第128話 ようやく海へ
テオとヘルヴィが浜辺で他の人から見えなくなってから、結構な時間が経った。
ようやく二人は姿を現し、またヘルヴィが浜辺の人々の注目を浴び始めた。
先程よりも色気が増した気がするのは、周りの人々の気のせいかもしれない。
また周りにとても注目されていることなど無視して、二人はパラソルの下から飛び出して海へと向かう。
「ヘルヴィさん! ここすごいです! この波打ち際が、立っているだけで、なんか、こそばゆいです!」
テオはとても興奮した様子で、波打際に立って波が砂をさらっていく感覚を味わう。
その感覚は海でしか味わえないので、テオはとても新鮮で子供のようにはしゃいでいる。
ヘルヴィも隣に立ち、一緒になってその感覚を味わう。
「ふふっ、これは面白いな。私も味わったことない感覚だ」
「そうなんですね! これ、座ったらどうなんですかね」
テオはその場に座り、ヘルヴィもそれに並んで座った。
波がくると、今度は足裏だけじゃなく足全体、お尻にまで砂をさらっていく感覚がきて、テオはより一層顔を輝かせた。
「あははっ! すごいですね、これ! 楽しいです!」
「ああ、少しくすぐったいけどな」
「えっ? あ……そ、そうでしたね」
ヘルヴィがくすぐったいのが苦手と聞いて、テオは先程のオイルを塗った時のことを思い出してしまった。
楽しそうにはしゃいでいたが、少し恥ずかしそうにうつむいてしまう。
「テオ、大丈夫か? 顔が赤くなっているが」
「い、いえ、大丈夫です! なんでもありません!」
テオが先程のことを思い出したと気づかず、ヘルヴィはテオの様子がおかしいことを指摘した。
慌ててテオは大丈夫だと伝え、誤魔化すように立ち上がって海の中へと入っていく。
最初は水の冷たさから躊躇したが、それも慣れてむしろ気持ちよくなり、腰あたりまで海の中に入る。
海はとても綺麗で、底まで簡単に見透せられる。
テオはそれに気づいて、目を輝かせながら海の中を見た。
「うわぁ……! すごい……! あっ、魚がいる!」
「どこにだ?」
「ヘルヴィさん! あそこです!」
テオが指差す方向をヘルヴィは、テオに近づきながら一緒に海の中を見る。
ヘルヴィが近づいたことによって、テオの腕にヘルヴィの胸が当たった。
海の中に夢中になっていたテオだが、それだけでドキッとして当たっている腕に神経が集中してしまう。
特に今はヘルヴィは水着なので、普通の服よりも肌と肌が接触している。
「おっ、見つけたぞ。模様が綺麗な魚だな」
「そ、そうですね……ヘルヴィさん、その、当たってます……」
「ん? あっ……」
テオにそう言われて、ヘルヴィはようやく気づいた。
わざと当てたわけじゃないが、テオに近づきたいから当たってしまったという結果だ。
ただ……今さらこれくらいで、顔を赤く染めるほど恥ずかしがるのは、ウブすぎる気もする。
「テオ、もう慣れてもいいのではないか? さっきも……胸が布越しに当たる以上に、すごいことをしただろう?」
耳元でヘルヴィにそう囁かれ、さらに顔が真っ赤になってしまったテオ。
「そ、それとこれとは、話が違うというか……まだ、僕は全然慣れることは、ちょっと出来ないです……」
「ふふっ、そうか。まあそんなところが、テオの可愛いところだな」
そう言われると、なおさら恥ずかしくなってしまう。
恥ずかしさを振り払うように、テオはまた話題を変える。
「その、ヘルヴィさんって泳げるんですか? 泳ぐところが、あまり想像出来ないんですけど」
泳ぐところも想像出来ないが、泳げないところはもっと想像出来ない。
運動に関して、ヘルヴィが出来ないことがあるのだろうか。
「ふむ、わからないな。私も泳ぐのは、生まれて初めてだ」
「えっ? そうなんですか?」
ヘルヴィがすでに一万年もの間生きている悪魔だというのを、テオは知っている。
そんだけ生きていれば、海くらい泳いでいると思うのは不思議ではない。
まさか泳いだことがないなんて、思いもよらなかった。
「海の上を歩いたり、海を割ったりしたことは何度もあるのだがな」
「それは、普通ないと思います……」
海面を見ながら呟くヘルヴィに、テオは苦笑いをしながらそう言った。
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