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第90話 腹黒い?



「なぜヘルヴィ様は、私に悪魔だということを教えてくださったのですか?」


 イデアは落ち着くために紅茶を一飲みして、一番気になったことを聞く。


 特にまだ信頼関係も出来ていない自分に、なぜヘルヴィがそんなことを話したのか。

 おそらく、何か目的があって言ったのだろう。


「王都でお前には世話になるからな。一応言っておこうと思っただけだ」

「……えっ、それだけですか?」

「あと私達が王都を出歩く際は、護衛などはいらないとだけ言っておこう」

「……わかりました」


 やはり多少の目的はあったようだ。

 イデアが二人の護衛を準備していたのは、心を読まれていたからかバレていた。


 確かに悪魔で最強のヘルヴィがいるのであれば、護衛は必要ないだろう。


「お前だったら悪魔だとバラしても、問題ないと思っただけだ。言っておいた方が気軽に接することも出来るからな」

「そうですか。信用していただいているようで何よりです」

「……ふむ、そうかもな」


 ヘルヴィは今日会った人間に、すぐに悪魔だとバラしたことなど一度もない。

 いや、むしろ人間としっかり話すことなど、テオに出会う前は契約者以外はほとんどなかった。


 それなのに話したのは……。


(私もテオの影響を受けているのだろうな、無意識に)


 あれほど素直で綺麗な性格をしているテオと一緒にいて、ヘルヴィも少しだけ人を信じやすくなっているのかもしれない。


 悪魔としては嫌な傾向になっているのかもしれないが、ヘルヴィ個人としては問題ない。

 むしろテオに影響されて性格が変わっていると思って、少し嬉しいくらいだ。



「それとお前に、もう一つやって欲しいことはあったな」

「なんでしょうか?」

「……イネッサの対応だ」

「対応? 彼女の何に対応すればよろしいのでしょうか?」


 隣の豪邸にいる貴族のイネッサ。

 ヘルヴィ達が王都へ来るときに、イネッサが襲われているところを助けた。


 イネッサが助けられたにもかかわらず、何か失礼なことをしたのかとイデアは思ったが……。


「……あっ! もしかしてヘルヴィ様、あの子の気持ちをもう覗いて……?」

「……不可抗力でな」


 イデアは先程窓越しにイネッサと話したが、そのときにヘルヴィへの気持ちを知った。

 まさか男性のテオではなく、女性のヘルヴィに対して恋心を持っているとは思わなかった。


 しかし危険なところをヘルヴィに助けてもらって、女性でも見惚れるほどの美貌を持った相手だったら仕方ないかもしれない。


(だけどヘルヴィ様が心を読める悪魔っていうのは……色々と誤算だったでしょう、お互いに)


 イネッサがヘルヴィといる時に何を思っていたのかはわからないが、情熱的で盲目的にヘルヴィに恋心を抱いているのだ。

 想像しか出来ないが、おそらく簡単に恋心がバレるぐらい色々と思っていたのだろう。


「イネッサちゃんの擁護をする訳ではありませんが……彼女が心の中で思った失礼なことは、見逃してあげてくれませんか? イネッサちゃんも悪い子じゃないんです」

「ふふっ、しっかり擁護しているようだぞ? 安心しろ、イネッサは特別不快なことは思っていなかった。私に対してもテオに対しても」

「それは良かったです。彼女の性格からして、ちょっと腹黒いことを考えると思ったのですが」

「ああ、それは考えていたな。それを踏まえても大丈夫だ」

「ふふっ、ヘルヴィ様の寛大なご対応感謝します」


 悪魔だと聞いて少し恐怖していたが、もうそれはほとんどなくなった。

 普通に話が通じるし、伝承によくある悪魔らしい言動などは特に見られない。


(人間の心がないと言われる悪魔だったら、あんな純情なテオ様と結婚しませんよね。たとえ契約でも、ヘルヴィ様ほどの悪魔でしたらそれを切る方法など山程あるでしょうし)


 イデアは少ししか話していないが、テオほど純粋な人間を知らない。

 ジーナやセリアが弟のように可愛がるのもわかる。


(あの二人は弟扱いだけで終わるつもりはなかったようだけど、そこにヘルヴィ様が現れてしまったらしいから……ふふっ、そこは二人がヘルヴィ様が現れる前に決着をつけなかったからね)


 彼氏いない歴が年齢と同じな二人には、自分達から積極的に迫るというのは無理があったのかもしれない。


「……お前も腹黒いところはあるみたいだな」

「ふふっ、そうですか? あっ、私の心を覗いてましたか?」

「わかっていながら考えていただろう」

「ええ、そうですね。ヘルヴィ様の心を覗く能力は、対峙したら自動で見えるのですか?」

「いや、私が覗こうとしなかったら見えない」

「では私のはあまり覗かないでくださいね。うっかりヘルヴィ様を不快にすることを考えてしまうかもしれません」

「ふっ、そんなことを直接私に言う者は初めてだ」


 二人は穏やかに笑いながら、紅茶を飲んだ。


「ではそろそろ、私がご用意した最高級のお部屋にご案内いたしますね」

「ああ、そうだな。その後イネッサが用意する部屋も見るから、手配しておいてくれ」

「はい、イネッサちゃんにお伝えしておきますね」


 二人は立ち上がり、食堂を出て最高級の部屋へと向かう。


「私が悪魔だというのは、もちろん他言するなよ」

「はい、もちろんです」

「あと私が心を読めるというのを、テオに話すな」

「えっ? テオ様は知らないのですか?」

「ああ、私が言っていない。言ってしまっては、テオが可愛いことを心の中で考えてくれなくなるかもしれないからな」

「……ふふっ、わかりました。ヘルヴィ様も腹黒いことをお考えになってるのですね」

「テオが可愛いのが悪いのだ」



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