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【陽輔編】5.パーキングエリア

コメントありがとうございます。頑張っちゃいました♪

♪――しゃがみ込む背中をさすってくれる…――


あれからどれくらい経っただろう。

静寂を破ったのは急になり始めた聞きなれた音楽。


「ようちゃん?」


俺のであることを確認するように見上げる――身長差もあって座高は俺のが高いから――。

この曲ならメールではなく着信だろう。

今日電話をしてくる奴の心辺りがない。

結構長い着信なので急用かもしれないし…。


「あぁ、俺の。悪いけど誰からだか見て?」

「え?何処にあるの?」

「シフトレバーの後ろに小物入れあるじゃん?そこ」

「…シフトレバーって?」


返って来た返答にキョトンとしたあと、聞き返された言葉の意味を理解する。

そいや乗らないっていってたんだからわからなくても当然。


「あ〜、俺が左手で弄ってる奴」


流石にわかったようで小物入れから俺の携帯が取り出される。

着信音は既になく、切れてしまったようだ。


「誰からだった?」

「え…っと…」


流石の朱美でも携帯は使えるんだなと結構酷いことを思う。

使い方聞かれるかと思ったから。


「誰?」

「えっと、匠…さん?」


匠かぁ。

催促の電話か?

それにしても…。


「なんでさん付けなんだよ。岳の事だぞ?」

「岳ちゃんなの?」


そっか、もともとガキの頃は俺も名前なんて呼んでなかったんだし知らなくてもしょうがないか。


「そ。あー、朱折り返しで電話かけてくんね?」


やっぱりこなくてもいいとかって電話なら儲けもんだし。


「え〜!?私が!?」

「んなこと言ったって俺運転してるし…。事故って欲しい?」


ってか携帯持った時点で交通規制にひっかかってアウトだな。

イヤフォンマイクなんか備えてないし。


「か、かける。かけるから!」


何を感じ取ったのかかなり慌てて宥めるようにジェスチャーがつく。

――別になんもしないけど…何焦ってんだ?

朱美はそのまま意を決して電話をかけたようで、俺の携帯を耳に当てている。

静かな車内では俺にもコール音が聞こえる。

朱美が息を飲んだのと声が聞こえたのは多分同時だっただろう。


『お前な〜かけてるんだから出ろよな〜、ってもしかして今運転中か?』


男の俺から見ても、匠はいい声してると思う。

緊張してんのかあがってんのか、朱美から視線を向けられるが知らないふり。

朱美と違って嘘はバレない方だから多分大丈夫だろう。


「――おーぃ陽輔ヨウスケ??」


何も返答がないことに匠もやっと違和感を感じたらしい。

まぁ普通携帯は本人が出るよな、うん。


「え、あ、はい。ようちゃん運転中で…あの…」


なんで敬語なんだ?

思った以上に緊張してるらしい。

それに比べて…。


「あ、朱美?マヂ陽輔と一緒にいるんだなw」

「え、あ、はい」


驚きもしない匠。

まぁ散々今日は一緒だと言ってたんだから当たり前か。


「おーい、なんで敬語なんだよー、俺達の仲だろ〜?」


俺達の仲って――どんな仲だよ。

思った以上に漏れる声に内心毒づく。

――…俺心狭っ。

きっと2ch的に言うなら【onz】な感じだな…ってヲタじゃないぞ、俺は。


「や、なんか…ビックリしてて…」

「会ったらもっとびっくりするぜ?マヂいい男だから」


よく言うよ。

まぁ確かにカッコイイと思うけど…ってかかなりカッコイイか――?

