三条 美穂の失踪 ②
今話は、内容が分かりにくいこともあり、1度書き直しての文章になっております。それでも読みにくい/理解しにくい文章になっています。どうやれば、もっと伝えやすく書けるようになるのでしょう。
「そう思われた理由をご説明いただけますか?」
遠藤さんが私に問いかけます。
「はい。大きく3つあります」
「まず1つ目ですが、彼女の自転車です。彼女は自身の自転車に名前を付けていましたが、ご存知でしょうか?」
目の前にいる遠藤さんに質問をします。
「ええ。報告にあります。『バルバロッサ』と」
遠藤さんは手元の資料を見ながら答えてくれます。
「はい。この『バルバロッサ』という名称。どう意味かはご存じでしょうか?」
遠藤さんに問いかけます。首を横に振られる遠藤さん。「知っているか?」とその後婦警さんにお訊ねになりますが、婦警さんも同様です。
「少しマニアックな話になりますが、これは小説のキャラクターが搭乗する宇宙船の名前なのです」
「そうなのですね」
意外そうな顔をする遠藤さん。その後ろで無表情でメモを取る婦警さん。
正確には戦艦なのですが、そこは細かくはお伝えしなくてもよろしいでしょう。
「こちらは友人さんからお聞きした話なのですが、その友人さんがアルバイトのため原付を手に入れたことを彼女にお話しされたそうです。その際に「私も」と彼女が真っ赤な自転車を披露したそうです。その時、自分の自転車に『バルバロッサ』と名前を付け、そして友人さんの原付に『ブリュンハルト』という名前を付けられました」
「ふむ。しかし、それが何か」
「自分の真っ赤な自転車に『赤兎馬』とか『金田バイク』とか好きな名前をつけるのは別に構わないのです。単独でも意味のある名前ですので。ただ、『バルバロッサ』という名前は『ブリュンハルト』という相方がいなくては付けられない名前なのです」
「つまり、先に友人さんの原付に『ブリュンハルト』の名前を付けるつもりで、自身の自転車に『バルバロッサ』と名付けた、と?」
「はい。おかしなことに友人さんの原付が『白い』という情報がない時点で、です。色が違っていた場合ですと、成立しない名称の組み合わせなのです」
そう。火種さんから以前伺った『ブリュンハルト』と『バルバロッサ』。詳しく話を聞くと『バルバロッサ』の方が先に命名されていました。その時は「仲が良いことだな」と思ったのですが、先に白い原付に『ブリュンハルト』と名付けて、その後に『バルバロッサ』と名付けるのとでは意味が変わってきます。
火種さんも私が原付の色を当てた時に驚いていました。普通はそれくらいおかしなことなのです。
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「偶然なのではないでしょうか?組み合わせが合わなかったら、名称変更していたかもしれませんよ」
婦警さんが話に入ってきました。
小説、もといあのアニメを見ていない人間からしたらば、私のマニアックな話もでっち上げと思われても仕方がありません。
「大塚君。こちらが話してくれと頼んだんだ。それをお願いした側が否定するは失礼だよ」
「あっ……。申し訳ありません」
遠藤さんに怒られ、婦警さんに平謝りされました。
「いえ。これ1つだけで語るとしたらば、私の妄想のように聞こえても仕方がありません。実際、名前を変えたかもしれませんし、『バルバロッサ』と『ブリュンハルト』の組み合わせがマッチしたのがたまたまの可能性だってあります。婦警さんがおっしゃられるのも無理ありません」
「しかし、偶然が数個重なれば、それは恣意的なものを感じます。その2つ目ですが、彼女にお会いした日、彼女は制服を着用していました」
そう私が言ったのを聞き、婦警さんが資料を遠藤さんに渡されました。
「彼女が木刀を所持することを合法化するために着用していた、という報告がありますね。正当な理由がなければ自宅外の所持は認められません。軽犯罪法です。しかし、制服を着ていることで部活帰りに見えれば注意喚起はしませんね。今回のケースでは、実際他人への威嚇行為という悪用目的での公共の場への持ち出しです。普通にダメですね」
「ええ。ダメですよね。でも、制服を着用することでスルーされる確率は上がります。彼女のずる賢さというか卑劣さというか法の抜け目を潜り抜けようとする性根の汚さが見えてきます」
おっと。つい本音が。遠藤さんは苦笑されいますが、婦警さんの方が細目で睨みつけてこられます。
「あ、失礼。話を戻します。この制服着用なのですが、別に部活帰りに見える必要ありませんよね。彼女くらいの年齢であれば、部活の道具を持っていれば、別に制服でなくとも学生に見えませんか?」
「……それでも制服を着用いる方が信憑性は増しそうです」
婦警さんが言葉を挟みます。
「しかし、必須ではありません。でも実際彼女は制服を着てきました。自転車に乗って。彼女に事情を説明するため、『彼女の家に近い師越駅に場所をセッティングしたのにも関わらず』です。わざわざ制服を着る必要もなく、自宅が近いのに自転車でやってきたのにも違和感を覚えます。あの時は、そこまで頭が回りませんでしたが」
そう。
