〜あなたの眠りにお供します〜第二夜
眠れない夜に贈る物語。あなたにそっとお供します。もちろん、途中で寝てもかまいません。さぁ行ってらっしゃい。
『秘密基地』
電車の揺れが心地よく、うつらうつらと人々はしている。目を閉じると、ひまわり畑が浮かんできた。私の背丈を断然超していて、花は上向きに咲いている。ここで走り回れたら、と思った。
「こっちにおいでよ!」
その声に振り向くと、屋台の方に男の子が二人いる。私はゆっくりと近づいて行った。炎天下のかき氷はピンク色に輝き、そして少し溶けていた。
「かき氷、いいなぁ」
羨ましそうにそう言うと、
「そこで売ってるから買ってきてやるよ」
と言って、本当に買ってきてくれた。
「ありがとう」
少し悪いなと思いつつ、さっと口に運ぶ。
「すごくおいしい!」
「だろ?」
「俺たち休みの日はいつもここに来てるんだ」
二人はここらへんに住んでいるらしい。ひまわり畑の中に秘密基地を作ったことまで話してくれた。
「一緒に行ってみるか?」
「え! いいの?」
「もう話しちまったんだから招待しないわけには行かないだろ」
その荒々しい言葉は、どこか温かく染み込んだ。ひまわりの茎は丈夫で、その中を通っていくのは想像以上に大変だ。なんとか二人の背中を追って進んでいくと、茎がテントのように組まれている場所が見えてきた。
「ここだぞ」
そう言って赤と紺のTシャツが中に吸い込まれていく。頭をぶつけないように気をつけながら私も中に入る。子どもだけで作ったとは思えないほどクオリティが高かった。さすがに三人入ると狭いが、それでも雨を凌げる感じはした。隙間から差す太陽はほどよい光を与え、基地を照らす――。
ガタンゴトンガタンゴトン。ゆっくりと目を開くと一瞬どこにいるかわからなくなっていた。そっか電車に揺られていたんだ。なんだかかき氷が食べたいな。その思いだけがそっと残った。
さて、今夜はここまでにしておきましょうか。徐々に暑さが厳しくなっていきますが、皆さん良い夢を見られますように。
「おやすみなさい」




