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女子高生に蕎麦を奢らされる話  作者: 塩谷 純也
7/12

田貫大通り駅周囲探索(後編)

少しずつ『怪異の欠片』『非日常の破片』的なものを本文中に散布して盛り上げられれば良いな、と思っています。本作、ジャンルは恋愛なのですが、ホラー要素を推していきたいですので。


寺社仏閣の情景を文章にするのは大変難しいです。文章力が追い付きません、悲しいことに。



お腹を満たした私達3人は、再び田貫大通り駅周囲の探索に戻ります。ただ、おそらくは何も手がかりは見つからないでしょう。


「いっそ、神頼みしてみませんか?」

そうおっしゃられたのは、三条さん。


「先ほど駅前に置いてあったオブジェの元ネタと言いますか由来と言いますか。『とじめ』を祀った神社があるんですよ、近くに」


『とじめ』。

確か土の妖怪でしたか。『土は知っている』とか書いてありましたし、実際私も犯人を教えて欲しいと願ったりしました。どうせ見つからない犯人、妖怪の力を借りてみるのも良いかもしれません。


「バルバロッサで3、4分くらいです。おじさんの足でも10分くらいです。それくらいなら歩けるでしょう?」

「おじ様、目方を減らすことも考えた方がよろしいですよ?肥満は将来の心臓疾患のリスクを上げますから」

「……善処します」



■□■□   □■□■



私は歩きました。さながら巡礼者。それはまさに時間と空間を越える神の存在への問いかけ。

そして私は実感しました。

舗装されたアスファルトのなんと素晴らしいことか!平地を歩くことの膝の負担のなさ。

そして味わった途中、行政が景観づくりの一環で作ったと思われる藤棚という日陰。定期的に置かれるベンチ。まさにホスピス。巡礼者の憩いの場です。地方税はこういうところに生かされているのですね。


しかし

「これだけの苦労に見合うリターンがないのに。せっかくの休日なのに。私は何をしているのでしょう」

「おじ様、気を確かに。現実を直視してはいけません。太陽と同じです、目がつぶれます。ほら、後50mです。頑張りましょう」

ああ、そうですね。生きる意味を見失うところでした。危ない危ない。


一方でバルバロッサに乗っている三条さんは暢気なものです。途中で購入したドクペを飲みながら私と火種さんを見つめています。

何か思うところがあるのでしょうか。やたら胡乱な目をされています。


「なんでしょうか、三条さん」

「うーん。この後境内に行くために石段を登るんだけど、大丈夫かな、って」


!?だいじょばないですよ、それ。



■□■□   □■□■



10分程度でつくとおっしゃられておりましたが、腕時計をみるに25分は経過しております。

膝が笑っております。何笑ってるんですか。全然笑い事じゃないんですよ。


これは少し、自分の体力を見直した方がよろしいかもしれません。

若者と比較云々ではなく、人としてダメな気がしてきました。


何はともあれ到着しました。歩ききったのです。


三条さんに案内されたこの神社は、他よりも高台にあるためか、参るためには石段を上る他ありませんでした。三条さん曰く、この1つ以外に横から参拝するルートはないとのこと。

ですから、私は必死に駆け上がったのです。

スロープなり何なりお造りになれば良いのに。昨今のバリアフリーの概念に真っ向から立ち向かうスタイルです。


大きな鳥居をくぐりますと、すぐに目につくのは境内ある大きな公孫樹です。青々と葉を茂られています。秋は良い観光スポットになりそうです。周囲の樹の影もあり、公孫樹の木陰はだいぶ涼しいです。かいた汗に当たる風も、私から熱を奪っていってくれています。

よく見ると、この公孫樹。注連縄が張られていますね。ご神木なのでしょう。立て看板には県指定天然記念物の文字も。ああ、立派なことです。


「おじ様、こちらの神社、灯篭もですけど末社もたくさんありますよ」

火種さんが、境内を見渡しながら声をかけてきました。確かに7つも末社があります。これは多いです。


言われてから気になりましたが、なんだかちぐはぐですね。違和感もあります。何だかよくわかりませんが。


「拝殿も本殿も社務所もご立派ですね。でも手水舎や納札所はないのですね。参道も整備されておりませんし、何だか中途半端です」


言い方は良くないのですが、お金をかけている場所が建物に限局しているのです。建築業者との癒着を疑ってしまいます。ただ、しっかりとした作りですし、立て看板には古くに作られた建物であり、国指定重要文化財に登録されていると記載されておりました。


手水舎、納札所などは、参拝客のためのものですし。お賽銭や喜捨のことを考えれば、あってもよさそうなものなのですが。


何より参道がないのが気になります。いや、灯篭などがありますので、どこが参道なのかはわかるのですが、土のままで凸凹しているため、歩きにくいことこの上ないです。

土の妖怪である『とじめ』を祀っていらっしゃるから土のままなのでしょうか?



