第94話 幕開け?
あとがきを書いているので、ぜひ読んでください!
ヘルヴィとテオは、高級な飲食店を予約していた。
これは王都に来るときに助けた、イネッサが用意した飲食店である。
王都の中でも一際目立つ高い建物。
その最上階に位置する飲食店に、イネッサは二人の席を用意していた。
「す、すごいですね、ここ……!」
「ああ、そうだな。本来なら夜に来た方が綺麗な夜景が見えるのかもしれんが、昼でもなかなかの景色だ」
一番良い席を取ってくれたようで、二人の席から王都が一望出来る。
二人は対面に座って、運ばれてくる食事を食べていく。
「んんっ……! 美味しいですね!」
「んっ……そうだな。このソースが良い味を出している」
昨日の夜にイデアの豪邸で食べたような料理で、とても美味しいものだ。
見た目も華やかで美しい。
イデアの屋敷にいた料理人も凄腕だったが、ここの料理人も同じかそれ以上の腕を持っているようだ。
だが落ち着いて食事が出来るのは、イデアの屋敷だった。
二人の周り、特にヘルヴィには飲食店にいる人達の視線が刺さっていた。
街中ほど人の数はいないが、すれ違う瞬間に見られるではなく、ここではずっとチラチラ見られている。
テオはあまり気づかないが、ヘルヴィはもちろん気づくので鬱陶しい。
男女の二人一組で来ている客がほとんどなのだが、それでも男の視線を独り占めしてしまうヘルヴィ。
(変装などは性に合わないが、少し考えた方がいいかもな)
ここまで王都で注目されるとは思わなかったので、ヘルヴィは明日から何か対策をするか迷う。
周りの客は常連が多く、ほとんどが貴族の夫婦などだ。
中には平民が記念日などに奮発して、この飲食店に来ているという客もいる。
だから常連客は、あの美女がそのような平民だとなんとなく気づいているが、それでも疑っていた。
本当にただの平民なのか、と。
あれほどの美女、平民だとしても噂にならないはずがない。
百人がすれ違えば、百人が振り返るような美女。
王都に住んでいるのだとしたら、絶対に噂になっていたはず。
だからおそらく王都ではない街から来たのだと予測を立てていた。
何人かの貴族が、あの美女に話しかけるか迷っていた。
しかし男を連れていて、とても話しかけずらい雰囲気だ。
「まず、あの美女と一緒にいる男は誰だ? 貴族ではないよな?」
「見たことがない。貴族だとしてもまだ子供だろう。あの美女に全然釣り合っ――っ!?」
「お、おい、どうした?」
席が近い貴族の男同士がそんな話をしていたが、突如一人の男が言葉の途中で股間を押さえて声にならない悲鳴を上げた。
「……ふん」
「どうしました、ヘルヴィさん?」
「いや、なんでもない。テオ、これも美味しいぞ」
冷たい視線でその男を一瞬だけ見たヘルヴィだったが、誰もそれは気づかなかった。
テオとヘルヴィは料理を食べ終え、食休みの飲み物をゆっくりと飲んでいた。
周りの貴族達はもう誰も話しかけずに、ものすごい美女がいたという噂をこの後流すことになる……と思っていた。
突如飲食店の外が少しだけ騒がしくなり、勢いよく扉が開かれた。
ほとんど全員が扉の方を見て、入ってきた男に顔を顰める。
「ダリオ・レンドイロだ……」
「レンドイロ家の馬鹿息子、いや今は馬鹿当主か。そんな奴がなぜここに……」
入ってきた男は王都でも有数の大貴族の、ダリオ・レンドイロ。
前まではダリオの父親が当主だったが、不幸な事故で亡くなったので代わってダリオが当主となった。
顔は両親の血筋なのか整っているが、体型が酷い。
ある意味貴族らしいといえばそうだが、それでも太り過ぎている。
そのダリオは特にここの常連ではなく、周りの貴族達もなぜここに来たのか不思議に思っていた。
「ダリオ様、当店は完全予約制なので、申し訳ありませんがまたのご機会に……」
「うるさい。別に食事をしに来たわけじゃない、黙ってろ」
不遜な態度で下手に出る店員にそう言い放ち、横にデカイ身体を揺らしながらある席に向かっていく。
そこはここにいる客のほとんどが何度もチラ見した美女がいる席。
「うわっ、マジか……!」
「あのダリオが話しかけにいくのかよ。あの美女も災難だな」
口々に周りの客がそう呟く。
歩いているダリオは聞こえたのか、呟いている客の方をキッと睨む。
それでほとんどの客が一瞬で喋らなくなる。
馬鹿で有名なダリオだが、貴族としての力は大きい。
それもほぼ全てが歴代の当主やダリオの親が築き上げてきたものだが、まだその力は健在。
変に目をつけられてしまったら最悪である。
とても静かになった店内を歩き、一番良い席にいるヘルヴィとテオに近づいたダリオ。
テオは変な人が近づいてきて驚いたが、ヘルヴィは無視するようにずっとテオの方を向いている。
ヘルヴィが座っているすぐ横に立ち、じっとヘルヴィの顔を見つめる。
その横顔の美しさに何を思ったのか、ニヤニヤし始めた。
そして……。
「おいお前、俺の妻にしてやる」
――その言葉が、悲劇の幕開けとなった。
他作となりますが、
「不死鳥への転生2 ドラゴン倒せるって普通の鳥じゃないよね?」
が、4/3に発売しました!!
コミカライズも4/27発売の電撃マオウにて始まります!
ぜひそちらもお読みください!
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