0003最強魔王聖剣を使えるのは1分半の無理ゲー
「おお! これが聖剣の刀身! 伝承の通り美しい!」
と女と神官はおお! と感嘆の声を上げた。
それよりこれ何!?
白く神々しく刀身が輝いて綺麗だけど!?
持っているだけで体超痛いんだけど!?
これ歴代魔王が返り討ちにしてきた勇者たちの使っていた聖剣の数百倍の力あるんですけど!?
なにこれ宝物庫の聖剣で勇者対策の実験で自らを切ったときのダメージくらべものになってねえ!?
まだ触ってるだけよ!?
こんなので切られたら俺一発で死んじゃうじゃん!?
「これであなたは勇者であると確定ですね?」
「えっ!? あっ!? うん……」
あまりの聖剣の力で驚いていた俺だが女の声で我に返る。
そのまま聖剣を鞘に入れた。
あぶねえ……10万以上あったHPが柄を握ってただけで1分もかからず半分近く減ってる……これだけのもん持ち出して倒そうとするこの世界の魔王は一体どんな超生物なんた……てかなんで本物魔王の俺が聖剣抜けてるの!? 俺勇者? なのに聖剣に倒される側のカテゴリだよね!? 触れてるだけでやばかったし!?
「これで魔王へ対抗できます! 魔王はこの聖剣でしか傷つけることができません! 今夜は宴にしましょう! 皆のもの宴の準備を! 城を上げて勇者様の門出を祝うのです!」
それから慌ただしく宴が準備がされる中、俺は足を抱えて部屋の隅に座っていた。
どうするかこれじゃまともに魔王なんて倒せんぞ……しかも魔王が聖剣でしか傷つけることができないのに……このままHPが満タンで聖剣をぎりぎりまで持っておよそ1分半……ほんとうに魔王が聖剣でしか傷つけることができないなら完全に積んでるじゃん……こんなわけのわからないレベルのもん持ち出す化け物退治に1分半……無理無理! でも魔王倒さんと帰れんのだろ……どうしろっていうんだ……。
それから開かれた宴の料理は立つ気力もなく足を抱えて食べたせいかやけに薄味に感じた。
宴が始まって少し経ったところ大きな音が響いた。
「何事です!?」
「ライラ王女城の外にワイバーンの群れが!?」
『我は魔王軍6人衆の一人飛竜帝滅炎のルーブ! この城に勇者が召喚されたであろう! おとなしく勇者の身柄を引き渡すのならば我々はそれて引き下がろう! さもなくば町ごと焼くだけだ!』
と声が響き渡る。
「ワイバーンあの家畜竜の?」
ワイバーンという聞きなれた言葉に俺は立ち上がる。
「家畜? 何を言って……ワイバーンは脅威度を上からSSランクからEランクを最低とする魔物のランクでBランク! Bランクの魔物を倒すには同じランクの冒険者数人が必要です! しかも6人衆の一人飛竜帝滅炎のルーブは千を超えるワイバーンを率いております! 勇者様は最後の希望! 我々が時間を稼ぎ――って勇者様!?」
「じゃあ行ってくる!」
俺は兜をかぶり近くのエントランスから飛空の魔法で6人衆の一人飛竜帝滅炎のルーブの方へ向かう。
「歴代の勇者様たちにさえ使えなかった伝説の飛空魔法をいとも簡単に……召喚してまもない勇者様がなぜ……私は一体どんな規格外の勇者様を呼んでしまったのでしょうか……」