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2.買い物

今回は2話更新されています。≪1.約束≫からお読み下さい。


「ほら、早くっ!!」


目の前で睨みを利かすのは親友のカスミ

黒のストレートロングに白いコートがよく似合っている。

普段は見た目通り凄く優しい子。

なんだけど――彼女は…妥協を知らない。

絶対にひかない彼女の趣味の一つが――『着せ替え』――。

――っていっても別に変な服じゃないんだけど…。


「朱美っ!早く試着してよね」


――顔怖いよ…霞さん――なんて言えるわけもなく…。

手渡されたのは淡いピンクのワンピース。

可愛いよ??

確かに可愛いと思うんだけど――。


「私には似合わないってば〜〜」

「着なきゃわかんないでしょー、朱美はいつもあっさりしたもの着すぎなのっ!たまにはこういうの着なきゃっ!!」


霞いわく、綺麗になれるのにそれをしないのは許せないらしい。

今のターゲット――私。


「早く!」


まさに鬼のような形相で睨む霞に勝てた事はないけど――それでもここまで意見を受け入れて貰えなかったのは初めてだ。


(…なんかしたかなぁ〜)


普段よりも高めに設定された試着室でワンピースを眺めながら考える。

霞に買い物を付き合って欲しいと言ったのは昨日。

ホントは昨日のうちに買い物行きたかったけど――霞に用事があったから今日になった。

そう、今日はクリスマスイブの前日――。

時間なんて――ない。

諦めると着ていた服を脱いでワンピースを着る。

生地のせいか考えていたよりも温かかった。

ジーンズを脱いで鏡を見ると見慣れないものを着た自分の姿。


(やっぱり似合わないよなぁ)


ここで脱いでしまうとまた着ることになるのを長年の経験で知っていたから――。

諦めてカーテンを開ける。


「どぉ?」

「………」


ほら。

霞が何も言わない。

やっぱり似合わないよねぇ〜。

あー落ち込む……。


「脱いでくんね」


そういってカーテンを閉める。

鏡に映る自分の姿がとても滑稽に映る。


(……なんか…やだなぁ〜)


似合わないとは思ったけど――まさか絶句されるなんて――。

手早く着替えて普段の恰好に戻ったけど――なかなか出ていく気にならない。

座り込んでは鏡に映る自分をみる。


(――なんか…惨めかも…)


視界がボヤけ始めるのを慌てて抑える。

それでも止められなくて、抑えられない一滴の涙が頬を伝う。

その時――。


「朱美〜早く出てきなさいよっ!」


急かすような霞の声がする。

それに身体が反射したかのように無意識にカーテンを引く。

そこには頬を紅色に染めながら――目を血走らせている霞の姿があった。

私が口を開く間もなく霞の手が私に伸び、掴まれたかと思った瞬間思いきり腕を引っ張られる。


「もぅ〜時間ないんだからねっ、靴とコートと…あー小物も欲しいわねっ!」

「ふぇ?」

「あ、そのワンピ買いだからね!これ絶対っ!朱美の意見は受け入れられないからねっ」


そう強く念を押され、わけの解らぬまま頷くと満足そうな笑みを返される。


「さ、ブーツブーツ♪」


今までに見たこともないぐらい機嫌のいい霞に引っ張られながら、その後も靴や鞄、抵抗も虚しく今まで殆ど使ったこともない化粧道具を購入することになった。

化粧道具の購入に頷いた時の霞の満面の笑みの理由わけを知るのはもう少し先の事。

両手にある色とりどりの紙袋を眺めると何だか気が重くなる。


(これ――明日着るんだよね…)


普段着ているものと真逆と言っても過言ではないだろうと思う。


(――笑われるぐらいなら、着ないって選択肢もありかなぁ〜、霞には悪いけど)

「んじゃ後は朱美の家でね♪」

「ぇ?家?」

「あったり前じゃなぃ♪明日の朝は完璧にしてあげるから大船に乗ったつもりづいいよ♪」


(――絶対に好意だとは思うんだけど…思うんだけど――、それじゃ服選べないじゃんっ!!)


なんて私の心境などご機嫌な霞が気付くわけもなく…満面の笑みを浮かべる霞を断る事も出来ず――、私の家を知ってる霞を巻くことも出来ず――、私達は二人仲良く家へと帰宅(?)したのであった。



――クリスマス・イヴまであと6時間。





毎日2話ずつ更新いたします。全部で9話構成になっています。

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