第13話 夕食の前に
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「んっ、んん……」
テオは自分の身体が揺れている、否、揺らされていると感じて、気持ちいい眠りから意識が浮かび上がる。
「起きろ、テオ」
「んぅ、ヘルヴィさん……?」
寝起きでボヤけた視界に、純白の髪のようなものが見えたので、それを持つ人の名を呼んだ。
「ああ、もう夜だぞ」
「んっ……えっ……ええぇぇ!?」
ヘルヴィの言葉が最初は頭の中に入ってこなかったが、ようやく理解できると大声をあげて起き上がった。
「えっ、な、なんで? さっきまでお昼だったんじゃ……」
昼ご飯を作って食べて、それから……ヘルヴィからマッサージを受けたはずだ。
それが気持ちよくて、自分は眠ってしまったということはわかる。
「テオは夜までずっと眠っていたということだ」
それを聞いて唖然としてしまう。
まさか午後の時間をずっと睡眠に使ってしまうなんて。
いつもなら傭兵ギルドで請け負った依頼をやっている時間だ。
今日はその依頼がヘルヴィとやったことによって、午前中に終わった。
だから午後は暇だったとしても、ずっと眠ってしまうとは思ってもいなかった。
「すいません、ヘルヴィさんがいるのに一人で眠っちゃって」
「大丈夫だ。それにさっきまでフィオレもこの家に来ていた」
「えっ、フィオレさんが?」
受付嬢の彼女が時々家に来ることはあるが、それはいつも仕事が終わっての夜などが多かった。
「ああ、どうやら依頼を達成したはずなのにギルドに来ない私たちを心配して、家まで来たようだ」
「あっ、そうだったんですか。悪いことしちゃいましたね……」
「そうだな。あとでまた来るそうだから、その時に謝ってやれ」
「はい、そうします。というか、また来るんですか?」
「夕飯時には来るそうだ。だから三人分頼むぞ、テオ」
「わかりました!」
テオはソファから起き上がり、キッチンへと向かう。
「私も手伝えることはあるか?」
「あっ、じゃあ野菜とかを手でちぎって欲しいです」
「お安い御用だ」
二人はキッチンに立ち、それぞれ作業をしていく。
「フィオレさんとは何か話したんですか?」
「うむ、まあ……いろいろとな」
「へー、どんな話を?」
「私たちの共通の会話など、テオ以外にないぞ」
「えっ、僕ですか?」
ヘルヴィとフィオレは今日会ったばっかりだ。
必然と会話はテオのことになってくる。
しかしそれを言うなら、テオとヘルヴィも今日会ってすぐに結婚したのだが。
テオが悪魔召喚をして、一目惚れして結婚を願った。
そしてすぐに二人は夫婦となったのだ。
「フィオレや他の受付嬢が、テオのことをどう思っているかなどを聞いたんだ」
「えっ、なんか怖い……僕、嫌われてないですよね?」
「そんなわけないだろ。受付嬢全員が、君に好印象を持っているよ」
「そうですか、良かったです」
そう言って安心したように笑うテオを、ヘルヴィは横目で見る。
テオは安心したようだが、ヘルヴィはそれを聞いて不安に思った。
なぜなら好印象を通り越して、好意を抱いているものが多いからだ。
フィオレに聞いた話では、全員がテオとそういう関係になっても良いと思っているようだった。
何人かは積極的にアピールをしていたようだが、テオは気づいてないようだ。
フィオレ自身も積極的にではないが、アピールはしていたようだ。
「男の人の家に行ったことなんて、テオ君の家以外にないですよ」
そう少し恥ずかしそうに話していたのを、ヘルヴィは思い出す。
つまりはそういうことだろう。
(誰にもやらんぞ、テオは……私だけのものだ)
「どうしたんですか?」
「いや、なんでもない」
ヘルヴィの目が肉食獣のそれに一瞬変わったが、すぐに抑える。
その後、二人は料理を続けていき、完成する前に家のドアが叩かれる。
「テオ君、ヘルヴィさん、フィオレです」
「どうぞ!」
テオが料理をしながら声をかけると、ドアが開かれてフィオレが入ってくる。
「テオ君、起きたんだね」
「はい。ごめんなさいフィオレさん、依頼達成を報告しに行かなくて」
「ああ、大丈夫大丈夫。キマイラを倒したっていう噂は街中に広がってるから、無事ってことはわかってたよ」
「ふむ、私があの程度の雑魚に負けるわけがないからな」
「あはは、キマイラを雑魚って……ヘルヴィさんは本当にすごいですね」
フィオレの乾いた笑いが響く。
彼女はキマイラの戦い、いや、戦いにすらなっていなかった狩りを。
そしてその死体を見ていない。
だから圧倒的なヘルヴィの強さを知らないのだ。
見ていたテオですら、どれだけ強いのかいまだにわからない。
その強さの一端を味わったのは、今の世ではキマイラだけだ。
「じゃあ夕飯食べましょうか。ちょうど出来たんですよ」
「そっか、ありがとうね」
「じゃあ準備しておいてくれるか? 私はお手洗いにでも行ってこよう」
「わかりました」
二人が料理を盛り、お皿を運んで準備をしていく最中、ヘルヴィはリビングから出る。
トイレの場所はわかっている。
しかし、そこには行かない。
「さて、朝は見逃してやったが、今回はそうはいかない――ゴミ掃除といこうか」
ヘルヴィの圧倒的な強さを知っているのは、今はまだキマイラのみ。
しかしこれから数分以内に――その強さを思い知らされる者が、何人か増えることになる。
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