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女子高生に蕎麦を奢らされる話  作者: 塩谷 純也
3/12

御覧のあり様だよ、お嬢さん(後編)

リアルが忙しいと投稿ができないのです。申し訳ございません。

言い回しの工夫よりも「あれ、これの名前何だっけ」で筆が止まるのです。申し訳ございません。



私の目の前に立ち、警戒心に満ちた目でこちらを睨みつける三条さんは、休日にも関わらず制服を着用し、肩から竹刀袋をかけています。

そして、覚悟を決めたかのように一呼吸いれ、火種さんと私の間に入り込み、距離を開けさせられました。その後、……あー、何と申しましょうか、アリクイの威嚇のように立ち振る舞っています。


「美穂、何で制服着て竹刀なんて持っているの?今日部活なかったでしょう?」


火種さんも存じ上げていないようです。

火種さんが私服にも関わらず、三条さんが制服である理由が不明ですね。



「部活動に勤しむ勤勉な学生に見えれば、合法的に街中で木刀を所持できるでしょう?」



はい。火種さんの類友ですね、あなたは。合理性の中に狂気が見え隠れしています。というより隠しきれていません。白昼堂々とオヤジ狩り宣言です。この子もどこかネジが外れています。


「美穂は賢いわね。考えつかなかったわ」

狂人の思想は常人には思いつきませんよ、火種さん。学ばなくても良いです。『狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり』です。本物に足を突っ込んだら本物になってしまいます。引き返しなさい。


「賢くはないです。それと目立って仕方がないです。そこの喫茶店に移動しませんか?一旦状況をリセットしましょう」



■□■□   □■□■



休みのためか空席の少ない喫茶店。

店員さんに案内され、角の方の席に座ります。

大学生時代に初めて利用し、そこからほとんど変わらない内装。しかし、昨今の受動喫煙に乗っかり、分煙が進んでいるようです。今はテーブルスペースが分けられているくらいでしょうが、そのうち完全にセパレートされ、さらには屋内の完全禁煙に進んでいくでしょう。200円だったマイルドセブンが400円を超えましたことからも世の中の嫌煙が、喫煙者の肩身を狭めていっているが財政面をもって感じさせてくれます。

今の肩身の狭さは、私が禁煙席に座った喫煙者であることだけに由来するものではないでしょうが。


「このお店はエスプレッソマシンを使われていらっしゃるのですね。おじ様。私はアイスカフェモカを所望します」

「……。結構です。私は水で構いません」

火種さんが何の躊躇もなく、私にカフェを催促してきたことにぎょっとしながら、水を頼む三条さん。この場の空気をきちんと読めるのであれば、普通はそういう注文をしますよね。少しはこの子に常識があるのだと安心しました。

火種さんはどういう思考回路をしていたらアイスカフェモカを要求出来るのでしょうか。



「三条さん、でしたっけ。ここは私が出しますので、好きなものを頼まれてください。今回、私とその子との関係性に誤解があったようだとお聞きしました。説明を行うにあたり、私に対してマイナスの先入観がおありでしょう。きちんと判断していただくには、私に対しての感情をフラットにしてお話を聞いていただく必要がございます。0に持っていくにはプラス要素として微細でしょうが、飲み物すら要らないという拒否ではなく、フラットな思考にするために、相手の土俵に乗る度量を見せるつもりで、好きなものを頼まれてください」

「……では李華と同じものをお願いします」


個人的感情を持ち込まずに話し合いをしよう、とは何とも大人びた所作です。背伸びをしたい学生諸君らには効く言葉でしょう。先入観なんてあって当たり前です。その先入観が負であるのならば、それを利用して逆に相手に負い目に感じさせるなんてテクニックは話術の基本です。最終的に残るのは、『話し合いをする人間に奢ってもらった』という金銭的事実。個人感情と金銭的事実のどちらが天秤として重たいかなんて火を見るよりも明らかです。社会経験の差が生きましたね。


「美穂も頼むの?おじ様の財布の薄さをなめない方がいいわよ。わざわざ来てもらったのだし、アイスカフェモカは美穂に譲るわ。私は水で」

「……なら私も水でいいわ」


貴様ァ!邪魔をするんじゃあない!


