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かくれんぶ!  作者: 鈴木智一
27/42

フリキュアアナザディメンション 超時空間の覇者(前編)

 わたしたちが暮らす現実の、うすかわ一枚うらがわにある世界で、妖精たちに危機がせまっていた━━。


「いかんいかん、なんだか急にきのうの夜から腹がいたい……」


 妖精王ネッコネコが痛がる。

 それは、良からぬ事態でした。だって、妖精王はお腹が痛くなったりはしないからです。

 ガンバッペ・エナジーというポジティブなエネルギーが充満している妖精王国のなかでは、お腹が痛くなるようなことはないはずなのに。


「だいじょうぶですか、おやびん」王にたいして「おやびん」なんて言うのは、大臣のイヌイーヌです。こいつしかいません。


「う~ん、だいじょうぶじゃないかも……。これはどうも、ガンバッペ・エナジーがうす~くなってきているのかも。そうかも」


「わたしたち、死んじゃうゲロ?」カエルンが言った。


「いやだチュ~、死にたくないチュ~!」ネズチュウがさわぐ。


「ヘルプッ!」ダニスケが神に救援要請をだしたが返事はなかった。


「だいじょうぶ、たぶん……みんな、そんなにすぐに死にはしないから安心するかも」とは言え、とネッコネコはつづける。「いやな予感がするかも……これは、もしかするとガムシャラ超時空がこの世界に近づいてきているのかも」


「ええっ、ガムシャラ超時空ですか! なんですかそれ?」イヌイーヌはしらなかった。無知だった。


「ええとね~、とっても暗くてじめじめした世界でね~、その中には超幻夢ガムシャラ次元王のいるガムシャラ超幻夢帝国があるかも」


「超ガムチャラ王と、ガムチャラ腸捻転ですか?」


「ちがうかも」


「こわいゲロ~、ゲロゲ~ロ!」わけもわからずこわがるカエルン。


「いやだチュウ~、死にたくないチュウ~!」ネズチュウはずっと同じことをわめいている。


「ヘルプッ!」ダニスケが神に救援要請をだしたが返事はなかった。


 そうこうしているあいだに、妖精王国の上空には黒い影が広がってきている。それはあっというまに世界を覆い、昼が夜のように暗くなってしまった。

 湿度もじっとりあがってきた。


「あ、もうガムシャラ超時空にはいったかも」


「ええっ、そんな急にですか!」


「もう一刻の猶予もないかも。大臣、すぐにウサミミピョンをつれてくるかも」


「はいっ、すぐにつれてきます!」


 大臣がお部屋をでていくと、妖精王ネッコネコは座っていた椅子からおりて、それをズラすと、なかから3つのキラキラきらりんフリりんごをとりだしました。

 キラキラきらりんフリりんごは、りんごみたいなかたちをした奇跡のジュエルで、妖精王国に伝わるとっておきのたからものなのです。


「おやびん、つれてきました~!」


 大臣のイヌイーヌが、かわいらしいウサギの妖精をつれてもどってきました。


「おうちゃま、ウサミミピョンにご用なんでちゅかぴょん?」ウサミミピョンはききました。


「そうかも。ウサミミピョン、これをあずけるかも」と、ネッコネコはキラキラきらりんフリりんごをぜんぶ、ウサミミピョンにわたそうとしました。


「なにこれ……もてないぴょん」ウサミミピョンの手はちいちゃいので、3ついっぺんにはもてませんでした。


「あー、おとしちゃったかも。大臣、なにか袋をもってくるといいかも」


「はいっ、すぐにもってきます!」


「いっこ、ひろったぴょん」ウサミミピョンはがんばっていっこだけひろいました。


「おやびん、袋もってきました~!」


 大臣はすぐに袋をとってもどってきました。袋はビニールのコンビニ袋で、「おもての世界」からまよいこんできたものでした。ヘンダーソンとかいてあります。おそらく映画のスポンサーなのではないでしょうか。


「さあ、ウサミミピョン。その袋にキラキラきらりんフリりんごをいれるかも」


 ウサミミピョンは言われたとおりに、コンビニ袋の中へキラキラきらりんフリりんごをいれました。そうすると、ウサミミピョンのちいちゃいおててでも、3ついっぺんに運ぶことが可能になりました。


