レフティモデルに目がないのは誰?
「録画したA〇gel beatsを見たいから帰るわ」
「嘘言わないでください、この後友達の家でお誕生会するんじゃないですか?」
「なら、お誕生会行くから帰るわ」
「『なら』ってどういうことですか! 絶対帰らせませんからね」
部員勧誘の為に部室から飛び出したのはいいのだが、部活動の時間帯に帰宅部の奴らが残ってるはずもなく、結局なんの成果もなく部室に戻ってきたら、案の定部長が、今日の活動は終わったから早く帰らせろと駄々をこね始めた。
正直、文芸部は新入部員を集める前に部長の変更を迅速に行うべきだ、と思ったが、そうなると自動的に部長には俺が就任するということになり、ただでさえ天上天下唯我独尊部長様のお相手で心が疲弊しているのにさらにそんな面倒くさい役職に就くのはまっぴらごめんこうむるので、下剋上を起こすのはやめておくことにした。
なんだかんだ言って、部長という役職はそれなりに面倒なものなのだ。
「もう、することなんて一つもないじゃない。何? 私がバニースーツを着て新入部員を勧誘するまで帰らないと? 里山君はそう言いたいの? この変態さん」
「一言も言ってないじゃないですか、そんなこと! 別にしてもいいですけど、先生に何をしてるんだと問い詰められた時、絶対に俺の名前出さないで下さいよ」
「大丈夫。とある部員に無理やり強要させられた、とでも言っておくわ」
「部員は俺しかいないじゃないですか!」
くっ……、早く何か行動を起こさないとどんどんこの人のペースに乗せられてしまう。
何かないか? 何かないか? う~ん、そうだ!
「じゃあ、勧誘のチラシ作って掲示板に貼りましょうよ。見てくれた人がもしかしたら入ってくれるかもしれませんよ」
「五月半ばから貼り始めても誰も入らないんじゃないかしら? 世の中そんなに甘く出来てないわよ」
「わかってるなら何故新入生が入ってきた時作らなかったんですか!」
「春アニメのチェックに忙しくて製作時間がなかったのよ」
「二回といわず週五で死ね!」
「残念だったわね、私は毎週週五で萌え死んでるわ。文〇さんの言う『二回死ね!!』なんて最高よね」
行動を起こしたところでこの人のペースは全く揺らがないことを改めて認識。
この人の動かし方を知っている人がいるならば、青狸の力でも借りてこちら側の世界に来てもらいたい。もしくは、遠〇の元妻の千〇が声を担当しているメロンパン好きなあの黄色いロボットの力を借りるのもよし。
メロンパン好きはツンデレボイスのフレイム〇イズだけではないということをここに力強く宣言する。
「私もここに宣言するわ。歪んだ恋の物語ということは静〇と……」
「何言うつもりだオイ!! 後、勝手に人の心を読まないでください!」
ああもう、話が脱線しまくりだよ!
勝手に俺が脱線したせいでもあるんだけどさ。
「仕方ないから私が話を戻してあげるわ。結局のところ、里山君はチラシを作って部員を増やしましょうって言いたいのよね?」
「え? ああ、そんなところです」
「全く……部活動の時間は限られてるのだから無駄口叩かないでちょうだい」
……泣いていいよね? 俺泣いていいよね?
そんなこんなで、主張が二転三転し、俺をいじめるためだけに生まれたような部長と客観的に見て不憫と思われる俺はようやく部員勧誘のチラシを作り始めた。
「まずは、着ぐるみを買いに行きましょう、里山君」
「全くいりません、部長。ここはオリコン一位二位を独占した部活じゃありませんよ」
「あらそう、なら、本日の生徒会……じゃなくて文芸部終了」
「終わらせんな! ネタ入れんな! キメポーズをするな!」
「じゃあ、何を書けばいいのかしら?」
「文芸部のいい点とかじゃないですか?」
「お菓子完備、ジュース完備、いっしょにアニメについて熱く語りましょう!、とか?」
「文芸部じゃねえ! それじゃ、アニメ研究会じゃないですか!」
「じゃあ、宇宙人、未来人……」
「しつこい!!」
「なら、これでどう?」
部長はその貧相な胸を精一杯張って自信満々に一枚の紙を見せてきた。
「『あなたの思ったこと感じたことを私たちと一緒に綴っていきませんか?』ですか。いいじゃないですか、これ」
「ふふふ、不能な里山君には私の力がやっぱり必要見たいね」
「せめて、無能と言ってください! 冊条様!」
「よろしい、そなたに『無能』の位を差し上げてしんぜよう」
オホホホと高笑いを始めた部長。
調子に乗るとすぐこれだ。
でも、そんな部長と一緒に部活動をするのが俺のささやかな楽しみであるのはこの人には秘密だ。
言ったら絶対調子に乗るからな。
俺がいったい何を考えているかなんて全く知らない部長は、
「よし、本日の文芸部終わちっ」
「く〇むかよ!」
いつも通り、楽しそうにパロディをしていた。
これからテスト週間に入るので一、二週間更新できません。
スイマセン。