「お神楽を舞う場所もないですね」

火種さんがおっしゃるとおり、神楽殿もありません。場所によるものではありますが。


「田貫大通りのお祭りに神楽とかないからかなぁ」

「そうなのね」



「折角ここまで来たのですから参拝して帰りましょう。社務所に神社のリーフレットがありましたので、そちらはいただき、帰りながら読みましょう」



拝殿の前で参拝し、おじぎの後、鳥居の方へ向かおうと振り返りました。


ああ、違和感の正体がわかりました。


この神社、狛犬が反対を向いていたのです。入り口からですと、狛犬の背中しか見えなかったのが、違和感だったのです。


「この神社の狛犬は逆なのですね」

「あら、本当ですね。確か、京都の由岐神社も狛犬が逆なんですよね。安産とか子宝祈願の場所でそういうところがあるって聞いたことありますよ」

よくご存知でしたね。意外と博学です、火種さん。


しかしながら、社務所でいただいたリーフレットのご利益の欄には、安産祈願や子宝祈願など一切書いておりませんでした。不思議です。

というか、御祈祷すら受け付けていませんよ、この神社。お賽銭だけでやりくりしているのでしょうか。大変に豪気ですね。



■□■□   □■□■



帰りは行きよりも5分ほど時間を短縮して駅にたどり着くことができました。

この短時間で成長を遂げた私は、自分に拍手を送りたい。


途中何度か「バルバロッサ貸そうか?」という三条さんのお誘いがあり、何度も惑わされそうになりましたが、ここで搭乗してしまっては、私の心の中の何かが敗北してしまうと判断しました。



「『とじめ』の由来の神社とのことでしたが、リーフレットにはあまり記載はありませんでしたね。教育委員会が文責となっている神社の由来ばかりでした。そこにほんの少しだけ記載がありましたが、でもその限りです。後は7柱の御祭神の名前。申し訳程度に寄付について載っている程度でしたね」

汗でふにゃふにゃになったリーフレットを開いて中身を確認します。


「効能が知恵を授けるとかだったらよかったのに」

「御利益のことを神社の効能っていうのは美穂くらいだよ」

罰当たりですね。神をも恐れぬ所業です。

三条さんは郷土資料館で『とじめ』のことを知ったとおっしゃっていました。何故、そちらにはあるのに、祀っている神社の方にはないのでしょう。


いや、それこそ神のみぞ知る。深い深い歴史の泥の中の真実なのでしょう。それを信心深くも無い私が触れては、そこな罰当たり2人と同じになってしまいます。



そんな罰当たりな2人は捨て置き、私はそろそろ帰路につくことにしましょう。


「犯人捜しには至りませんでした。しかし、本日の目的であった三条さんの誤解を解く、ということに関しては達成できたと考えております。如何でしょう?」

「えっ、うーん。まぁ、いやらしいことはされていないんだろうなぁ、ということは分かったかな」


これだけ真摯に向き合っていたのに?その程度の理解なのですか?なんて理解力が低いのでしょう。


「……誤解が少しでも解けたのでしたら幸いです。では私は帰ろうと思います」



翌日。

私は勤め先の部長に呼び出しを受けました。


「君の性格上、おそらくは作り話だとは思っているのだがね。だが、火のないところで煙は立たぬというし、現に君が女学生と歩いているのを目撃したと通報があってね。いや、君のことは知っているからまず間違いなどは起こしていないとは思うのだが。だがね、組織としてのイメージが、だね。できればイメージを悪くするようなことは私生活でも謹んでもらえると

(中略)

ああ、長々と30分も話してしまったが、これも君のことを思ってなんだ。勿論、謹慎とかではないし、私も上から注意をするよう言われただけで、これっぽっちも君のことを疑っているわけではないので、そこのところは誤解がないようにして欲しい。以上だ。仕事に戻ってくれ」



なんだこれは!?



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