表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/98

ACT.6

「なっ!?」


 ガキィイイイン!


 守護者(スプリガン)達は腕を剣に変形させてファンタズマに斬りかかる。


《今だ! 早く逃げろ!!》


 白い兜の声で身体の自由を取り戻したクロニカは兜を抱えたまま急いで部屋を出る。


〈ヴォオオオオオオッ!〉


 バギャァンッ!


 ファンタズマは先端が鋭利な剣状に変化した尻尾で守護者(スプリガン)を蹴散らす。ファンタズマの一撃で守護者(スプリガン)は上半身が千切れ飛び、青い破片をばら撒きながら壁に叩きつけられる。


「うおおおおおっ!!」

〈ヴァァァァァアアアッ!!〉


 ガキィンッ!


 逃げるクロニカをファンタズマは追おうとするが、守護者(スプリガン)に邪魔をされる。


〈ヴォオオオオオオンッ!!〉

「ははっ……! 凄え、守護者(スプリガン)が俺を守ってくれてる!!」


《データによるとあれはこの施設の防衛用に開発されたオートマータで、名称は……》


「そんなのはどうでもいい! 今は逃げるんだよぉー!!」


 バギャンッ!


 ベキベキベキィッ!


 ガシャァァァァンッ!


 守護者(スプリガン)は大勢でファンタズマに攻撃を仕掛けるが、その体に傷一つ付ける事が出来ない。逆にファンタズマの尻尾一振りで数体の守護者(スプリガン)が破壊されていく。


「くそっ、やっぱり駄目か! あれじゃ時間稼ぎが関の山だ!!」


《な、なんてパワーだ……もう半数以上のオートマータが破壊されたぞ!》


「相手は神話の化け物だからな! 奴の攻撃をまともに食らったら、いくら守護者(スプリガン)でも耐えられねえ!!」


《の、残り40%! このままだとあと2分もしない内に全滅だ!!》


「わかってるよ! これでも急いで逃げてるんだ!!」

〈ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオン!!〉

「ひいいいっ!」


 クロニカは出口を目指して全力疾走する。背後からはファンタズマの咆哮と、守護者(スプリガン)が破壊されていく音が暫く聞こえていたが……


《……!》


「ど、どうした!?」


《まずい……全滅した!!》


「くっそ!!」


 圧倒的なファンタズマの力に遺跡の守護者(スプリガン)は呆気なく全滅する。時間を稼ぐ事は出来たが、敵の強大さを改めて思い知らされてクロニカは青ざめる。


《ええと、足止めに使えそうなものは……! 電磁パルス砲、レーザーカッター発生装置、指向性インパクト砲……》


「何でもいいからジャンジャン使え! 出し惜しみするなぁぁー!!」


《あ、対生物用即死性猛毒ガス【KAMIKAZE】! これなら、あの化け物も》


「それはやめろぉー! オレも死ぬぅうー!!」


《はっ、そ、そうだな! すまない!!》


 白い兜が目を光らせると、遺跡の防御機能が次々と作動する。本来なら侵入者であるクロニカも標的になる筈だが、兜を抱えている為か狙われる事は無かった。


〈ヴァアアアアアアアアアアアアアッ!!〉



 ドガァン!


 チュイーン、チュイイイーン!


 デッデーン!


 カァオ、カァオ、カァオ!!



 逃げるクロニカの背後から防御機能による容赦ない攻撃音が聞こえてくる。


「な、何か凄い音が聞こえるんだけど!? 後ろはどうなってる!?」


《凄いことになってるよ!!》


 ドドドドドド!


「奴は倒せたか!?」

〈ヴァオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!〉


《駄目だ、怒らせただけみたいだ!!》


「チクショォォー!!」


 しかし、神世の技術が使われた防御機能の一斉攻撃を受けてもファンタズマは倒れない。


(……駄目だ! 逃げ切れねぇ……!!)


 このままでは追いつかれる……そう悟ったクロニカはふと頭上を見上げた。


(……随分と太いパイプだな……オレ一人くらいなら姿を隠せそうだ。それにこれくらいの高さなら十分登れる……)


(……はっ、駄目で元々ッ!!)


 上部を伝うパイプを見て何かを閃いたのか、彼の顔に引き攣った笑みが浮かぶ。


「……おい、喋る聖異物(アーティファクト)!」


《そのアーティファクトって何だ! 僕にはちゃんとした名前が……ええと、名前……あれ?》


 クロニカは突然足を止める。


《お、おい! 立ち止まるな! 追いつかれるぞ!?》


「お前、この遺跡の機能と構造は全て知ってるんだよな?」


《え、あ、ああ……でも》


「じゃあ……それを全部教えろ。今すぐにだ」


《だが、攻撃に使えそうなものは全て使った! あとはもう毒ガスくらいしか……》


「いいから教えろ!!」


《……わかった! まずはこの……》


 クロニカはすうっと大きく息を吸い、両頬を思い切り叩いて気合を入れた。



〈ヴルルルルル……!〉


 ファンタズマは青白い息を吐きながらクロニカを追って遺跡内を駆ける。


 流石のファンタズマも守護者(スプリガン)と防衛機能の攻撃を立て続けに受けて無傷とはいかず、少なからずダメージを負っていた。しかしその傷も動きに支障を来たす程ではない……


〈ヴルッ!〉

「……あっ!!」


 6つもある青い瞳は、ついに獲物(クロニカ)の姿を捉えた。


〈ヴァアアアアアアアアアアアアアッ!!〉


 クロニカを発見した途端、目にも留まらぬ速さでファンタズマは飛びかかる。その鋭い爪は一瞬でクロニカの顔面に届き……



 ─────バチィンッ!



 だが、届いたはずの爪はそのままクロニカを突き抜け、ファンタズマの身体に強烈な電流が走る。


〈ヴァアアアッ!〉

「……おぉおおおおおおおっ!!」


 身体が麻痺したファンタズマの頭上から、ブレイクルを構えたクロニカが叫びながら飛びかかった。

Thank you for reading...

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