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第33話 依頼の内容


 三人はテオと合流し、フィオレから依頼の説明を受ける。


 この街から遠くにうっすらと見える山、通称「双子山」。

 ほとんど同じ標高に山頂が二つあることからその名がついた。


 それぞれの山頂付近に咲く二種類の珍しい薬草を取ってきてほしい、という依頼である。


「おっ、これはテオ君が必須の依頼だね」

「そうね、私たちじゃ見分けもつかないし、上手く採取できないでしょうね」


 ジーナとセリアはテオの能力をしっかりと把握している。

 薬草の採取だったら、傭兵ギルドでテオの右に出る者はいないだろう。


「あ、ありがとうございます……」


 照れ笑いをしながら礼を言うテオ。

 それを見て二人はテオの頭を軽く撫でた。


「あっ、撫でてもいい?」

「聞く前に撫でていただろう」

「あはは、ごめんごめん、忘れてた」

「私も忘れてたわ」


 テオに触れるときはヘルヴィの許可が必要、ということをすっかり忘れていた二人。


 しかしヘルヴィも止めようと思えば前のように止められたので、撫でるぐらいなら許しているのだろう。


(私も撫でたいなぁ……)

(お前も別にいいぞ、撫でても)

(うぇっ!?)


 フィオレは頭の中で考えていたら、いきなりヘルヴィの声が入ってきて驚いた。


(い、いきなり心を読まないでください!)

(さっきからずっと読んでいたぞ)

(もっとダメです!)


 変なことを考えていなかったか、思い出すフィオレ。

 おそらく大丈夫だろう。


(今日の朝もキスしてきたぞ、もちろん濃厚なやつだ)

(……ダメだった)


 一瞬気になって考えてしまったことの答えを言われて、軽く落ち込んだ。



 フィオレは依頼の続きを話す。


 その双子山には二点、注意点がある。


 まず一つ、街から見て右手にある山。

 そこには山賊が住まう。

 老若男女関係なく襲うようで、今までその山賊に受けた被害はとても甚大だ。


 この依頼がずっと達成されない原因である。


「そんな奴らいるんだ」

「知らなかったわ」


 半年前ほどに出た依頼なので、一年前に王都に行った二人は双子山の盗賊は知らなかった。


「まあそのくらい問題ないだろう。私がいるからな」

「うん、私たちもいるしね。多分ヘルヴィさん一人で足りるけど」

「そうね、私たちは必要ないと思うわ」


 王都の貴族に実力を認められた傭兵二人に、その二人を圧倒したヘルヴィ。

 山賊なんかに遅れを取るわけがない。


「はい、私も盗賊ぐらいならご心配はしないのですが……」


 フィオレが心配するのは、左の山頂。

 そこには――悪魔が住まう、と噂がある。


「悪魔……?」


 テオはそう呟き、チラッとヘルヴィを見た。


 それに気づかないジーナとセリアは、フィオレの言葉を聞いて苦笑した。


「悪魔って……なんか怖いような、胡散臭いようなだね」

「そうね、悪魔なんて本当にいるかどうか。おそらく悪魔みたいに強いとか、怖いみたいな感じで言われてるのでしょうね」


 ――悪魔。

 それはキマイラのように、伝説の生き物として語り継がれている。


 大昔、今あるほとんどの国がまだ無かったほどの大昔。

 悪魔が世界にいる魔物をほとんど全て滅ぼしたという伝説がある。


 しかしそれはあまり信じられていない。

 なぜなら魔物は今でもそこら中に溢れかえっているからだ。


 だから悪魔という生物は、キマイラなどの伝説の生き物よりも、夢物語に出てくる生物に近いのだ。



 ――しかし、悪魔は実在する。

 ジーナとセリアの、すぐ隣に。


 いまだに誰にも言ってないが、ヘルヴィは悪魔だ。

 昨日もジーナとセリアが帰ったあとは、二人きりになったので翼とツノを出してもらった。


 その後にした行為も思い出して少し顔が熱くなるテオだが、今はそのことを考えている場合じゃない。


(悪魔って怖くて強いときに比喩表現でも使うけど、本物だったら……)


 悪魔が何人いるのかは知らないが、もし左の山頂に住んでいるのが本物の悪魔だったら。

 その悪魔は自分が召喚し奥さんにした、ヘルヴィ並みに強いのかもしれない。



(――と、テオは考えているのか。ふむ、どうだか……)


 テオの心の中を読みながら、ヘルヴィも考えていた。


 大昔から生きているヘルヴィだが、自分以外に悪魔がいるなんて聞いたことがない。

 悪魔と言われている魔物や人間などを見たことはあるが、自分には到底及ばない弱い者ばかりだ。


 今回もその類だろう。


(まあたとえ本物でも、私が最強だ。そしてテオには、傷一つつけさせない)


 心配そうに見上げてくるテオに、大丈夫だと言うように軽く笑って頭を撫でる。


 その微笑みはとても柔らかく、テオが見惚れるのも仕方ないだろう。


 顔を真っ赤に染めたテオを見ながら、ヘルヴィはあることを思い出してフィオレに頭の中へ話しかける。


(フィオレ、約束してほしいことがある)

(は、はい、なんでしょう?)

(テオには絶対に、私が心を読めることを言うな)

(えっ? 何でですか?)

(言ってしまったら純粋で可愛いことを心の中で正直に言ってくれないだろう。私はそれを見るのが楽しみなのだ)

(は、はぁ……わかりました)


 わかるような、わからないようなことを約束させられたフィオレだった。





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