「で?」ウサミミピョンは真顔でききました。


「それをもって〈おもての世界〉へ行くかも。そして〈おもての世界〉で3人のフリキュアをさがすのかも。〈おもての世界〉ではきっと、ウサミミピョンみたいなルックスのやつがモテるらしいって、言い伝えがあるかもだから、ウサミミピョンが適任なんだかも。フリキュアになれそうなやつは、そのキラキラきらりんフリりんごがおしえてくれるかもだから、安心」


 ネッコネコは急いで説明すると、さっそくウサミミピョンを〈おもての世界〉へおくるための準備をはじめました。


「この魔法には、すっごいガンバッペ・エナジーを使うかも。だから、ウサミミピョン一人をおくるので、せいいっぱいなんだかも」


「おうちゃま、かえるときはどうするぴょん?」ウサミミピョンは意外と冷静にそんなことをたずねます。ちゃんと頭は働いてますね。


「かえるときは……たぶん、フリキュアがなんとかしてくれるかも」


 わりといい加減なお返事だったので、ウサミミピョンはとっても不安になりました。


「なんだかこわいぴょん……」


「あー、もうおくるよ……ガンバッペ・エナジーがあふれちゃうから……おくるよー、いくよー、あっ、そ~れっ!」


 ネッコネコが手をふると、光かがやくガンバッペ・エナジーの濃厚なかたまりがウサミミピョンを包み、さらに光をつよめました。

 そして、光がおさまると……そこにはもうウサミミピョンの姿はありません。


「ウサミミピョン、たのんだかも……妖精王国の命運は、キミにたくされたのかも……」


 その後、妖精王国は闇に飲まれていきました━━。


 ☆☆☆☆☆


「うわぁーん! こっちのスイッチ押したらそっちのスイッチ切れるってこれどーなっとるのよマジで!」


 ピンク色のソフトクリーム頭をした女の子が操作パネルの前であたふたしてます。


「えっと……これがレボリューション・ウインドのスイッチであれがゴキブリ男の泣き声を流すボタンで……そっちは照明だっけ? あーもーなんもわっかんなーい!」


 適当にポチポチっとやったら、舞台上では風が吹き照明が消え床が開いて演者が落ちました。


「わー! たいへんだーっ!」


 演劇部員の桃谷(ももたに)なくる(CV:寿々木粉雪)は先輩に教えられた手順を、すっかり忘れてしまったので大しっぱい!

