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RedWing ~光翼のクレイン〜  作者: やいろ由季
第二章 フェスティバル
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襲撃②

 常影は次世代戦闘機のコックピットからハッチを開けて身を乗り出した。


 本部と櫻林館ではサイレンが鳴り響き、民間人の避難誘導が始まっている。

 状況を把握できていない民間人はどよめきとともに、若干の緊張感もありつつとりあえずと言ったふうに避難の指示に従っているようだった。


 常影は騒然とする中、次世代戦闘機に内蔵されている拡声器で声を張り上げていた。


「総員に告ぐ! 現在広域ジャミングにより通常の周波数は全て使用不能になっている! 総員、全施設は周波数をUV‐B領域に合わせろ! 聞こえた者は伝令に走れ! 繰り返す!」

 何度か同じことを告げると、コックピットのモニターにいくつも開いていた通信画面に応答が来始めた。


 常影はコックピットへ戻り、拡声器のマイクを置いて通信回線に告げた。


「全施設に告ぐ。現在、本部及び櫻林館は国籍不明戦闘機三機に襲撃を受けている。そちらはすでに戦闘機二機が応戦中だが、敵機は規格外の広域ジャミングと光学迷彩を駆使してきている。戦闘機三機の他にも何かが隠れている可能性は極めて高い」

 そこまで一気に言うと、常影は一層声に力を入れた。


「我々はこれより本部における全迎撃システムをもって、民間人及び我らの国土の防衛のための行動に移る。指揮はこの私、早乙女常影六花二尉が六花の権限を持って執り行う! 緊急事態だ。反論は後日改めて聞き入れる。今は私の指示通りに動いてもらうぞ!」


 どの通信画面にも敬礼が映し出された。


「ではまず観測室、気象衛星から伊勢湾を含めた本部周辺の気流解析を急げ! 気流から光学迷彩で姿を消したステルス機の数と居場所を炙り出し、管制室とこちらへ連絡! 北第一第二砲台、南第一砲台はそのデータをもとに迎撃! 戦闘機部隊も解析データ受信後に離陸し迎撃に回れ!」


 各通信から「了解!」と簡潔に、ただし力強く帰ってくる。


「西第一第二砲台、及び戦車部隊は海からの攻撃に備え警戒態勢をとれ! 地上部隊は民間人の避難誘導を続けると共に、不審者の確保と陸上戦の警戒! 東第一砲台は目視で確認できる敵機を任せる!」


 一通り指示を出し終えると、常影はもう一度ハッチから身を乗り出して空を仰いだ。


 アクロバット日和の青空の彼方を切り裂きつつ、二機の戦闘機がドッグファイトを展開しながらこちらへ向かってくるところだった。


◆ ◇ ◆


「莉々亜ちゃん!」


 陽介は避難中の人混みの中、はぐれそうな莉々亜を呼び止めた。


「陽介君! ねえ、あれもアクロバットショーなの……?」

 莉々亜は避難の足を止め、青ざめた顔で空を見上げた。


 遠くの空に見える戦闘機五機が風を切り裂いて火花を散らしている。どう見ても先ほどのアクロバットショーとは全く違う動きだった。


 不意に遠くの空に泳ぐ五つの機体のうち二機が、ものすごい速さでこちらに近づいてきた。

 先頭はグレーの機体、それを追うのは先ほど上空から観衆を楽しませていた青鷹のようだった。


 その青鷹を操縦しているのが誰なのかと想像たであろう莉々亜の体は震えていた。


「逃げるんだ、莉々亜ちゃん!」

 陽介は莉々亜の手首を引いて群衆と共に走った。しかし背後から風を切る音が迫る。


 莉々亜を庇いながら咄嗟に建物の軒先に転がり込んだ刹那、グレーの機体が低空飛行で頭上を通過した。


 体が飛ばされそうな突風と爆音が通り過ぎたと思ったら、そのすぐ後に青鷹も通過していった。青鷹の高度はそれなりにあったので目を開けていられた陽介と莉々亜は、機体の腹に書かれた『04』の数字を見逃さなかった。


「千鶴君!」

 莉々亜が蒼白な顔で叫ぶ。


 陽介ははっとして海の方を振り返った。

「じゃああれはまさか、雪輝……!」


 陽介も青ざめた顔で海上の空を見上げた。

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