死にたがりな人
ある時、男が言った。
「ああ、もうだめだ。 私は死にたい」
医者はなぜそう思うのかと男に聞いた。
「事業に失敗したのです。 私の家は借金まみれ、明日の食事にも困る有様です。 こんな事では生きていけない」
医者は男に提案した。
「それではあなたの心臓をください。 ここに病気の少女がいる。 心臓をいただければ少女は助かります。 死にゆく人に、心臓は無用でしょう」
男は言った。
「とんでもない。 心臓をくれてやるなんて。 人の命を何だと思っているんだ」
男は去った。
数日後、男はビルから飛び降りた。
数週間後。
少女は死んだ。