準備
お久しぶりです。5話目です。しかもまだ出発してません。
醒の森。
央里国、危険指定区域のひとつで、数多くの害獣が住み着いている。
害獣とは、呼んで字のごとく害をなす獣の事だ。人以外の者も数多に生きている央里国だが、こと害獣に至ってはあてはまらない。なぜなら害獣は場所も相手もかまわず、荒らし襲い、命を奪う。そのため害獣は央里国において討伐対象であり、火官が、その任を任されている。
私もよく害獣討伐に行ったな。まさか図書管理役になっても行く事になるとは思ってなかったが・・・いや、違うか。
今回の目的は害獣討伐ではない。第一目的は、危険図書の回収。その図書のある場所が、害獣の住処になっている醒の森で、おそらく害獣との接触が避けられないものだから、気分が害獣討伐に行くつもりになっているのだ。
格好も影響しているんだろうな。
府庫塔の面々の衣装が、首から足までを覆う黒いツナギのようなものに、防具にもなる鉄板入りのベルト、その上から合皮素材の体をすっぽりと包むマント、足は荒れた道でも進めるように、がっしりとしたブーツを履いている。
それに対して、私の衣装は火官の頃に使っていたものだからな。当然ではあるが、皆とは違う衣装だ。
体の線にぴったりと合わせた衣装は、西大陸のレオタードというものに近い。けれど、そのデザインは東大陸の南の国の踊り子の衣装を思わせる。けれど、踊り子のように華美ではない、むしろ地味だ。戦のための衣装だから当たり前だが。足は灰色のタイツに仕込み靴。何を仕込んでいるかは、私が元軍人である火官だということから察してほしい。肩と腕は剥き出しだが、手には鉄甲を付けている。首と腰に嵌め込むようにしている半輪型の物は首や胴を断たれないための防具であり、腰に嵌めている物は、剣帯代わりにもなるので、小太刀をつけている。長物や大太刀は必要になったら、召喚魔術で出せばいい。長い髪はおろしたままだと邪魔なので、いつものように適当にまとめようとしたのだが、
「あたしにやらせて」
蛍が物凄いキラキラした笑顔で言ってきたので任せた。あの笑顔には逆らってはいけない。本能的にそう感じた。
「こ、これは・・・」
出来あがった髪型に私は言葉をなくした。
頭の上半分の髪で、耳の上に動物の耳にも似たお団子を2つ作り、残りの髪は白のリボンを巻きつけて、背の中ほどで緩く結んでいる。
蛍はご満悦と言わんばかりの笑顔だが、私には大ダメージだ。
可愛い、可愛くないで言ったら可愛い。可愛すぎる。だからない、ぶっちゃけこれはない。戦う身としてこの髪型はない。
「おい、準備が終わったならさっさと行くぞ」
党条管理番、貴方のその言葉が今日はいつにもまして憎い。貴方のせいじゃないけど憎い。
この頭で外に出なくてはならない事実に私はそれこそ頭を抱えたくなった。