王の勅命
別の話が全く終わっていないのに、新作を書きはじめてしまいました。続くかどうかは、情けない事に分かりません。それでも、読んでくださる方がいらしたら幸いです。
央里国。東大陸と西大陸の間に位置するこの国は、東と西、どちらの文化も存在する多文化の国でもあり、人間の他にも、妖、精霊、魔人、獣人、など人外のものが、人と同じように往来を闊歩する多種族の国でもある。
そもそも央里国は、旅人である人間の男と、定住する地を持たなかった7人の、妖や精霊などの人外の者たち、そして大陸中を放浪していた魔術を使える13人の人間、いわゆる魔術師たちが、ひとつのパーティーとして集い、東と西の大陸を冒険し続けた末に、最終的に根を降ろした場所だった。
後にパーティーのリーダーでありながら、人外でも魔術師でもない、ただの旅人の男が、その場所に種族を問わずに沢山の者たちを集め、央里国の初代国王として玉座につき、7人の人外の者たちと13人の魔術師たちと共に国の礎を造り上げる事でようやく国として大陸の地図上にその名を刻んだのだ。
それ以来、大なり小なり様々な問題や危機を抱えながらも、なんとかそれらを乗り越え、王にして9代続いた歴史のある国である。
「は?」
思わず間抜けな声が漏れた。
目の前の上官は、私のそんな反応に気持ちは分かると言いたげに同情するような表情をみせてはくれたが、命令を撤回してはくれなかった。
無理もない。この度の命令は、畏れ多くも央里国9代目国王陛下、桐覇・綾・グランディス様からの勅命なのだ。
我らが王からの勅命 曰く
国軍 鳳凰軍 凰軍 第14席 火官 綺羅・更咲
汝を 府庫塔 図書管理役に任する
央里国9代目国王 桐覇・綾・グランディス
ご丁寧に直筆で玉璽まで押してある。
王からの直々の勅命など普通に考えれば、卒倒してもおかしくないほどに、もったいない事だ。
だけど、これは・・・
この勅命は・・・
13歳になる年に、央里国官吏登用試験に合格し、それ以後、国の軍事を預かる火の官吏として、6年間国に尽くしてきた私にしてみれば、降格されるよりも屈辱的な勅命だ。