 本番ではなかったけれど、本番さながらの通しれんしゅうでのミス。これはきっと、先輩たちに袋だたきにされるのではないかと思ったなくるは、ソッコーでにげだした。


「とんずらー!」


 さいわいにも、先輩たちがやってくるより先に、だっしゅつせいこうです。

 そのまま、学校のしきちからも出ました。


「はー、わたしってなんてダメな子なんだろー。テンパって、わけわからなくなっちゃう病なんかなー。これって、ホスピタルいったらなおしてくれるんかなー」


 はぁ、ってため息をもらしながら、とぼとぼとさびれたサビレ商店街をあるくなくる。

 そんなふうに考えごとをしていたなくるは、ほとんどなにもないようなところで、コンクリのわずかな歪みにひっかかり、ハデにすっころびました。


「いったーい! ふんだりけったりころんだりー!」泣いて起き上がると、ひざをすりむいておりました。いたいわけです。しゅっけつしているのですから。


「だいじょび?」


 と、泣いていたなくるに女の子が声をかけてきました。緑色のゆるふわヘアな、背の低い子です。

 どこかで見たような顔で、なくるはちょっと考えてみたら、すぐにその名前を思いだしました。


「うん、ちがでてるから、だいじょうぶじゃないかも……」


「うんちがでたら、たいへんだ」女の子はいいました。


「うんちじゃないよ、ちだよ」なくるはていせいします。「あなたは、となりのクラスの緑ヶ丘(みどりがおか)草里(ぞうり)ちゃんだよね?」


「そうだ」緑ヶ丘草里(CV:グリーン露)はフラットなはつおんでいいました。


「そのかっこうは?」


 草里のすがたをみて、なくるはぎもんに思いききました。まるでどこかの店員さんのようなふくそうだったからです。


「これ、あちき……あちしのせいふく。あちしのおうち、この本屋だから」


 みると、たしかに本屋さんがあります。なくるは本屋さんのまえですっころんだのでした。


「みどり書店! ここ、草里ちゃんのうちだったんだ!」しらなかったー、と、なくるはいいました。あんまり本は買わないので、今まで気づかなかったのです。


「ちぃでてる……」


「うん、さっきいったよ」


「ばんそこある。うちに」


 絆創膏な、となくるはつっこんだ。


 草里といっしょに本屋さんのなかへはいり、そのままおくまでいきます。さいきんではほとんど見ない小さな本屋さんは、新品の本をあつかっているのに古本屋みたいなにおいがしました。

 おくまでいくと、そのまま住居スペースへとつながっています。

 リビングにとおされると、草里に「そのへんにすわれ」とめいれいされたなくるは、おとなしくすわります。


 消毒液と絆創膏を手に、草里がもどってきました。


「しょどく」液を、なくるの足にぶっかけます。


「ぎゃああああ!」なくるはいたくてさけびました。


「ばんそこ」消毒液まみれのなくるのひざに、草里は無造作に絆創膏をひっつけました。なぜかふしぎとひっつきました。ぬれていたはずなのに、はがれる気がしません。


「あ、ありがと……もうだいじょうぶだよ」


「よかった。あちき……あちし、いのちのおんじんだな。金よこせ」


「えっ、カツアゲされてる?」


「うそ。あちしおうちバイトしてるから、金ある。あ、客きた」


 ぴろりろりろーん、ぺろれろれ。と、来客をおしえるメロディがなりました。


「今あちししかいないからいく」


「あ、まって。わたしも、もうだいじょうぶだから」


 なくるは草里のあとにつづいて、店に戻りました。


「あれ? 客いねえ」草里がふしぎそうにきょろきょろ。


「あ、いるよ……奥のほうに」草里よりは背の高いなくるが、より遠くまで見通して客をはっけんしました。


「奥は……エロ本のコーナー。チッ……エロい高校生か」と、草里はたいどが悪いです。「あ、でもたまに同級生の男も買いにくる」


「マジで?」なくるは驚きました。


「でもあちし見て、買うのやめる」


「まーねー」はずかしいしねー。と、なくるは理解があります。「ところで今いるお客さんは女の子だよ?」


「マジで?」草里は驚きました。


「マジもマジ。マジんこで」


 ふたりで顔を見合わせていると、そのお客さんが近づいてきます。

 お客さんは青髪ロングのかわいい女の子で、どこかで見たことのある子なのでした。


「ちょっとお訊きしますが、女〇中〇生の裸が載っている雑誌などは置いていませんの?」


 草里はあんぐりと口をあけました。

 なくるもまったく同じひょうじょうです。


「そーゆーのは、ねーよ」草里はつよめに返答した。


「〇子〇学〇の裸は、ダメでしょ……」なくるも、あきれたかんじでいいました。


「あらそうですの……残念」


 子供向け映画にピーを入れるこの少女は、よく見たらなくると同じ制服を着ていました。


「たしか……生徒会の先輩ですよねぇ」なくるはおもいだしました。


「ええそうよ、兎三中(うさぎさんちゅう)生徒会副会長の青葉(あおば)百合道(ゆりみち)ですわ」


「その青葉先輩が、なぜにエロ本を……」


「はっ! そんなもの、同世代の同性の裸体に並々ならぬ興味があるからに決まっていますでしょうっ!」


「う、う~わキッツぅ」なくるはゲロをだしそうになりました。なんだか先輩の目がいやらしくみえてしかたありません。


「近づくなカス」草里ははっきりいいました。


「あなたたち、こちらの業界にケンカを売るなんて命しらずもはなはだしいわね……袋だたきにされますわよ?」


 こちらの業界とは、どちらの業界かわかりませんでしたが、なくるはやっぱり「う~わキッツぅ」といいました。袋だたきは厳しい罰だという前世からの記憶が、なくるにはあったのかもしれません。袋だたきはキツイのです。


