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第七話

「さて、本日から2週間後に迫るクラス分け試験に向けて本格的に授業が行われる。これから授業で学んでいく内容がすべて試験範囲となる。皆、心して受けるように。」


昨日の騒動から一夜明け、私たちは再び講堂へと集められていた。整然と並ぶ列。高い天井。差し込む朝の光。そのすべては昨日と変わらないはずなのに、空気だけが明確に違っている。

ざわめきはある。けれど、それはどこか抑えられたものだった。軽口を交わす者はほとんどいない。誰もが、これから始まるものの意味を理解している。


「クラス分け試験……」

隣でフローラが小さく呟く。

「三年間が決まるのよね」

「ええ」

短く答えると、彼女は視線を落とした。

周囲でも同じような言葉が、同じ温度で交わされている。期待よりも、不安が勝っているように見えた。

ヒューバート先生は、そのすべてを見通すように一度講堂を見渡し、続ける。


「本日より二週間。諸君は基礎課程の主要科目を履修する。既に説明した通り、この期間に行われるすべての授業は、クラス分け試験に直結する。軽んじることは許されぬ」

一瞬、空気が張り詰める。

「試験はもちろん、筆記および実技の双方で評価する。だが、点数のみで決まるわけではない。諸君の理解力、応用力、そして魔術を扱うに足るかどうか。その総合をもって判断する」


(単純な順位付けではない……ということね)


それはつまり、表面上の結果だけでは測れない部分があるということ。


「続けて、時間割について説明する。本日より、座学の授業はすべて講堂で行う。クラス分けが確定するまでは、学年単位での一斉授業とする。ただし、実技の授業に関してはあらかじめ魔力量と属性に合わせてコースを割り振った。それぞれのコースの指定された場所へ向かえ。午前は座学。午後は実技が基本である。詳しい時間割は追ってプリントを配布する。いずれも担当教師が交代で指導にあたる。理解が遅れた者は、そのまま置いていかれると考えよ。補習はあるが、それは救済ではない。最低限の水準に達しない者を切り捨てぬための措置に過ぎん。」


その言葉にまわりの生徒が息を飲んだのが分かった。空気も張り詰めている。


「また、授業中の態度も評価対象とする。集中を欠く者、規律を乱す者は、それ相応の評価を受けることになる。それでは諸君らの健闘を祈る。」

「あ、そうだ、あと、放課後の自主訓練は許可する。ただし、規則に反する魔術行使は厳禁だ。違反者には減点、あるいはそれ以上の処分を科す。以上だ。」

短く締めくくられる。

「では、そのまま本日の授業に入る」

一瞬の静寂。

誰もが姿勢を正す。

講堂前方にヒューバート先生が進み出る。黒板に魔力で文字が浮かび上がる。授業が始まる。

その瞬間から空気は完全に変わった。

もはやただの「授業」ではない。選別の時間が、始まったのだ。


 

講堂を出た瞬間、夕方の空気が肺に流れ込む。思っていた以上に、身体が重い。

「……はぁ……」フローラが隣で息を吐いた。「こんなに疲れるとは思わなかった……」

「そうね。」短く応じる。実際、疲労はある。だが、それ以上に感じるのは

(密度が高い)

時間そのものが、圧縮されていたかのようだ。

周囲を見渡せば、多くの生徒が同じように疲れを滲ませている。口数も少ない。無理もないだろう。

「もう始まってる、って感じだな……」少し前を歩くセドリックが呟く。

「当然でしょう?」アリシアが返す。「最初からそう言われていたじゃない」

だが、その声にもわずかな硬さがあった。そしてアリシアはそのまま急いで歩いて行ってしまった。

エドワード皇子は特に何も言わず、淡々と歩き続けていた。その視線は、どこか全体を測るようだった。

(……誰も軽く見てはいないわね)

昨日の出来事もあるだろう。あの場にいた者は、特に。

講堂から寮へと続く道を、私たちはゆっくりと歩いていく。夕暮れの光が校舎を染め、長い影を地面に落としていた。

「ねえ、メアリー」フローラが少し声を潜める。「大丈夫?……その、疲れてない?」

「問題ないわ」私は静かに答える。「この程度なら」

そう言うと、彼女は少し安心したように笑った。

「すごいね……私はもう頭がいっぱいで……」

(確かに、楽ではない)

けれど、理解できないわけではない。むしろ、少しわくわくしている。

やるべきことは明確だ。求められている基準も、ぼんやりとだが見えている。

曖昧さはない。それは、この環境において大きな利点だった。

寮の建物が近づいてくる。

「とりあえず、今日は休みたいわ…」フローラが小さく呟く。

「ええ。無理はしない方がいいわ」私はそう言いながら、ふと足を止めかけた。

(……とはいえ)

完全に気を抜く気にもなれない。

周囲を見れば、すでに何人かは足を止め、何かを話し合っている。おそらく、復習や対策の話だろう。

(動く者は、もう動いている)

それが、この場所の現実。

視線をわずかに上げる。夕焼けに染まる空は静かで、どこか不釣り合いに穏やかだった。

(悪くないわね)

自然と、そう思う。

張り詰めた環境。明確な評価。そして、逃げ場のない競争。

(やるべきことは単純)

さりげなく自分の力を示す。それだけ。

自室の扉の前で、私は一度だけ深く息を吸った。

さて、この二週間。どこまでやれるかしら。

ほんのわずかに口元を緩め、ヘレナが開いてくれた部屋へと入った。

しばらくアップしていませんでしたが、再開します。できれば最低でも月1で出せたらいいなと思います。今後も忙しくなかなかアップできないかもしれないのですが、できるだけ頑張ります。よろしくお願いします!

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