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1 誕生! 愛と正義の使者プリーズム・ウーマン!

元ゲームクリエイターのマップメイカーとは別の作品です。特撮とか変身ヒーローとか昔から好きだったのでそういう作品を作ってみました。不定期な連載になるかもしれませんが、この作品にお付き合いいただければ幸いです。

・1 超お嬢様学校の一般庶民


アタシの名前は三ツ矢嘉穂かほ、先日亡くなったお婆ちゃんの名前、嘉保子からもらった名前でアタシはこの名前が大好きだ。お婆ちゃんのお葬式が終わった次の日、昨日はきれいな青空だったけど今日も空はとても青かった。


「いってきます!」


玄関に飾られた写真は先日亡くなったお婆ちゃんの若い時の姿だ、ビルの前でお婆ちゃんの隣のダサい服でヘルメットをかぶり白いギターを持った人は若い時のお爺ちゃんだそうだ。見た目からも今でも通用しそうな相当なイケメンである。(服装は壊滅的にダサいけど)


アタシは制服の上着を着ると写真に写っていたお婆ちゃんの大好きだった真っ赤なスカ ーフを身に付けて学校へ向かった。


《私立かぐや姫学園》


これがアタシの通う高校の名前だ、名前からも想像がつくようにこの辺の男の子達みんなが憧れるお嬢様学校そのもの、アタシはその中では下の下といったステータスかな。もちろん成績の事ではなく、家庭の事である、成績だけは負ける気はない!


お婆ちゃんが


「人の価値は家柄で決まるのではありません、その人の資質で決まるのよ」


と言っていた、これを実証する為にもアタシはその辺の名ばかりのお嬢様には負けたくない!その気持ちで頑張って特待生で入学したのだ。


しかしやはり周りを見渡すと場違いなのかなと思ってしまう事もある、それほどここは別世界なのだろう。有名女優の娘に子役タレントに現役アイドル、中には政治家の娘に世界的芸術家の娘も目白押し!まさにお嬢様のバーゲンセール(これが庶民のボキャブラリーの限界)と言えよう。


車で送り迎えされる娘もこの学校では普通の光景である。しかしその中でもひと際異質な黒いスポーツカーが現れた。


全体が黒い国産車の高級スポーツカーのようなのだがその横には紫と赤のラインが一本ずつ入っていて車体のあちこちにセンサーやマシンガン発射出来そうな穴や砲が隠れてそうなパーツで武装されていて警察のパトライトまで付いているまるで走る要塞みたいな車だ。

異質なのは車だけでは無い、その運転手はトレンチコートで全身を包んでいるがどう見てもその顔は人間の物では無い。


例えるならば


「ロボだこれー!!」


とでもいうべきだろう。安全運転で徐行から止まった車の中から見覚えのある娘が降りて来た。


「嘉穂ちゃんおはよっ!」


とてもくだけたお嬢様とはあまり思えない気さくな態度、彼女の名前は宮口このみ、こう見えても現役警視総監、宮口洋の孫である。そして後ろの車にいるのは彼女の運転手兼ボディーガードだそうだ。


アタシとこのみとは親友同士である。他にも仲のいい友達はまだいるけどその話はまた後でする事になると思う。

このみがボディーガードに何かを言っている。そしてその後彼(?)が運転する車は校門の外へ走り去って行った。


このみと話していると、後ろから見覚えのある人影が近づいてきた


「ごきげんよう、嘉穂さん、このみさん」


黒髪の長髪でそのたたずまいはまさに大和撫子と言える彼女の名前は鶴来流星つるぎコメット彼女は車検ギリギリデザインの大型バイクに乗ってのご登校だ、しかしなんとバイクが変形して??? 機械でできたドーベルマンのような犬の姿になった。もうここは別世界過ぎて何があってもビックリもしないけど。


