エピローグが書ける人って凄いと思う
「部員がどう考えても少なすぎだと思うのよね」
パイプいすに足を組みながら座っている部長は、憂えをおびた顔をして呟いている。
「部員は増えずに本ばかり増えていって、そのうちここは神原さんの部屋みたいになってしまうんじゃないかしら、なんていつも考えているのに一向に姿を現さない木々良々さんに腹を立てている私に対して何か思うことはないのかしら、里山君。部員が少ないのも、木々良々さんに会えないのも、私が美しすぎるのも、すべて里山君の所為だというのに」
一気にまくしたてた部長は、さぁツッコミを入れろよ、と目で俺に訴えてきているようだった。
なんかもう、いきなり面倒な人だなぁ。
「いきなりネタが多いです、部長! そんなに一気にツッコミ入れれません」
「じゃあ、一つずつ捌いていって」
「化〇語ですかー、いいですねー、あれ。おもしろいですよね。ふふふ」
「偽〇語ネタのシカトとはいい度胸ね、里山君。爪はがすわよ」
「えぇ! す、すいません。適当にツッコんですいません」
果てしなく土下座。これからは面倒でもちゃんとツッコミを入れようと誓った高一の春。
「本当にすまないと思ってるなら、……地獄の果てまでついてきてくれる?」
「ネタをどんどん増やさないでください! そんな言葉を放つのは、最近存在感が出てきた修道女以外知りません!」
「ふふ、ちゃんとツッコミを入れれるようになったきたじゃない。それでこそS〇S団の一員よ」
「〇にする意味全くないでしょ、それ! たしかにここは文芸部だけどそれは一切関係ありません!」
「残念、この〇に入るのは『S』よ」
「だからどうしたこの野郎! それこそ全く関係ねぇよ! 死んだ世界での戦線なんかに俺は所属してません!」
この人はネタ混ぜないと死ぬのか? コンボが凄すぎる。
一生このやりとりが終わらないような気がしてきたころ、やっと先輩は話を本題に戻してくれた。
「どう考えても部員が少なすぎると思うのよね」
今日二度目のつぶやきに俺は素早く食いついた。ほっとくとまたネタに走りそうだったからな。
「そりゃ、部長が全く部員勧誘しないからでしょ」
「でも、何もしなくてもあなたは入ってくれたじゃない」
「それは……」
口ごもる俺。俺の場合は決して部長が何もしなかったわけではないんだけれど……、本人に言うのは癪だからごまかしとこう。
「それは……この際関係ありません」
「あら、関係あるわよ。一人入ったら十人は入ると思えって言うじゃない」
「部員はゴキブリじゃねえ! 俺はゴキブリ並ってかこの野郎」
「まぁ、御器被りさんに失礼でしょ。里山君はゴキブリ未満よ」
「以下ですらない!!」
うぅ、なんでいじめられてんの、俺? 何も悪いことしてないよね?
「とりあえず、今日の部活動は部員探しよ。里山君、今すぐゴキブリを探してきてちょうだい」
「意味がわかりません、部長! 部員はやっぱあんたにとってゴキブリ並の存在か!」
「並じゃないわ、未……」
「うるさいです! これ以上俺を傷つけないでください!」
「……」
あれ? 冗談のつもりで言ったのにもしかして真に受けてるのか?
部長うつむいて真剣な顔してるし。意外とかわいいところもあるな。
「……何かのネタ?」
俺の地の文を返せ。
「ネタじゃありません。あなたとは違うんです」
「ふ~ん、そう」
まさかのゲンスルー……じゃなくてネタスルー。こういうネタには触れてくれないんだ……。
てか古すぎたか?
まぁ、いいや。どうせ俺がボケになることは一生ないんだろうな。
「このやりとりはもういいです。それで、部長も当然ついてきますよね?」
「何が?」
駄目だ、素でわからないという顔をしている。自分が言い出したのになんでこの人はすぐ忘れるのだろう。
「だから、部員勧誘ですよ」
ああ~そのことね、とのほほんとした顔で部長は納得顔をした。
さすがに思い出してくれたか。
「何故、私が行くの?」
「あなた部長ですよ! そして言いだしっぺだろ!」
「無理よ。私人見知りだもの」
「マジですか」
いやいや、あんなに俺に対して饒舌なのにさすがにそれはないだろ。
「大マジよ。人見知りだからこそ、この部活に入ったんだし」
たしかに……部長が他の人としゃっべてるの見たことないかも。
普段はあんまり接点がないから気付かなかったけど、意外と本当なのかも。
「てことで、私は人に声をかけれないので部活勧誘に行けません。里山君が部員を集めてくれないと私は友達ができません。大人しく私は本を読んでるので里山君は行ってきてください」
何故か棒読みだったけど珍しく部長は敬語でものを頼んできた。
本当に困ってるのかも。
「わかりました。俺が行ってくるんで部長はここにいてください」
「ふふ、ありが」
コンコンと誰かが部室の扉をノックした。
もしかして、入部希望者?
「はーい、今行きます」
扉を開けると、そこには一人の女性徒がいた。バッジからみて二年生か?
「あのー、美由紀って人こちらにいませんか?」
下級生の俺に対して敬語を使ってくれたことに少し感動しながら、
「ああ、部長なら奥にいますよ」
と言って、彼女を奥に通した。
ちなみに美由紀ってのは部長の名前。
「やっほー、美由紀。今日、宮の家で誕生会だからね。忘れてると思って言いに来たんだけど」
「私をなめないでよ、優。宮の誕生会のことならちゃんと覚えていたわ。まぁ、宮の家の場所を忘れちゃったけど、テヘ」
意味ないじゃーん、へへへ、となんか楽しそうにキャッキャ喋っている。
なんかおかしくね?
「じゃあね、美由紀。忘れちゃダメだぞ」
「わかりました、提督。一生この胸に刻みつけておきます!」
帰り際、優さんは、
「美由紀のことよろしくお願いしますね、後輩くん」
とウインクしながら去って行った。
かわいい先輩だなーと思ったけど今はどうでもいいや。
「部長☆」
名前を呼ばれた部長はビクッと震えた後、こちらを恐る恐る見てきた。
「里山君……、☆とかあまり使わないでくれる。☆なら散々橋の下で見てきたから」
「この状況でネタに走るな!! どこが人見知りだ、このペテン師!!」
「私は人見知りよ。その証拠に優と喋るとき、ネタを使わなかったわ」
「それは人見知りじゃねえ! 伝わらないから自重しただけだろ!!」
もう許さねえ、意地でも部活勧誘につき合わせてやる!!
「部長、行きますよ」
そう言って、部長の襟首をつかみ、俺は部室の扉を開いた。
「あれ、私一応部長なんだけど、あれ、なんかおかしくない? これ」
「黙りなさい」
「それは、部室の扉を閉めるときに使う言葉よ、里山君。団員の独断専行は許されないわよ」
はぁ、やれやれ。
「地の文でネタとは……成長したわね」
ネタばっかでスイマセン。
ふふふ、書いてて楽しいです。
いつも思うんですけど化〇語は趣味で書いたレベルじゃないですよね。
あの先生は世間に公表するつもりはなかったとか書いてますけど、そんなもったいないことはお天道様が許しても俺が許さねえ!
これわからない人には全くわからないだろうなー