違和感
「はい、ドーーーーン!!!」
化け物が突如、横にふっとんだ。
「いぇーーーい」
視界の隅からマコトがすごい勢いで飛んできて、
そのまま、3mはあろう、
その化け物を蹴り飛ばした。
「ズッチー、ごめんねー、
さすがに、やばくてさぁ」
なんて軽い口調でニコニコしている。
「あれぇ~?ズッチー?だいじょうぶ?」
マコトがしゃがみながら覗き込んでくる。
「うーん、ううん、う~ん」
マコトは首をかしげながら不思議そうに唸る。
「あや!」
突如、マコトは驚いた顔をして、
その場から飛び上がった。
その瞬間、
『バシュ!! ガガガガガ』
さっきまでマコトがいた場所に、
太く黒い針が飛んできて、地面にささる。
どうやら、
その針は化け物の方から飛んできたようだ。
化け物の背に生えた長い毛の隙間から、
黒い骨が突き出している。 背筋と、
肉が腐ったガスで骨を飛ばしているようだ。
ソイツが起き上がり、
マコトの方を見て吠えた。
《アアアア!!!!ゲギャゲギャゲギャ‼》
『ダダダダダダダダダ」
化け物は激しく怒り、
胸を叩いて、ドラミングをした。
化け物の飛び出た肋骨が軋み、水疱が破れ、
中から赤黒い液がビチャビチャと噴き出す。
「ありゃりゃのりゃ」
マコトはこんな時でも能天気だ。
そして、
マコトは化け物よりも、
柚子を不思議そうに見ている。
依然として、柚子は動けない。
しかし、不思議と視界ははっきりとしていた。
「んんんん?、、、まあ、いっか」
そう言ったマコトは再び化け物に向きなおす。
《亜亜亜アアアアアアアアアアアアア!!!!》
先に動いたのは化け物であるように見えた。
ソイツは叫びながら、太い足と腕を後ろにおくり、
前方にむかって走り出した。
巨大な体躯が、信じられないような速さで、
地面を響かせマコトに迫り、飛び上がった。
「マ、、ト、、サン、、」
柚子はかすれた声でマコトの名前を呼んだ。
だが、マコトの姿はそこには無かった。
化け物が動くよりも早く、
正確には、化け物が動く前に、
素早く動き、地面に落ちていた小銃を拾った。
そして。
『ズババババババババババン!!』
マコトの小銃から放たれた弾丸が化け物の
胸を正確にとらえた。
まるで、化け物がそこに来るのが決まっていたように
弾丸が吸い込まれる。
《アギャギャギャヤヤヤヤ!!!!》
『ズザザザザザザザ』
化け物は鼓膜が破れるような音で叫び、
苦痛を浮かべ、
前方に走った勢いのまま滑り倒れる。
そして。
「うー!、よぉーいっしょ!!」
『ズバン!!!』
化け物が倒れるのと同時に、
マコトがソイツの顔に激しい蹴りを入れた。
またしても、
そこに化け物が倒れるのがわかっていたような
正確な蹴りであった。
マコトの信じられないような威力の蹴りが、
化け物の首を一撃で捥ぎ取った。
ちぎれた首の断面から赤黒い液を噴き出し、
化け物は沈黙したのであった。
そして。
マコトは柚子の方を向き、
「うん、で、あなたは何なのかな?」
柚子は、自分の視界と意識が戻りつつあること。
そして、
針が刺さったままの傷が治りかけている事を感じた。