとそうなんだよね?


「そいや朱、車酔いとかしない?」

「ん〜、多分…かな?あんまり車って乗ったことないから」


修学旅行とかのバスぐらいだろうか?

家族でどっか行くとかだったら電車だったし…両親共に免許持ってなかったしなぁ。


「え?今まで彼氏とかと出かけたりとかしなかったのか?」


(それをようちゃんが聞くの?…なんか…イヤだよ…)


って思っててもそれを表に出したりなんて出来ないんだよね。

ようちゃんは私のことどう思ってるんだろう?

妹…みたいな感じなのかなぁ?


「出かけたり…ってか、彼氏って居たことないもの」

「…ぇ」


なんでそんな驚いたような顔をするんだろう?

私…そんなに遊んでるみたいに見えるのかなぁ?


「ようちゃんは彼女一杯居たんでしょ?」


知ってるんだよ?

ようちゃんって大学生の間で結構有名だもの。

ようちゃんに再会してからそういう話があるの知ったんだよ。


「…ぉぅ」

「モテるんだね」

「…さぁ」


ん〜、なんか話題間違えた…よね?

この雰囲気は…なんかすっごくようちゃんの空気が淀んでる…。


「朱…好きな奴居るだろ?」

「――っ!?」

「…図星かぁ」


な、なんでようちゃんがそんなこと知ってるの!?

え!?

私、そんな態度取った???

いつ!?

…ん〜、記憶にないぞ?


「どんな奴?」

「え…と…」


目の前にいる…とは口が裂けても言えない…よね?


「――バカで、優しくて…しっかりした人――かな?」

「――そか」


も〜恥ずかしくてようちゃんの顔見れない…。


「…クリスマスなのに俺でいいのか?」

「え?なんで?」

「本当はそいつと居たかったんじゃねぇの?」


えっと…コレ…バレてはいないってコトかな…?

でもでも…他の人といた方がよかったんじゃないかなんて…ようちゃんの口から聞きたくないよ…。


「…誘えなかったんだもの」


(……私からは)


まさか相手の方から誘ってもらえるなんて思ってなかったし…。


「ようちゃんこそ…。いいの?クリスマスに隣に居るのが私で」

「――いいんじゃね?気兼ねしなくていいし」

「――そっか」


あ…そうなんだ。

私――女として見られてないんだね。

…なんか…霞に女っぽくしてもらったのに…ね。



車内の雰囲気はなんか険悪で…せっかくのクリスマスなのに…何してるんだろ…。

車はスイスイと景気よく走っているのに…。

見かける店見かける店クリスマスの飾りをこれでもかっていうぐらいしているのに…。

その後無言のまま、目的地までの道のりは段々と狭まっていった。



毎日2話ずつ更新いたします。全部で9話構成になっています。

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