【陽輔編】7.プレゼント
朱美となんとか別行動を取ることにして別れた後、俺と匠はショッピングモール内を適当に歩いていた
「んで?もちろんどんなん買うかぐらいは決めてるんだよな?」
俺は適当…って感じだったけど、匠はどっかを目指しているような感じだったから、そんなことを聞いてみる。
「…まぁ…一応…」
「何買うんだよ?」
まぁもとから匠が決めたもんにケチつける気なんて毛頭ない。
だって相手の趣味も好みもわからないどころか、話したことすらないんだぜ?
いくら女と遊んでた過去を持ってる俺にしたって、選べるわけがねぇ。
まぁ多分匠はそんな風に考えちゃいないだろうけど。
付き合って日は浅そうだし…小物系かな?とかって思ってたら。
「…指輪…かなぁ…?」
え゛。
指輪って…おぃ…。
「匠何気に独占欲強いのな」
「…なんでそうなるんだよ…」
「いや、知らないんならいいわ…」
匠が指輪…ねぇ。
相当入れ込んでるんだなぁ…。
くっそぉ〜、俺だって朱美に指輪買いたかったけど…付き合ってもないのに指輪はあげられねぇよな…。
「んで?どんなの?ってかサイズわかってんのか?」
「9号。可愛い感じの奴なんだけど…」
「へぇ。一応目星は付いてる訳ね」
「この店」
匠が足を止めたのは全て一点物で有名なジュエリーショップ。
値段もそこそこ安くて学生とかにも人気がある店だ。
実際俺も何回か買ったし。
「いらっしゃいませ」
小奇麗にしたおねーさんがにこやかな笑顔を向けてくる。
…匠も俺もスルーだったけど。
チラッとおねーさんを見返してみると額に青筋が浮いてる。
綺麗って言える顔もあぁなると台無しだな…うん。
「陽輔、コレ」
匠に連れられて指を指されたショーウィンドウの中。
所狭し…とは言わないまでも、たくさんの宝石が立ち並ぶ中、匠が指を刺したRING。
「――へぇ…」
素直に感嘆の声を上げる。
女というよりは女の子らしいデザインのそれは、もしも朱美が嵌めるのだとすると少々甘過ぎる。
匠の彼女はきっと可愛い感じのタイプなんだと認識する。
「ど?」
「いいんじゃね?彼女に似合いそうなんだろ?」
「あぁ」
ったく、意外に純朴なんだなぁ…匠は。
俺とも長い付き合いになる割りに…って、俺の周りにいる匠以外って全員遊び人……か…?
うっわぁ…朱美の事バレねぇよーにしねーと。
「んじゃ買ってくるわ」
「おぅ、待ってる」
予想外にすんなりとプレゼントが決まったこともあり、結構手持ち無沙汰。どーするかな?とかって考えながらショーウィンドウの間をブ
ラブラ。
しっかしクリスマス当日に男連れで来てるの俺達だけじゃん??
来てるとしても指輪の受け取りだからなぁ…、ちょー場違い。
…当日になんてくるもんじゃねーな。
そんなことを思いながら光を当てられてキラキラと輝くRINGをチラチラと見て回る。
まぁ、プレゼントは買ってあるんだけどな…、一応。
んーこのデザインは朱美には甘過ぎか??
このデザインだと…朱美指輪つけないよなぁ…邪魔とか言われそう…。
このデザインだと…お、結構いいんじゃなぃか???
そんなことを考えていると…。
「お待たせ。陽輔なんか買うのか?」
「あー、いゃ、見てただけ」
――買いたい…とは言えねぇよな。
「陽輔は何買ったんだ?朱美に」
「ネックレス。ちょうど探してたら似合いそうなのあって、即買いした」
まぁ普通は即買いする金額じゃないんだけど…最近遊んでなかったからなぁ。
金あったし。
ま、俺の場合は普通に独占欲だな。
自分の上げたもの身に着けて貰いたいし。
――最近自分が女々しい気がする…(泣
「ふーん、二人何処まで行ってるん?」
「――はっ!?」
噴出すってこういう時の事を言うんじゃないだろうか…。
口に何か含んでたら盛大に撒き散らしただろうな。
そんな俺の反応を見てほくそえむ匠の姿――。
「別にガキの頃一緒にお風呂入った――とかじゃなくて…な」
「んなこたわかってる!ってか、よく覚えてんな、そんな前の事」
「何気に羨ましかったからなぁ」
「――はっ!?」
本日二度目。
…何度やるんだろう…。
ってか、羨ましいって…何??
「お前知らないだろ?朱美同級の間で一番人気あったんだぜ?
」
「…朱美が??」
「そ。可愛かったからなぁ、朱美」
「…」
チョー複雑だ。
嬉しい。
正直嬉しいんだけど…、嬉しくない。
…俺以外のやつが朱美に気があったってゆーのが気に食わない――ってどれだけ独占欲強いんだよ俺…。
ガキの頃の話…。
「今もモテるんじゃね?本人気づかないと思うけど」
「…さ、さぁ?」
周りからはそう見えるのか???
