第45話 弱点?
あとがきにちょっとしたお知らせがあるので、よろしくお願いします。
その後、ジーナとセリアが自分たちのテントに戻る……ことはなかった。
(戻らないのかお前ら?)
(いやー、そういうことはしてないってわかったけど、ねえ?)
(そうね、わかったけど……)
「んふぅ……はぁん……あっ……!」
いまだにテオの艶やかな声がテントの中から聞こえてくる。
(これはこれで、良い! だからもうちょっとここで聞いてるよ)
(そうね、テオのこんな声初めて聞くもの。もうちょっと……いえ、ずっと聞いていたいわ)
(お前ら……まあいい。邪魔をしなければな)
ヘルヴィは頭の中でそう伝え、二人の心を覗くことをやめる。
これからあの二人はテントの外で、テオには聞こえないぐらいの物音しか出さないだろう。
ヘルヴィの耳にはすでに、二人の興奮した荒い息遣いが聞こえてくるが、許容範囲だ。
自分もさっきからずっとテオの上に乗っかり、この声を間近で聞き続けているから、荒い息遣いにならないように深呼吸を何度もしている。
テオはマッサージで身をよじるために、ヘルヴィが跨っている部分がそのせいで何度も擦れる。
……一番いけない気分になっているのは他の誰でもない、ヘルヴィだった。
それからまた十数分。
一番それらしい声を出しているテオ以外が、全員興奮する時間が続いた。
「はぁ……とても気持ちよかったです、身体が楽になりました! ありがとうございます!」
「……ふぅ、それはよかった」
テオの上から退いて、ヘルヴィは落ち着くために息をついた。
前のときよりも長くマッサージをしていたので、我慢をする時間も長かった。
しかしギリギリ耐えた。
テオの上で少しバレないように腰を振ったのは、許容範囲だと思いたい。
少なくとも、テントの外のやつらよりは。
(はぁ……よかったぁ……!)
(くっ、もう少しだったのに……!)
心の中を覗くと、ジーナは満足そうに、セリアは不満そうにしていた。
テントの外で聞こえてくる生々しい音でなんとなく、ナニをしていたかはわかるが……触れないことにしよう。
ヘルヴィも本当ならば今すぐに発散したいのだが、テオの前なので出来るはずもない。
幸いにもヘルヴィは服なら一瞬で変えられるから、下着が濡れたままということはない。
「僕ばっかやってもらって申し訳ないですし、僕もマッサージしますよ!」
「んっ? そうか? では頼む」
悪魔であるヘルヴィは疲れという概念がほぼないので、マッサージを欲することはない。
しかし合法的にテオに触ってもらえ、方向性は違うが気持ち良くしてもらえるのだ。
これを逃すわけがない。
(あー、テオ君のマッサージ気持ちいいんだよなぁ)
(そうね、私たちも昔はやってもらったわ)
(ほう、そうなのか)
(うわっ! い、いきなり入ってこないでよヘルヴィさん、ビックリしたぁ)
(私はずっと聞かれてると思ってたわ)
なぜお前らがナニかをしているときに、心を覗いていると思ったのだ。
と言ってやりたかったが、面倒くさいので黙っておく。
しかしこの二人が前にやってもらったというのであれば、絶対にやってもらうに決まっている。
今度はヘルヴィがうつ伏せに寝て、テオがその上に乗る。
「重くないですか?」
「ああ、大丈夫だ」
ヘルヴィみたいに体重を軽くする魔法をしてるわけではないが、テオは驚くほど軽かった。
「どこか凝ってるところとかありますか?」
「そうだな……特にはないが、背中や肩を頼む」
「はい、わかりました」
そしてテオの両手が、ヘルヴィの腰寄りの背中に触れた瞬間――。
「ひゃうんっ!?」
「えっ?」
「えっ……?」
「えっ……?」
誰かの口から、今までにない高い声が漏れた。
それを発していないテオ、そしてテントの外のジーナとセリアは、同時に疑問の声を上げる。
外の二人の声は小さく、そしてテオと同時に上げたので気づかれはしなかった。
いや、たとえもう少し大きくてタイミングがずれていても、テオは気づかなかっただろう。
それぐらい、今の声は衝撃的だった。
その声を出したであろう人物は……耳を真っ赤にして、顔を伏せている。
もともとうつ伏せだったので顔は最初から見えないが、それでも見られないようにしていた。
「……どうしたテオ? やらないのか?」
「えっ、いや、その……大丈夫ですか?」
「何がだ?」
「あっ、えっ……? だって今の声……」
「何か聞こえたか?」
「……いえ、なんでもないです」
そしてまたテオの両手が、ヘルヴィの背中に触れ、優しく揉んでいく。
「……っ! ひうっ……!」
悪魔であるヘルヴィは、もう何千年、何万年も生きている。
最強を誇る彼女は自分でも、弱点などないと――思っていた。
しかし今、発覚した弱点。
「ふっ……あんっ……!」
ただ背中を揉んでいるだけなのに、声が漏れてしまう。
――ヘルヴィは、くすぐりに弱かった。
明日、9/19から自分の他作品、
「死に戻り、全てを救うために最強へと至る」
がマンガワンにて、コミカライズが開始します!(本作のことじゃなくてすいません)
とても綺麗でカッコよく仕上がっているので、ぜひお読みください!
活動報告の方に絵があるので、よかったらご覧ください!
よろしくお願いします!