いやいや…まてまて…。

脳裏に一緒に遊んだ時のことが浮かぶ。

いつもよりも逆ナン多かったっけ。

――。

いやいや、女に好かれりゃいいってわけじゃねーし…とか思いつつチラリと朱美の反応を伺う俺って――全然クールじゃねぇし…。


「――ぷっ…大人っぽくなっても岳ちゃんは岳ちゃんだね」

「ど〜ゆ〜意味だよそりゃ」

「そのまんまの意味ですよ〜だ」


緊張がなくなったのはいいとしても、あんまり仲よさ気に話されるのもなんか気分悪――って俺大人げないし…なんか新な自分発見はいいけど格好悪すぎだな俺。


「朱〜?匠の用事何?」


ちゃっかり茶々いれるとことか。

多分俺の気持ちなんて気付く事すらないだろうけど、当初の目的を思い出すことには成功したようだ。


「あ〜岳ちゃん、ようちゃんが何の用だ?って。――…ちょっと待って。ねぇ、ようちゃん何時に着きそ?」


やっぱり到着時刻か。


「ん〜11時半には着くって言っといて」

「あー、岳ちゃん?11時半には着くって。――…あ〜ぃ。――岳ちゃんがわかったってさ」

「そっか、わかった」


電話を切ると朱美は携帯をもとの小物入れに戻す。

電話で話していた声がなくなりまた無言の時間になりつつあるが、先程のようにはなりたくなくて必死に話題を捜す――が、思い付かない。

半ば諦めかけた頃。


「ようちゃんさっきの着うたAquaTimezでしょ?」


と朱美が助け舟を出す。


「ん?あ〜好きだからな」


真っ直ぐな歌詞が結構ツボ。

まぁ中には稚拙だって嫌う人もいるみたいだけど、俺はああいう風に真っすぐな言葉が出せる事すげーって思う。

言葉を飾り立てる方が多い時代だからだろうな。


「≪小〇な掌≫だったよね?」

「知ってんだ?」

「詳しいってわけじゃないんだけどね、私も今着うたそれだから…」

「へぇ〜偶然、同じ曲かぁ〜」


やべ。

超顔にやける。

意識して反対車線を見ているようにして顔を反らす。

そして思い出す。

着信音が鳴った時――。


「だからか。初めに自分の携帯確認したの」

「そ」

「他に何の曲知ってる??」

「ん〜有名なのしか知らないよ。≪決意〇朝に≫だとか、≪等身大のラ〇ソング≫だとかかなぁ。ようちゃんのオススメは?」

「≪星の見えな○夜≫とか、≪AL○NES≫とかいいと思ったな」


どちらもAquaTimezの中でも好きな曲。


「へぇ〜今度聞いてみよっと」


え?

持ってない??

それなら…。


「貸そうか?アルバム」

「え、ホント?貸して♪」


よし、これでまた2人で会う約束取り付けやすくなった。

匠にちょっと感謝かな。

あいつから電話なきゃこんな話しなかっただろうし…って、パーキングっ!

高速からパーキングへのわき道へと入る。

喉渇いたしな。

朱美は曲がったことに気付いてなさそって、なんか幸せそうだけど…何考えてるんだ?

朱美が気付く前に駐車も完了。


「朱なんか飲む?」

「ん〜一緒に買いに行く」


何処だかもわかってないくせに返事をするトコは変わってないんだなぁ。


「パーキングエリア。修学旅行とかでバス止まっただろ?」

「パーキングエリアってこんな感じになってるんだぁ〜」


はしゃいでるって言うよな?これ。

走り回ってるってわけじゃないけど…走り回りたいって感じ。

…降りたことないのか?パーキング。

いや…少なくとも小学校で6回、中学で3回の9回はあるんだからそんなこと…ないよな?

広いって喜ばれてもなぁ。


「ここなんて狭い方だぞ?中には小さい遊園地ついてるトコもあったし」

「え〜!遊園地!?」


え?そこ驚く?

結構有名だと思うんだけどなぁ。


「今度行ってみる?」

「行くっ!行ってみたいっ!」


なんていうか…目がキラキラ??

…やっべ…、超可愛い…。

下から見上げるなよ――。

とは思うもののそんな事いうのはなんかイヤだから…。


「朱美…ガキっぽ…」


まぁホントにそう思ってもいるし…な。

まぁ逆に反応が可愛いって意味だけど。


「わ、私の方がようちゃんより早く生まれてるんだからねっ」

「精神年齢の事だから」

「むぅー」


確かに俺のが3ヶ月遅く生まれてるけど…それだけだろ?

今同年でこんな反応する奴いないって。

ってかコイツ普段男っぽいぐらいなのに、たまーにこんな反応するんだよなぁ。

そういう所にドキッとするんだけど。

とかって思ってるうちに自販機の前。

まずは自分用にホットコーヒーを買う。


「ほら、何飲む?」

「ん〜午後ティー」


午後ティーっと。

ガコンという音がして出てきた午後ティーを朱美に渡す。


「ぇ」

「ん?アイスだろ?違った?」

「え、あ…うん、ありがと。よくわかったね?私アイス飲みたいなんて言わなかったのに」


あー、そいや俺はホット買ってるのにアイス買ってるってのはちょっと変かもな。

でも。


「昔から飲み物でホット飲まないじゃん、朱は」


母さんが持ってくるココアだって温かいうちは口もつけなかったもんなぁ。


「――覚えてると思わなかった」

「ばーか。忘れてねーょ」


っていうかもう癖だな。

こいつにホットってイメージないんだよなぁ。

すでに選択肢になかったぐらいだし。


「ほら、朱?何ほうけてるんだ?ほら車戻るぞ?」

「――あ、うん」


キョトンって感じだな。

絶対になんかボケーっとしてたんだと思うんだけど。

そんなのほっといてさっさと車に戻る。

寒いしな。

すると後ろからなんか勢いのある靴音がして…。


――ガツン。


後ろから何か――いや、朱美に体当たりされたことによりバランスを崩す。

んでそのまま走り去る朱美。


…逃がすわけねぇ。


全速力を持ってして追いかける。

男の脚力に女が叶うわけもなく…ってか俺これでも一応ジム行ってるし、結構すぐに追いつく。


「あ〜け〜みっ!!」


ドサクサ紛れに抱きついて羽交い絞めにする。

コイツ昔っからわかりやすい反応するよなぁ。

今度はなんだってんだ。


「――く、苦しいってばっ」


そりゃ後ろから羽交い締めしてんだもん、そうだろうな。

追いつかれることなんて考えりゃわかることだろうに。


「朱美〜ほら謝れ。危うくこけるとこだったろぉ〜?」


マヂでギリギリだったんだぞ?

さすがに好きな女の前でなんてコケたくないだろ?

それをするとこだったんだぞ?

わかってんのか?


「――こければ楽しかったのにぃ〜」

「ぁん?」


ボソッといわれた言葉が頭をループする。

クククッと自分でもちょっと怖い忍び笑いをしながら首を締め上げる腕に力を込める。

その後数十分、それを維持したのは言うまでもない。

まぁ…役得?

こういう時じゃないと抱きしめるとか無理だからなぁ。

ま、しゃーないだろ?

俺だって男だし…な。



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