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第119話 テオを探すが…



 ヘルヴィは手紙に書いてあった、王都ギルド近くの武器屋が並ぶ場所に来ていた。


 テオの手紙によると、ここ辺りで散策していると言っていたのだが。


「いないな……」


 三十分ほど探したが、テオの姿は一向に見つからない。


 ここを散策すると言っていたので、そう遠くまでは行っていないはずだ。


 武器屋や防具屋など、いろんなお店があるので、一店一店中に入ってテオがいないか見たのだが。

 どこにもいない。


「ふむ……どこに行ったのか」


 ヘルヴィがルナを助けるのに、そこまで時間は食っていない。

 いや……あのクズを潰すのに、少しだけ時間はかけた気がするが。


 それでもあって一時間程度だ。


 そのくらいの時間だったら、テオなら一個の店でずっと武器か防具を眺めていてもおかしくない。


(そういうことをする、可愛いテオなのだ……ふふっ)


 テオが一人で武器の前で目を輝かせながら眺めているのを想像して、微笑ましく思って笑みを浮かべてしまう。


 すると……。


「なぁ、そこの姉ちゃん。一人なら俺らと遊ばねえか?」

「……」

「そうだな。一人寂しく街を回るのもつまらないだろう。俺らと遊ぼうぜ」


 まただ。


 わずか三十分しかここら辺を歩き回ってるだけなのに、これで傭兵らしき男達に話しかけられたのは三度目だ。

 いや、この辺りに歩いて来るまでに一度話しかけられたので、四度目か。


(テオと運命の出会いのように、道端でばったりと出会いたいのに……なぜこうも、邪魔者が多く話しかけてくるのか)


 こうも上手くいかなくて、頭を抱えたくなるヘルヴィ。


 ヘルヴィがため息をついて何も言わないからか、二人の男はヘルヴィに近づいて喋りかけてくる。


「俺達が楽しませてやるぜ。この街には詳しいからなぁ……アッチの方も、もちろんな」

「ハハッ! そうだな!」


 そう言いながら一人はヘルヴィの肩に、もう一人は腰に手を回そうとしてきたが……。


 ヘルヴィは触られる前に、その二人の手首を掴んだ。


「なっ……!」


 まさか防がれる、掴まれるとは思っていなかったので、男二人は声を上げる。


「邪魔なことだ……私は、テオを見つけられなくてイライラしているというのに……」

「いっ……!?」

「つぅ……!?」


 男二人は掴まれた手首に鈍い痛みが走り、呻き声をあげる。

 とても美しい女性で、箸以上に重いものなんて持ったことがなさそうな人が、傭兵で鍛えている自分達の腕を握り潰するほどの力を持っているなんて、夢にも思わなかっただろう。


「は、離せ……!」

「くっ、や、やんのかお前……!」

「先に吹っかけてきたのは、どちらだ」


 ヘルヴィはさらに力を込めると、男二人は立っていることすら耐えられず、その場に蹲る。


「がっ……! い、痛……!」

「くっ……ち、力が、入らない……!」

「……ふん」


 男達が蹲って数秒経ってから、ヘルヴィは手を離してやった。


「身の程知らずが。殺されたくなければ、私の視界から去れ」


 最後に殺気を軽く飛ばしながら見下ろして言い放つと、男達は「ひっ!」と情けない声を上げながら逃げるように去っていった。


「はぁ、このままでは埒が明かないな」


 もう少し探してもいいが、無駄に男達に絡まれるのも好かない。

 そろそろテオの魔力を探ってしまおうかと迷ったが……。


「……むっ、武器屋か」


 また店を見て回っていると、一つの武器屋が目についた。

 店頭に置いてあったであろう武器がなく、すでに買い取られていた。


 買い取られた武器は店頭に品名が書いてあったが、どうやら長刀のようだ。


(……そういえば前に、テオの好きな武器が刀というのを聞いたことがあるな)


 刀の値段もまだ飾ってあるので見ると、意外と安くてテオの手持ちでも買えたはず。


(もしかして、ここの長刀を買ったのか? しかしテオだったら、そんな大金を使う買い物なら私を待ちそうだが……)


 しかしテオが刀に憧れていたのも事実。


 他に手掛かりもないので、店員に聞いてみることにした。

 店頭の刀を買ったのは、身長が低い少年ではなかったのか、と。


「いや、違ったね。若い女性二人組だったよ」

「……そうか。すまない、邪魔したな」


 どうやら当てが外れたみたいだ。

 さすがにテオもこんな高い武器を衝動買いしないようだった。


「ああ、だけどその女性二人は自分達では使わないみたいだったけどね」

「どういうことだ?」


 ちょっとした世間話。

 もうテオの魔力を探そうか、と考えている時に話しかけられたので、反射的に話を続けてしまった。


「普通は自分が使う武器なら調整をしていくはずなのに、それもせずに買って出ていってしまったよ。しかもその刀は、すぐそこで出会った少年に渡していたようだ。いわゆるナンパだろうね」

「……少年、だと?」

「ん? ああ、店の前で刀を熱心に見ていた少年をナンパするために買ったんだろうね。まあ私は商品が売れればいいんだけど」

「……その少年の特徴は?」

「変なことを聞くね……黒髪で、華奢な男の子だったよ。ああ、なんか店前で騒いでたから、名前が聞こえたなぁ。確か名前は……テオ、って言ってたね」

「情報感謝する」

「えっ? あ、ああ……なんだか怖い顔をして出ていったけど、なんだったんだろうねぇ」


 

 

 


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― 新着の感想 ―
[一言] きゃー、見つかるまであと少しよ
[良い点] テオくんは浮気じゃないですよヘルヴィさん!
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