1話
---第1話 買い出し
「いーか?!今日からお前らをサンタにするために、みっちり教育してやる。」
「気を付け!」
・・・ ---”サンタクロース”---。
彼らは、世界に120人存在し、トナカイのソリで空を飛び、プレゼントを運ぶ。
その最高速度はマッハ4。
これは、そんな精鋭たちを育て上げるサンタ育成所の物語。
さて、今日はどんな特訓をしているのか・・・
「今日は、買い出しの要領を教える。」
教官は言った。
「え~買い出し~?」
プロのサンタになるべくここへ来て、いきなり買い出しをやらされることに、しょっぱなから不満を感じた候補生がつぶやいた。
「バカ者!お前たちは買い出しを何だと思ってる!?」
「いーか?、確かにサンタは、赤い鼻のトナカイでソリを引き、希望を届ける存在・・・」
「・・・だが、それまでの過程の中にも、たくさんの苦労が存在する。」
教官の声には、威厳がある。実は彼は、かつてサンタ業界で1位2位を争ったベテランで、輸送プレゼント総数は251億4006万3214件。
ミスは2億8161万0104件で、100分の1程度だ。
「その中の一つに、買い出しがある。まずは座学で学んだ後、実戦で身につけてもらう。」
・・・5時間後。とある百貨店にて。
一般人として潜り込んでいる候補生たちの脳裏で、教官の言葉が繰り返される。
「いいか!?人々がもとめるものは、大抵百貨店で手に入る。」
ある候補生は、目立つ陳列棚に堂々と置かれている、
”ニンテンプレ スイーチ”を見つめる。
そして教官の言葉が思い出される。
「最近のニーズは、ゲームソフトウェア及びハードウェアの類が多い。」
「俺たちは大抵、手紙を読む前に買い出しを済ませなければならない。」
ある候補生は、すでに複数の商品を手にとり、一旦レジで決済している。
購入したのは、
”ニンテンプレ スイーチ”
”ニンテンプレスイーチ マリナシィスターズ”
”PS7 コンバットフィールド”
”コーヒーメーカー042”
”くまープさんのぬいぐるみ”
だ。
「過去の統計や、今の流行り、広告などからニーズを予想し、うまく買い込め。」
「・・・それが出来てこそ、プロのサンタだ」
・・・そう、サンタに重要なのは、人々の欲しいモノを正確に予測すること。
だからサンタには、統計学、経済学、心理学などの学問を理解出来ていること、
そして最近の商品情勢に敏感であることが求められるのだ。
・・・宇宙飛行士並みに判断力が問われるのである。
---第一話 END