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大魔王ターニャんの致命的な誤算  作者: 籠崎 莉々
第二部

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第14話 空白の戦場

GW、終わってしまいましたね。つら。

 塔の内部は、静まり返っていた。


 敵の気配はある。

 

 だが、どこか希薄だった。

 

「……来るよ」

 

 ターニャが一歩前に出る。

 合わせるように、奥の影が、動いた。

 ゴーレムだった。

 ぞろぞろと湧いてくるそれは100や200ではきかなかった。

 

 ターニャが掌に雷を纏わせる。

 そして――

 放電が一瞬にして増幅した。

 振り向かなくてもわかる。リリだ。


「ナイス」


 雷が掌から扇状に放たれた。 

 一瞬で数十体が消し飛んだ。


「殲滅戦はこうしたほうが効率が良いですね」


 リリが空間に球体を発現させる。


「なるほどね」


ターニャが両手に雷を纏わせる。


「一網打尽ね!」


放たれた雷は球体を通じて一面を焦がした。

崩れ落ちるゴーレム。

その数―


「500体くらい?」


「ですね」


「湧き過ぎじゃない?」


「継続放電はこういうとき便利ですね」


ターニャは内心、ほっとしていた。

支援タイミングはバッチリ、いつものリリだ。


「足止めにもならなかったね」


「少しでもこちらの魔力を減らすのが目的かもしれません。油断せずに行きましょう」


 動的な気配がないことを確認し、頷く二人。


 そのまま塔の最上階へは何事もなく進んだ。


 やや装飾じみた豪華な扉。


 この先に、何者かが待ち構えている。


 扉を開けると、奥にはひとりの男。

 

 ステンドグラスから刺す光が男の神々しさを祝福しているようにも見えた。

 

 純白の長衣をまとった司祭は、整った顔で柔和な笑みを浮かべていた。

 

「お待ちしていました」

 

「誰?」

 

 ターニャが問う。

 

「ゼファエル」


「……!!」


リリが驚きの表情で男を見た。

 

「聖教会枢機卿——そして、魔王軍幹部です」

 

「ゼ、ゼファエルさま……?」


「……は?」

 

 ターニャの声が低くなる。


「な、なぜ、ゼファエルさまが、ここに……?」


「聖女リリ。いつも報告をありがとうございます。とても助かっていますよ」


「…………!!」


「なぜか、というと先に申し上げた通りです。私が聖教会の枢機卿であり、魔王軍幹部の……」


「策謀のゼファエル……」


「はい」


 ゼファエルは微笑む。

 そして、言葉を紡ぎ始める。

 

「神と魔は対立している——そう思っているのは人間だけです」


 

 視線が、リリへ向く。

 

 

「聖女」

 

 

「あなたもまた、“配置された存在”に過ぎない」

 

 

「……っ」

 

 

 リリの呼吸が乱れる。

 

 

「その娘は——」

 

 

 ゼファエルが、淡々と告げる。

 

 

「何度でも作り直せる」

 

 

 空気が、凍る。

 

 

「……は?」

 

 

 ターニャの目が、変わる。

 

 

「勝手なこと言ってんじゃないわよ」

 

 

 雷が、走る。


 無詠唱で速度重視の、

 

 瞬撃。

 

 ゼファエルの身体が、裂け、崩れた。

 

 あまりにも——

 

 あっけなく。

 

 遅れて、裂けた身体から血が噴き出る。 

 


「……は?」


 

 ターニャが顔を歪めた。

 

 

「こんなもん——」

 

 

 そのとき。

 

 

 ゼファエルの身体から、光が漏れる。

 

 

「役目は、果たしました」

 

 

 覆うように二人だけに響く。

 


「英雄ターニャ」

 


 声だけが残る。


 

「あなたは今、聖教会への反逆者として記録されました」

 

 

「なにそれ」

 

 

「この塔は、聖教会管理下の施設です」

 


 予感が二人を捕える。


 

「そして私は——」

 


 心臓が跳ねる音が聞こえる。


 

「殉教者として処理される」

 

 

 ゼファエルは血を吐く。



「……ふ、ふふ。よく出来ているでしょう……少しずつ、人間の身体に慣れさせてきました……」

 


 その姿は人間にしか見えなかった。



「この十数年、人の生に合わせるのは苦痛でしたが……ふふ、ようやく報われますね……」

 


苦しそうに、切なそうに。



「お母さま……いま、あなたの、もとへと、参ります……」


 

 沈黙が場を支配した。


 

 ゼファエルの命は完全についえた。

 


 だが、その表情はどこか安らかだった。



 

「……はあああ?」

 

 

 ターニャが頭をかく。

 

 

「なによ、それ……」

 

 

 でも。

 

 

 その目は、笑っていなかった。

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