part.03
2年2組の教室には武蔵と一人の少女だけが残されていた。少女は教室の角で膝をつき、嗚咽をあげながら泣いている
「…とりあえず、ここを出よっか」
武蔵は泣いている少女に教室から出るように促してみると、少女は力なく頷きながら弱々しく立ち上がる
「わたしは…羽衣 結衣って言います」
「俺は武蔵だ。黒鉄 武蔵。よろしくな」
「あの…大丈夫ですか?」
「なにが…?」
「あなた…いま死んでも良いって顔してます」
「そりゃ…そりゃそうだろ!? 友達を…! 初恋の人を! 親友をあいつに奪われたんだぞ!? 寧ろ…寧ろ、なんで君はそんなに落ち着いていられるんだ!? 俺はあいつを殺せるなら死んでも良い!!!」
「私だって辛いですよ…辛いけど…生きないとダメじゃないですか! 私はなにをしてでも生きたいです! …絶対に!!!」
「くっ!」
武蔵は生きる覚悟の持った結衣の瞳に圧されて逃げるように教室を後にする
それから数メートル離れて結衣が武蔵の後ろを追う
目的地は体育館。敵がどんな目的があったとしても生き残りを見つけなくてはならないし、なおかつ罠にかからないと対面もできない相手だ。ここは相手の思い通りに行動することが一番だと武蔵は考えた
刺し違えてでも殺してやる
体育館に着くと、既に五人ほど人が集まっていた
「良かった! まだ生き残りが居たみたいだね!」
体育館に入った武蔵と結衣に一番最初に話しかけてきたのは、そこらのアイドルグループもびっくりのイケメンだった。
確か生徒会長の藤堂 クリスだったろうか?
「僕は藤堂 クリス。3年1組だ。君たちは?」
「俺たちは2年2組だ、黒鉄 武蔵っす」
「私は羽衣 結衣です」
「そうか…二人〈も〉生き残ったのはうちのクラスだけかと思ってたから良かったよ」
「〈も〉…っか」
「あぁー、ほとんどのクラスが全滅か一人だけ生き残ったかのどっちかだよ」
「ってか、さっきから藤堂さまにため口聞いてんじゃないわよ!」
武蔵とクリスが話していると声をかけてきたのは黒髪で三つ編みの女性だった
「くっ…藤堂さまは凄いのよ!!!一人であの緑色の化け物を倒してしまったんだから!!!」
「ハハハッ、やめてくれよ…。俺はそんなこと言われるような人間じゃないさ」
「なっ!でも藤堂さまがいなかったら私は…」
「ありがとう、でもその呼び方はやめてくれ。…とりあえず武蔵くんがたのクラスで起きたことを詳しく教えてもらえないかな?」
「あぁ…」
武蔵はクラスで起きたことをクリスに伝えていると徐々に体育館には人が増えていき。その人たちと情報を共有していく
体育館には12人の男女が集まって、最後に体育教師の大和田 堂志が体育館に集まったことで時間は12時を過ぎたところだった
『やぁやぁ、みんな! よくぞ集まってくれたね♪』
聞き慣れた謎の放送が始まる
「おい、直々に説明してくれんじゃねーのかよ?」
『うわぁー! 武蔵くん、そう怒るなよ。 カルシウム足りてねーんじゃね? 小魚を食えよぉ~プププッ』
「うっせぇー!!!」
「やめるんだ、武蔵くん。相手を刺激しても意味ないぞ?」
クリスが武蔵を片手で静止する
『そうそう、クリスくんはお利口だね♪お気に入りのなかでも更にお気に入りにしちゃいたいね』
「そんなことより…説明をしてくれるんだろ?なら、はやく頼む」
クリスが落ち着いた声で問う
『仕方ないなぁー!ここは皆、早漏ばっかりで嫌になっちゃうよ♪』
すると、体育館が暗転。
カーテンで日光を遮断された体育館は一瞬で暗黒に包まれたことにより、各々が身構える。
突然のドラムロールと赤、青、黄色のスポットライトが体育館のステージに向けられる
ポンッ!
可愛らしい爆発音と共に白い煙が立ち込める
「ladies and gentleman !!!」
白い煙が段々と風に流されると人影が現れる
「紳士、淑女の皆さん!はじめまして♪この世はもう終わりです、しかし! あなた方は実に幸運だ! あなた方は生き残る術を手に入れるチャンスが与えられたのだ! しかし…誰でもチャンスがあると思ったら大間違いです! これは試験なのです、生き残るための!!!」
煙から現れたのは白い髪の少年だった
「お前…お前がっ!」
「おっと、やめてくれよぉー!」
武蔵がクリスの静止を突っ切ろうとすると、少年が指を鳴らす
「なっ! …動けねぇ!!!」
「ざんねーん、無念! また来週ってか?」
「やめて!武蔵くん、あなたはここで死んだらダメよ!」
武蔵を抱きついて止めたのは結衣だった
「うっせー!俺はあいつを…っ!」
「あなたが死んでも皆は喜ばないわよ!」
「そんなことわかってるんだ!」
「まぁ…、そう怒んなよ?すぎたことだろ?とりあえず能力についての説明したいんだけど良い?」
「あぁー、頼む」
クリスは頷くと白い少年はクルっと一回転してからニコッと微笑む
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