「おはよう、コメットさん」


そう言われた彼女は少し赤面しつつむくれた顔になりながらも引きつった笑いを浮かべていた。


「え……えぇ……おはようございます」


彼女が何故こんな名前なのかというと、どうやら両親とも男の子が生まれる事しか想定していなかったので流星という名前を決めていたらしい、しかし生まれて来たのが女の子だったので流星と書いて(コメット)と読むようにしたらしい、なんというキラキラネームだろう。実際に彼女はこの名前に少々コンプレックスを持っているらしい。


 しかし私達は親友同士、なのでこの呼び方でもコメットさんは怒らないのだ。

しかし昔にクラスメイトの男の子達が彼女をからかって


「コメットさーん」


と呼んだ時、彼女は目を光らせながらそこにいた男の子を全員泣くまでトラウマを与えたらしい。彼女が怒ると何が起きてもおかしくない、きれいなナデシコにも棘があったのだ。


アタシはその直後コメットのボディーガードの番犬と目があったので挨拶した。


「おはよう、スプレンダー」


アタシがそう言うと威嚇していた番犬は甘えた声でクーンクーンと鳴き出した。敵じゃないと分かってくれているからだろう。


三人に増えたアタシ達は他愛のないおしゃべりをしながら校舎に向かっていた。


と、その時!後ろからド派手な赤青白の床屋カラーよりも凄いセンスの飛行物体が登場した。ヘリでも無ければ気球でも飛行船でも無い変な乗り物、こんなのに乗って現れるのは学園広しといえど一人しかいるわけがない。


「おーっほっほっほっほっほっほ 皆さま―!ごきげんよーうですわー」


学園一の変人にして日本有数の大財閥、立花コンツェルンの御令嬢 立花ベル様のご登場で ご ざ い ま す 。

本当なら他人のふりしたいけどアタシは彼女の友達なのでそうも出来ないのである。


「お、おはようございます……ベルさん」


! 直後にベルがアタシの胸倉をすごいスピードで掴んできて


「さん付けをするなよ! このデコ助野郎! ですわ」


漫画の台詞を元に一般人のしゃべり方を意識しているのだろうけど、どこか違う。でも目は笑っていない、アタシでもこれは檄おこだと分かった。


「ご、ゴメン! お、おはようございます……ベル」

「おはようございます、嘉穂 このみ コメット ですわ」


そういうとベルはニッコリと微笑んだ。


……しかしアタシみたいなド庶民がなんでこんな日本でも数本の指に入る大財閥のお嬢様と友達になったのか、それにはとても深くて臭いわけがあった。

 


 ◇◆回想◇◆


放課後の帰り道、商店街を歩くアタシたち三人組はある店に向かっていた。カラオケサファリの斜め向かいにあるアンティークなデザインの喫茶店 ステラ堂 ここがその目的地である。


「おばちゃんこんにちはー!」

「また来たよーっ」

「マチコ様ごきげんよう」


店の奥から女店主と思われる少し怖い顔のおばさんが姿を現した


 学校に入学したアタシたち三人はウマがあったらしくすぐに仲良くなれた。そしてこのみとコメットにこの店を教えたのはアタシなのである。実はここはお婆ちゃんが行きつけの店だったのでマチコおばさんとアタシは顔なじみなのである。


「いらっしゃい、今日は何にするんだい?」


そう言うとマチコおばさんはメニュー表を見せてくれた、ここのメニューは独創的で面白いネーミングが多い。


メニュー


・チロリン村 700円

・007 700円

・おばけの Q 999円

・意地悪魔女の気まぐれ 750 円

・ドリアン女王 3500円

・女王の欲張り踊り 820 円

・ボールボーイ 750 円

・蜘蛛御前 960 円

・パンドラスペシャル 1020 円

・天空聖者 1300 円


どれも変な名前ばかりだが味は間違いなく絶品のスイーツばかりである。


「アタシ、女王の欲張り踊り」

「パンドラスペシャル!」

「蜘蛛御前をお願いします」


「はいよ、ちょっと待つんだねぇ」


そういうとマチコおばさんは店の奥に消えていった。


サファリのカラオケ代とこちらを選ぶかでいつも三人で意見が食い違う、確かにサファリのカレーはお代わりし放題でカラオケより有名なのだ。しかし今日はみんなこちらに来たかったらしい。


