第14話 思わぬ結末
彼はテリーの手に手錠をかけた。呆然としままの私は、ウィルを見つめることしかできなかった。
「お前・・・どうしてここに」
手錠をかけられたテリーが睨みつけるが、ウィルに反応はない。
「ウィル?」
私が恐る恐る問いかける。
「戻ったらもぬけの殻なんですから。正直慌てました」
レベッカを抱き起こしたウィルの視線が私へ向けられた。
「・・・私も慌てていたから。ごめんなさい」
まさかあなたの事を信じ切れていなかったからとは言えず、私は無言のままブリジッドを立たせた。
「イタッ!ちょっと、もう少し優しくできないの?そんなんじゃ彼女なんかできないわよ」
レベッカが嫌味を言うが、ウィルには全く効果はなく、涼しげな顔が崩れることはなかった。が、冷たい視線が彼女を凍りつかせる。
「・・・あなたは、私を撃たないわよね?」
「ええ・・・多分」
「多分?!ちょっと!離して!」
「冗談ですよ」
「冗談にならないわよ!」
レベッカは腕をケガしているのにも関わらず、暴れ出した。私とブリジッドはそれを見て苦笑いを浮かべる。そうしていると、他の警官が部屋へ突入し、テリーを連れて行った。
私はブリジッドを立ち上がらせ、彼の後ろ姿を見つめていた。
「ねぇ、そこの段ボールに・・・」
「女性の死体があるんですよね」
知っていたかのように話すウィルに、私は驚きを隠せなかった。
「さっき警察署で、最近女性の死体が発見されなかったかって聞いていましたよね。それで少し調べたんです。そしたらこの周辺で最近、行方不明になった女性がいまして。その女性でしょう」
「名前は、なんていうの?」
「キャサリン・トーマスです」
私は警察官によって運び出されるキャサリンを見送った。
彼女は殺人などしたくなかった。しかし、麻薬中毒になってしまっていた彼女に選択肢はなかったのだ・・・?果たして本当にそうなのだろうか。それ以外に道はなかったのか。彼女と話がしたかった。こんな形ではなく、あなたの目を見て話がしたかった。
「・・・そういえばどうしてここへ?」
暴れるレベッカをウィルから受け取ると、彼に質問をした。
「私が席を外した時、ナターシャの解剖が完了したのでその報告を受けていたんです。彼女の爪から皮膚が検出され、それがブラッドのものと一致したんです」
「・・・それでここに?」
「はい・・・それに・・・」
ウィルが窓越しに連行されるテリーを見下ろした。
「彼が資料室・・・押収した麻薬などを保管しておく部屋で度々見かけまして。おかしいと思って彼を張っていたんですが、彼の勤務態度は良く、誰も私の話を信じてもらえなくて」
「まぁ、あなたの勤務態度と比べたら、どちらを信じるかはっきりしているものね」
「そうですね」
またもやレベッカの嫌味は軽く流された。私は彼女に目線を向け、言い過ぎだとテレパシーを送る。
「・・・ごめんなさい」
レベッカは聞き取れなさそうな小声で謝ったが、ウィルには届いていないのか、彼は淡々と続ける。
「何年か経った頃、テリーを張っていた時にブラッドと会うところを目撃しました」
「麻薬を渡していたのね」
私はレベッカとブリジッドを肩に抱えたまま聞いた。彼はコクリと頷く。
「ですが肝心の証拠がありませんでした。証拠がなければ警察は動けませんから。シッポを出すまで待っていたんです」
「待ってたって、私達死ぬところだったのよ?」
腕の痛みが消えたようにレベッカが突っかかる。
「・・・死ななかったのですから、よかったじゃないですか」
「そういう問題・・・アイタタ、もういいわ」
外へ出ると、大きな満月が私達を照らしていた。