空にあの星が見えたから私は戦う決意をしたのです
「遂にこの時が来たんですね……」
モト子は、空を覆うほど生い茂る木々の隙間から見える僅かな星空を見て呟いた。
彼女の手には長い筒状のものが入った革袋が握られている。
わずかにふんわりとした枯れ葉の土をゆっくりと進んでいった。
モト子は真っ赤な厚手のロングコートのフードを目深にかぶり、やや顎を引きながら周りを警戒する。
革製のスパイクブーツにたっぷりと敷かれたフェルトが、歩行の衝撃を和らげる。
静かな夜だった。
生き物の気配のない、静かな森の夜だった。
歩みを進めるごとに、段々と木々の輪郭がぼんやりとしてくる。
「……ただいま」
モト子がペースを落とし独り言ちたその時――
「あらぁ? こんな夜中に珍しいわねぇ!」
急にかけられた声に、モト子の肩が少し跳ねる。
しかめっ面になり振り返ると、癖の強い長い髪の女がニコニコと手を振っていた。
「ふふ……見ぃつけた♪」
彼女はニヤリと笑うと、ゆっくりとモト子へ近づく。
「あ、あなたなんでここに……」
「んー?だってぇ、ずっとあなたとお話ししたかったんだものぉ。だからずっとお家で待ってたんだけど全然来ないんだもん!私ったら寂しくて死んじゃうかと思ったわぁ~!」