 しかしみんなが気になっているものがある それは


ドリアン女王 3500円


この値段といい名前から漂う地雷臭といい とても頼む気にはなれないがどんなメニュ ーか気になって仕方がない。こんなものを頼むヤツは猫型ロボの居候がいる家の男の子の悪友のお金持ちか、お金捨てたい病の患者くらいのものだろう。売れるわけないのに客寄せ用の目玉にしている、と考えればいいと思っていた…… しかし!!


「はいよ、お待ち。欲張り踊りとパンドラと蜘蛛御前だよ」


スイーツが提供された事でみんなドリアン女王の事なんてどこかに行ってしまった。


「美味しそー!」

「いっただっきまーす!」

「それでは、頂きます。」


三人とも夢中でスイーツにむしゃぶりついた。


アタシの注文した 女王の欲張り踊り とは宝石のような形にカットされた色とりどりのフルーツが躍っているようにちりばめられ中心に女王をイメージした銀色のアラザンでコーティングされたムラサキイモのケーキのスイーツだった。


このみの注文した パンドラスペシャル は全体的に規則正しく並べられた堅く焼いたケーキを無機質な銀色の砂糖菓子のコーティングに金平糖が星をイメージするように置かれていてストロベリーとラズベリーのソースで機械仕掛けのような形を独創的に描いている。 やたらと口が渇くので横には水差しも置かれていた。


コメットの注文した 蜘蛛御前 は和風の抹茶ケーキと餡子を中心に置いて蜘蛛の足のように飴細工を八本添えてある。その蜘蛛の足には縞々になるように黒蜜が塗られている雅な意匠である。


「おいしー!」

「マジ最高―!」

「美味しゅうございます」

「ところでこのみってさー」

「何?」

「警視総監の娘なのに買い食いなんてしちゃっていいの?」


このみが不敵な笑いを浮かべながらドヤ顔をした。


「ふふふーん、お爺様の台詞を借りるとね……正義の味方は子供の前でたばこを吸ったり酒を飲んだりしてはいけない!って言ってるの。でも、これを逆に言うとね」

「逆に言うと?」

「どうなるのです?」

「子供に見つからなかったらタバコを吸っても酒を飲んでもいいという事! すなわちこの買い食いも見つからなかったらお咎め無しってわけよ!」

「それでいいのか……。」


これが現役警視総監の娘だというのだから日本の未来は明るいのかもしれない……。

もう一度言う、これが現役警視総監の娘だというのだから日本の未来は明るいのかもしれない……。


 こんなバカ話をしながら三人がスイーツに舌鼓を打つのは毎度の光景だったのだが、今日は少し違った。


「!!??? 何なのこの臭い??」

「最悪!!」

「激臭ですね」


気になった三人で斜め後ろの席を見てみた…… そこには衝撃の光景が!!!


ドリアン女王


まさか本当にドリアン女王を注文する人がこの店の客にいたとは、世間とは広いものである。しかもなんとその服装はアタシたちと同じ学校の制服、世間はやはり狭いのかもしれない。


「あら、ごきげんよう ですわ」


目の合った彼女は学園の者なら誰でも知っている超有名人、立花ベルである。超美人でお嬢様学校でも学年一の大金持ち立花コンツェルンのお嬢様 そして極度の変人で目立ちたがり屋。ある意味アタシたちからは雲の上の存在ともいえる人だ。


そんな彼女が食べているのは間違いなくドリアン女王 何故ならドリアン女王以外のスイーツは全部注文した事があるので一度も見た事の無いスイーツ=ドリアン女王という事になる。


「皆様も少しいかがですか?」


ベルが巨大なドリアンのケーキを持ってこちらに向かってくる!その度に臭いが増す!