「ちゃんと下ろしているから無用な心配だ。すみません。アイスカフェモカを3つお願いします」



■□■□   □■□■



アイスカフェモカと添えられたロータス ビスコフが私達の前に置かれます。


「ごゆっくりどうぞ」

怪訝な顔をした店員さんが定型文を言って去っていきます。


しかし知っていますよ、店員さん。

私達3人がどういう関係性か探るべきだとか、通報すべきだとか店長さんに提案していたことを。「先走った行動をしないように」と店長さんから咎められていらっしゃったことを。


このお店に通った歴史が、私と店長さんの信頼関係に結びついているのです。私が不審者でないことは、店長さんは重々ご存知です。普段ならロータス ビスコフなんてついてこないでしょう。明らかに店長さんからのお詫びの印です。申し訳ない。



「おじ様が選ばれたこちらのお店。コーヒーにクッキーが付くんですね。大変お得です。美味しいですし」

「……」


お嬢さん、名古屋の喫茶店の豆菓子ではないんです。普段は付きませんからね。


三条さんも小声で何をおっしゃられているんですか?


「10円出したらおかわり出来るかな」ではありません。聞き耳を立てていたであろう店長さんが困っているではないですか。やめて下さい。



「事情の説明をしてもよろしいでしょうか?」

「えっ!?あ、はい」

「よろしくお願いします、おじ様」


意識がお菓子に持っていかれ過ぎでしょう。大丈夫なんでしょうか、この子。

「お菓子上げるからついておいで」と不審者に言われ、ノコノコついていくんじゃないかと心配になります。


というか、今の状況がまんまそれです。だとしましたら、ノコノコついて行った手遅れな子じゃないですか。幸いなことに私は不審者では無いので助かっていますが、渡る世間は鬼ばかりです。そのうち食われて泣きを見るんじゃないでしょうか、この子。


心配でしょう?という表情で私を見ないで下さいな火種さん。私は貴女の行く末も心配しています。



■□■□   □■□■



店長さんのご厚意もあり、マイナスだった先入観をだいぶプラス寄りの0に出来ました。それが功を奏したのか、三条さんは真剣に私の話を聞いてくれています。

横に座っている火種さんは、途中茶々を入れながらも話の補填をしており、三条さんの理解を促されていらっしゃる。


「良くわかりました」


30分ほどお話し、一呼吸を入れた後の三条さんからの返答です。私の真摯な説明が届いてくれたみたいで安心いたしました。


「しかし、説明を聞いた上でも理解できないことが2つありました。質問しても良いですか?」


ディスカッションがしっかり出来る良い子です。話を聞いた後にまとめて質問をする。この子には討論のセンスがあるのでしょう。親御さんの教育の良さが見えてきますね。


「構いません。お答えできることはお答えします」

「ありがとうございます。では1つ目の質問なんですが


ーーーなんで、ここまで李華に奢って上げちゃっているんですか?李華が調子に乗っているのおじさんのせいですよ?」


そうですね!なんででしょうね?そこんところを私も教えてほしいです。


出出しから躓かされた感が強いです。質問と言うよりも指摘、グゥの音も出ません。

それもこれも全て、貴女の隣に座っていらっしゃる火種さんが

「このビスケットとアイスカフェモカのおかわりを下さい」


自由過ぎるだろうッ!

分別とか節度とか、ご母堂の胎内に置き忘れて産まれて来たのかッ!


「おじ様の分も頼みますね」

あ、はい。よろしくお願いします。


……じゃねぇ!なんなんですか、貴女は!



筆者の大好物のLotus Biscoffのダイレクトマーケティング回。

この回をキーボードで打ち込む際にも食べていました。なろうの利用規約に違反していましたら、叩頭してすぐさまに文章を抹消する予定ですが、それまでお付き合いください。


ベルギー生まれのかのお菓子は大変コーヒーに合います。それもそのはず、Biscoffは略称であり、正語はBisuits for Coffee。つまり、コーヒーのためのビスケットなのです。合わないわけがねぇ!

同じくコーヒーを取り扱っていらっしゃるKALDI COFFEE FARMで売っておられます。美味しく文章を書くための脳への糖分補給にも適しています。おいしくてつよくなるので是非に是非に。

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