「どうもすみませんでした、カス」


 草里も袋だたきはご勘弁ねがいたいので、ちゃんとあやまりました。


「まあいいですわ……今度すっぽんぽんになって見せてくれるのなら」と、青葉百合道(CV:湯ノ原ぺちょ)はなおもほざきます。


「ひいいっ」なくるはさむけがしました。


「警察よぶ」そういって、草里は奥にいこうとします。が、青葉百合道にうでをつかまれて、ほかくされてしまいました。


「よんだってなんにもなりませんわよ!」


「あー、草里ちゃんがむかれる~!」


「むきません!」


「おたすけ~」草里はほとんど棒読みでしゃべりました。


 と、その時です━━


「おたすけ~っ!」


 草里ではなく、なくるでもなく、百合道でもなく、三人のだれよりもかわいらしい声がしたかとおもったら、お店のなかになにかがとびこんできたのです!


 白くてちっこい、なにかです。


「わっ、わっ、なにこれウサギさん?」


 なくるは、なくるの胸にガサッととびこんできたウサギのようないきものをキャッチ。

 でもよくみたら、ちょっとへんないきもの。ウサギのようでウサギじゃない。ウサギじゃないようで、やはりウサギとしかいえない……よくわからんなにか。しかもなにやら、ビニール袋をもっています。


「ウサミミピョンはウサミミピョンぴょん!」


「ぴょんぴょん……?」草里はぽかんとしてます。


「なんですのこれ……妖怪?」


「ちがうぴょん! ウサミミピョンは妖怪じゃなくて妖精ぴょん!」


「へー……って、しゃべってるよね?」なくるは顔をひきつらせました。


「そりゃあ生き物なのですから、言葉くらいしゃべりますでしょう?」と、百合道はいいます。


「いや……にんげんのことば……」


「うまそう」草里はじゅるりとつばをのみこんだ。


「たちゅけてぴょん! ガムシャラ超幻夢帝国の脳筋ガムシャラ戦士がウサミミピョンをおいかけてくるでちゅぴょん!」


「なぬ……カムチャッカ町健康ランドの労金カムチャッカ税理士?」なくるは聞き違えました。


「ちがうぴょん、カムチャッカ町内会の……あれ、なんだっけぴょん?」ウサミミピョンはわけがわからなくなりました。「せちゅめいはむずかしい……おそとに出てみるぴょん!」


「めんどくせ」


 そういいながらも、なくるはちゃんとウサミミピョンのいうとおりに、おそとへでます。草里と百合道もいっしょに。


 そして、商店街の入口のほうへ目をむけると、なんだかすごぉく大きな人影がありました。


「あっ、いるぴょん! あれが脳筋ガムシャラ戦士ぴょん! やべぇ、めっかった!」ウサミミピョンは声ににあわずやべぇとかいいました。「みんなで、ぶっころすぴょん!」ぶっそうなめいれいをだします。


「いやいやいやいや、無理無理無理無理(ヾノ・∀・`)ムリムリムリムリ(ヾノ・∀・`)!」


 なくるはビビって腰がぬけました。ウサミミピョンをだいたまま、へにゃりとじめんにおすわりします。

 こちらに気づいた人影は、ゆうに5メートルはありそうな異常にでっかいやつで、からだも顔もでっかくて全身真っ黒だったのです!


「やつざきにできないぴょん?」


「できるわけないじゃん、される側じゃん!」なくるはうごけません。おしっこがもれそうです。


「なんですのあれは……だいでら……だいどら……でぃど~らぼち……なんでしたか……デンタルビッチとかいう妖怪ですの?」


 そんな妖怪はいねえ。


「動画とる」草里はスマホをとりだそうとしましたが、スマホは店の中でした。


「は、はなちゅぴょん! はなせぴょん! このままだとやつざきにされるぴょん! ウサミミピョンだけでも逃げるぴょん!」ウサミミピョンは最低最悪なはつげんをしました。


 しかし、なくるにがっちりホールドされていて、逃げられません。


「いやだー、いやだぴょんー! 死にたくないぴょんー!」みぐるしくわめきます。「こうなったらちかたないぴょん……キラキラきらりんフリりんごははんのうちてましぇんが……こいちゅらをフリキュアにするしかないでちゅ」