火種さんと話し合い、事情を説明するのであれば、三条さんの家の近くまでこちらが足を運ぶべきだ、と結論が出ました。そうでなければ、私の家からも、火種さんの家からも遠い師越駅までは赴きません。
しかし、実際当日の三条さんは家の近くにも関わらずわざわざ自転車に乗り、移動されて来ました。勿論、どんな短距離でも車で移動される方がいらっしゃるのと同様に、短距離でも自転車に乗られる方はいらっしゃるでしょう。しかし―――
「では、なぜそのようにしたのでしょう?どうお考えなのです?」
「あの日、私と友人さんとで三条さんにお会いする前に打ち合わせをしていた。言い方は悪いのですが、懐柔策ですね。どのように信用を得るか。そのように誤解を解くか。まぁ、話していると脇道に逸れてしまい、結局全ての方針は決めきれませんでした」
「―――おそらく、その内容を知ったからではないでしょうか。私は彼女に事情の説明をする上で身分の証明をすることもお伝えしました。その情報があれば、その後『どこにどんな内容を通報すれば良いか』計画を立てれます。一旦私服で向かっていましたが、制服を着た女学生を伴い、休みの日、街中を散策していたという客観的な事実を作り上げるため、帰宅し着替えなおした。その後時間に間に合わなくなるかもしれないため自転車でやってきた。そんなストーリーであれば」
「……通報された腹いせもあり、感情的に事実を創作していませんか?それらの根拠は今のところはありませんよね」
と婦警さんが反論としてこられます。
「勿論です。家から近いのに自転車で来たこととわざわざ制服で来られたことに違和感を感じたこと。これだけが事実です。それだって三条さんの仰った軽犯罪法から逃れる口実がそのまま理由かも知れず、その偶然を私が歪んで受け取っているのかもしれません」
「―――しかし、1度目は偶然でも2度あれば奇跡です。しかし、3度目の偶然、それはもう必然です」
そんな言葉を少し前やっていた特撮番組を視聴した際に聞きました。実際、確率論で言えば、複数回稀なことを起こすには、意図的に操作をする必要があります。実際、偶然を疑うことが3度あれば、それはなんらかの操作があると言わざるを言えません。
「その3つ目というのが」
「今回の件です。友人さんが彼女を疑い、問い質すことを予定したタイミングでの行方が分からなくなったことです」
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「その3点から彼女は、友人さんの行動を『なんらかの方法』で把握していたのではないか、と考えました。その方法が何かはわかりません。盗聴器かもしれませんし、第六感的なものかもしれません。私にはわかりませんが、友情を育み続けることで以心伝心できるようになるのかもしれません」
そう答え、遠藤さんをみます。
「誘拐を疑っての捜査で、三条 美穂さんの自宅の家宅捜索が行われています。報告では、彼女の家には何も仕掛けられてはいませんでした。勿論、盗聴器の類もです。しかし、三条さんの方が仕掛ける側ではないか、という考えは盲点でした。その関係者に関しての盗聴器の所持は調べておりません。しかし」
「非現実的ですね。三条 美穂さんが無線技術を所持している報告はありません。貴方の発想が飛躍し過ぎている、と私は思います」
苦笑しながら返答してくれる遠藤さん。あっけない返答をされる婦警さん。
正直理解してくれるとは思っていませんので、そこは別に構わないのです。
「我ながらしゃべっていることがオカルトじみていますからね。さて、私の覚えた違和感はこんなものです。自分でもはっきりと言えないことを何とか言葉にしたまでですので。取り留めがなく申し訳ありません」
「いえ。ご助力感謝いたします」
オカルトと警察の相性の悪さをつくづく感じます。
呪いは不能犯。祟り殺す。呪い殺す。恨みで人を傷つける。いずれも法では裁けません。実際に1970年にあった公害企業主呪殺祈祷僧団の呪殺祈祷に関して、司法は手も足も出せませんでしたし。
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遠藤さんと婦警さんから退室の許可をいただき、応接室を後にしました。
応接室から出るとすぐさま部長が話しかけてきました。
この人、入口の近くでずっと待っていたのでしょうか?「私は君を信じていた」「でも金輪際紛らわしいことはするな」と同じ会話の中で手のひら返しを繰り返しています。その速度たるやドリルアームみたくなっています。
警察の事情聴取に部長のお小言。すでに今日の仕事のモチベーションが底をつきかけています。
これから仕事ですのに。
そんな仕事へのやる気のなさに部長も気づいたのでしょう。「今日はもう有給休暇を使いなさい。溜め込むだけ溜め込んで使っていないでしょ、君。そんなやる気のないオーラ出して仕事をされるとね、他のスタッフもやる気が削れていくんだよ。ほら、あれだ。割れ窓理論。」と有休消化を持ち掛けてきます。
幸い、本日は特に私がしなくてはいけない仕事はなかったはずです。庶務課の方に掛け合って、今日は早退致しましょう。
お昼には早いですが、前から気になっていたカレー屋にでも行きますか。
平日に行ける機会など、そうそうありませんし。