よくテレビのバラエティ番組で臭い食べ物としてシュールストレミングやクサヤやホンオフェなんてのを出すけどアレは臭いを感じないテレビの向こうだから笑えたのであって …当事者になるとこの臭いは凶悪としか言えない、しかし人の好意を無にするなとお婆ち ゃんも言っていたので


「はい、では少しいただきます」

「本当ですかっ!嬉しいですわ。わたくし同年代のお友達とこの様なケーキの食べ比べするのが夢だったのですわ」


望めば何でもできそうな大金持ちがこんなささやかな事程度が夢でいいのか? と思いつつアタシはドリアン女王を鼻をつまみながら食べてみた。


「!!」


今までに食べた事の無い味が口の中に広がる……不味いのか?というと真逆だ。


 「美味しい…… 臭いのに」


カウンターの向こうではマチコおばさんがニヤニヤしながらこちらを見ている。ドリアン女王は彼女の代表とも言えるほど、よほどの自信作だったのだろう。


「へー、私も食べてみたいな」

「私も一口頂けますかしら?」


人を毒見役にさせて二人は現金なものである。美味しいとわかった途端に分けてもらおうとしている二人に対しベルさんはニッコリ笑って


「よろしくてよ、一つ条件がありますが」

「「条件?」」

「ええ、わたくしとお友達になってくれませんか?」


学園一の大金持ちに身上調査や審査も何もなくこんな事を言われたのである、アタシは二人ともすぐ返答できずに固まるのかと思っていたが…


「いいよ!よろしくね」

「こちらこそよろしくお願い致します。」


そういえばこの二人も形で言えばお嬢様だった、警視総監の娘に一等地の自社ビルの本屋の娘、この中でド庶民と言えるのはアタシだけだった……。

「改めましてよろしく、わたくしは立花ベル。 ベルとお呼び下さい。」

「はい、ベルさん」

「よろしくな!ベルさん」

「かしこまりました、ベル様」


その直後、ベルが不機嫌そうな顔になり睨みつけるように顔を近づけてきて


「そんな他人行儀にさん付けしないで、ベルと呼んで下さい ですわ!」


その態度にアタシたちはすこし抵抗を感じつつも


「ゴメン ……ベ ル ……」


学園一のお嬢様に失礼な言葉遣いをしてしまった―!! とアタシが思っていると


ベルはむしろそう言われて嬉しかったみたいだ。そう考えると彼女も普通の女子高生なんだなと感じた。


「あんた達、早く食べてくれないかい? 他の客を待たせてるんだよ」


マチコおばさんが急かしてきた。それもそのはず、ここは隠れ家的な店で結構人気があるため、時間が経つと会社帰りのお客さんが一気に増えるのだ。アタシたちは残っていたスイーツを急いで胃袋に流し込んだ。ちょっと急いだためにむせたのは内緒だ。


「「「ごちそうさま」」」

「またおいで、お嬢ちゃんたち」


ステラ堂を出たアタシたちは家に帰る事にした、ベルは大金持ちなので執事付きの車でも迎えに来るのかと思っていたが……予想ははるかに斜め上だった。


「それでは皆様ごきげんよう、また学校でお会いしましょうですわ」


と何もない場所でお辞儀をしたのである。いや、正式には何もなかったのではない。ベルが右手を上にあげると上からロープが降りて来たのだ。

上空を見上げるとなんと!赤青白の床屋模様よりもド派手な空飛ぶ乗り物が空中で待機していた。


「それではさようならーーーですわーーー」


 流石の二人もこれには唖然…全員で学年一のお嬢様の変人が雲の彼方に消え去るのを呆然と見ていた。これが立花ベルと私達が友達になったいきさつである。


◆◇回想終わり◆◇

今回はまだ変身ヒロインが何故変身できたのかわからない日常話でしたね、次回、その秘密が明らかになります!次回、『ひろまご!』『ダイバッタの贈り物』にご期待下さい!

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