堕胎の復讐
「は? 妊娠した?」
「うん……」
「堕ろせ」
「え? なんでそんなこと言うの?」
「あぁ、ごめんって。そんな大げさなことじゃないだろ、金なら出すから」
彼を刺したくなってしまうほどの殺意が湧き立った。
なんで私が苦しいのにわかってくれないの?
お金だけの問題じゃないのに、本音で話しているだけなのにどうして決めつけようとするの?
なぜ私だけ苦しまなくてはならないの?
なら、あなたも苦しんで。
私がここで死ねば、彼は私の彼氏から犯罪者になり変わる。
人に向ける殺意を自分に向けたら、立派な合法的殺人だ。
苦しい気持ちも消せて、相手まで社会的に殺せる上に、罰せられることはないなんてなんて素敵なんだろう。
「ざまあみろ」
そう言って私は、彼に向けるはずだった刃先を自分の首に向けた。