確かに綺麗だと思うけど…これって俺が朱美を意識したから…じゃなぃ??
…何気に競争率高いって事か???
いゃいゃ、でも今まで彼氏いた事ないって言ってたし…いや、でも…。
「ぷっ、陽輔焦り過ぎだから(笑)お前マヂ本気なんだなぁ〜」
「…からかったのかよ」
「まぁーな。それに朱美は俺にとっても大事な幼馴染だしな。気まぐれじゃ困る」
前半はおちゃらけながらの癖に後半は至極真面目な顔で正面から俺の顔を見据える。
まぁ確かに俺の今までの付き合いって最低だったけど――って、言い返す言葉もねーな。
でも――。
「マヂだよ。自分でも笑っちゃうぐらいな」
今までの俺の経験ってなんだったんだと思うぐらい、朱美の一挙手一同に振り回されてる。
ホント、かっこ悪い――けど、こういう俺も嫌いじゃない。
「そっか…、ま、鈍感な朱美相手だと大変そうだけどガンバレや」
「ホントだよ。あの鈍感さは絶対親譲りだよなぁ〜」
「あぁ、知衣さん?ま、一樹さんでないのは確かだろうな」
朱美の両親の名前で会話が出来るのはそれだけ家族ぐるみでの付き合いが多かったから。
そーいゃ一樹さんも知衣さんもあれ以来会ってねぇんだよな。
今度挨拶行っとくかぁ。
「プレゼントも買い終わったし話題の幼馴染と合流しようぜ」
「そーだな」
二人して朱美と別れた地点に戻るが…。
「…いねぇ」
連絡を取ろうと携帯を取り出すとメールが来ていることに気づく。
(…ブラブラって…何処にいるんだ?)
面倒なので電話。
トゥルルル、トゥルルル――。
「ようちゃん?」
「朱〜?こっち終わったけど今何処にいんの?」
「ようちゃん達こそ何処にいる?」
「最初に別れたベンチのトコだけど」
「んじゃそこまで戻るねー、5分ぐらいで着くと思う」
「迷うなよー」
「くどいってばw」
電話の向こうでなにやら接客する声が聞こえたからどっかの店にいたのは確かだろう。
「朱美なんだって?」
「今から戻ってくるってさ」
「え…迷うんじゃないか?」
「ぷw幼馴染の意見は一緒だな(笑)くどいってさ」
匠とお互いに大事な幼馴染について話していると、向こうの方から当人の姿がこっちに向かって歩いてくるのを見つける。
「匠、迷わなかったみたいだぜ」
「ぷwホントだな」
結構ひどい会話か?(笑)
「何か買った?」
「え?あ、ううん…」
なんで目を反らすんだよ??
意味わかんね。
言えないようなもの…もしくは言いたくないようなもの買ったのか??
「朱美…お前嘘つけないんだから諦めろ」
匠も気づいたらしい。
ってか、気づかない方がおかしいんだよな。
こいつのウソって。
「――ちょっと小物…って、そんなことよりプレゼント何にしたの?」
「内緒w」
「えー!ずるい!私には聞いといて!」
「それは朱美が嘘つけないだけだろー」
なんか…ムカツク。
…心狭っ。
匠と楽しそうにジャレる朱美を後ろから羽交い絞めにする。
「ようちゃ…」
「お前時間ないんだろ?」
朱美の抗議の声は無視して、匠にさっさと行けと視線を向ける。
「そうだった、んじゃ、朱美また三人で遊ぼうぜ。俺これからデートだから〜」
どうやら通じたらしい。
しかし…なんで3人なんだよ。
3人で遊ぶぐらいなら2人で遊びたいっての。
――って俺実はウザいんじゃ…、ちょっと凹む…。
とは思うものの、いつまでも匠を見てる朱美にむかつき。
「ほら、朱、ぼーっとしない!俺らも行くぞ!」
「え?何処に?」
「東京」
「――って帰るだけじゃんかぁ〜」
こっちはこっちで予定あるんだ!
朱美を引きずるようにしながら車へと歩いていく。
「こっちよりも回るとこは一杯あるし。ってか、予約に間に合わなく…」
「…予約?」
げ。
失敗。
「――ぁ…っと――…なんでもない」
隠しとくつもりだったのに口が滑った。
「ねぇ予約って???」
「なんでもねぇーってば」
「ねぇねぇ!」
「なんでもねぇーって言ってるだろ!」
「そんなことない!絶対何か隠してる!」
こういう時の朱美はしつこぃ。
その後何度も何度も繰り替えしてそのことを聞かれたが…ここまでくるともう意地。
その後は全く言わなかった。
じゃないとサプライズの意味がねーだろ??
東京への帰路は騒がしいものになりそーだ(笑)