第3話 ネコチャン…
ネコじゃない、人狼だ…。
「うわっ」
「バーデ魔導士!!」
道の中央にうずくまるそれが急に動き出し、私に襲い掛かってくる。このまま行くと覆いかぶさられそうだったので、私はパッと瞬間移動し、その後ろに回る。
自分へ害を成そうとするものへの条件反射でそのままそれに蹴りを入れると、また地に転がり痛そうに呻いた。
「…なんだかごめんなさい。怪我をしていたみたいね。」
「ウゥゥ…」
「ヘルト卿、この人に手当てを。」
「我らはこれから戦に向かうのですよ!!」
「そうだが?」
ヘルト卿は、騎士団の第12師団の師団長だ。騎士団は全部で15師団あり、10師団からは国境警備にあたる人たちだ。彼は、南部からは一番遠い澪極地の警備だ。しかし、北部の辺境伯は軍事力がとても強いためこちらに配属されたのである。
なので、私はほぼ初対面だ。今のところ彼の印象はお堅い良い人…という感じだ。
「こんなのにかまっている暇はありません!」
「我々は南部の民を救済に行くのです。その過程で何を救ってもいいでしょう?」
「なっ…」
私は彼の顔をじっと見つめた。彼は困惑した後、根負けし私が投げた巾着から包帯を取り出した。それを見届けて私は立ち上がった。
「みな、立ち止まらせて申し訳ない!倒れている人がいる!!時間は取らせない!!どうか少し待ってくれるか?」
野太い雄叫びが轟いた。私はいつのまにか口角が不敵に吊り上がる。
「ありがとう、私は倒れている人を見捨てる人間にならなくて済んだ。
これから向かう戦場も命を取り合うものでは無い!命を守り、救うものだ!!
臆せず、ハウトのために忠誠を!!」
―オオオオオオオオオオオオッ!!!!
私はにっこり笑うと誇り高き彼らに回復魔法を付与した。
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「ああ、ご苦労だったな。バーデ魔導士」
「いえ、殿下のためなら…」
「そうか…皆のもの、バーデ魔導士と二人にさせてくれるか?」
この国の王太子、ハーマン・ヒュー・フライアーはオレンジの長髪を後ろで一つに束ね、椅子に浅く腰かけている。初陣である彼は14歳、少し早すぎる気もするが彼の下には優秀な義弟達がいる。早いところ足場を固めたいのだろう。ここで功績を立てれば王太子としての地位が確実になる。不安だろうに堂々と振る舞うその様子を見て私は感心すると共に安堵した。
この方なら大丈夫だ。きっと良い王になる…
「平気ですか?ハーマン様??」
「生意気を言うな、お前も初陣のくせに。」
「…あっ、そっか??戦争など私が3つの時以来ですからね…」
彼は黄色い瞳をあちこちに動かし、書類に目を通す。そこにサインを書くと立ち上がり私の方へ歩いてくる。
「道中、何もなかったか…?」
「ありました。」
「何ッ?!ああ…だからやめ解けばよかったのだ…お前なら簡単に危ないことにはならないだろうと思ったが…悪かったよ、バーデ魔導士…」
「何をうろたえているのですか。大体、貴方が呼ばなくても私はいずれ出陣要請が出ていましたよ。道中では、人狼を拾っただけです。ネコちゃんに似ていて可愛かったのでペットにしました。」
「…は?」
殿下の間抜けな声が二人きりの会議室に木霊した。