 ウサミミピョンはじぶんのいのちおしさに、かってなはんだんをくだしました。

 こいつ、けっこうなクズですね。


「ちょうど3こあるでちゅ! おまえらに、これをやるぴょん」ガサガサッ……。「とれないぴょん……」ウサミミピョンのおててはちいちゃいので、片手ではうまくとれませんでした。なので、もう袋をさかさまにして、なかみを落としました。


「ひとりいっこ、ひろうぴょん」


「なになに、これって宝石?」なくるはすぐそばの一つをひろいます。それは、きらきらかがやく、とてもきれいな宝石がうめこまれた、コンパクトミラーのようなものでした。


「あら素敵じゃない……これ、質屋にもっていったら、おいくらで買い取ってもらえますの?」


 百合道は現金化をもくろんでいます。


「ほんとはおまえたちにやっちゃいけないぴょんが……しかたないぴょん。それにむかって、『フリキュアふりリンク!』っていうぴょん。そうちゅれば、むりやりおまえたちのものにできるぴょん」


「どゆこと?」なくるはよく理解できませんでしたが、とりあえず、いわれたとおりにしてみます。なくるは素直ないい子なので、狡猾でひねくれた人間に搾取されるタイプでした。

 やられてもやり返さない……泣き寝入りだ!


「フリキュアふりリンク!」


 なくるのことばにはんのうした、キラキラきらりんフリりんごがまばゆいひかりをはなちます。


 そのひかりにつつまれたなくる。


 自らの着衣はもとより、頭髪までもが分子変換され、本来の姿から変化する。その時、なくるの脳内には、フリキュアとしてのあらゆる情報が流れ込んでいた。


 ドレスのような不思議なコスチュームをみにまとい、ただでさえピンクだった髪はさらにピンク色になり、ボリュームアップ。怒髪天を衝ついたかのようなスーパーソフトクリームタワーヘアになり、ひかりの中から再登場!


「悪いやつらを袋だたきでボッコボコ、キュアナックル!」


 キュアナックルが誕生した!


「あらすごい……わたしもやってみようかしら」百合道も乗り気になり、ためしてみることにしました。「フリキュアふりリンク!」


 すると、百合道を赤色のひかりがつつみこむ。なぜならそれは本来、赤色のフリキュアに用意されたものだったから。

 なので、青髪の百合道と混ざりあって、紫色のフリキュアになってしまいました。


「エロいあなたに紫色の精力剤、キュアベビードール!」


 キュアベビードールが間違って誕生した。


「あら、いいわねこれ」ベビードールは、エロいコスチュームにも満足げだ。


「う~わキッツぅ……」ナックルは引きぎみだ。


「あとはおまえだけぴょん、はやくちゅるぴょん……さんにんくらいいないと、あんしんできないぴょん!」


 てまえかってなウサミミピョンにうながされ、なにが起きているのかわからずぽけ~っと突っ立っていた草里は、しかたなく低いテンションのまま、みんなのまねをしてやってみました。


「フリキュア~、ふりリンク~」


 ぼんっ、と緑色の煙がはっせいして、草里をつつみます。

 もわわわわわわ~ん、って煙でなにもみえなくなりました。「げほっ、げぼほっ!」草里が咳き込んでいる音だけが聞こえます。


 そして煙がきえると……。


「げっほ、げっほん……あちしはみどりな単細胞、キュアゾウリムシぃ~」


 とんでもないやつが爆誕した。


「ちょっときぐるみっぽいね、キュアゾウリムシ……」ナックルが感想をいった。


「あちし……ダセェ」


「あら、マリモみたいでかわいいですわよ?」


「あちし、みどりのおキンタマ」


 ここはなぜか、まったくピーが入りません。

 垂れ流しです。


「やったぴょん、これでだいじょぶぴょん、フリキュアはやく脳筋ガムシャラ戦士のおなかをひきちゃいてぞうもつをひっぱりだすんだぴょん!」


 そうこうしているうちに、ゆっくりのっしのっしと歩いてきていた脳筋ガムシャラ戦士は、もう目の前にせまっています。


「はやくやれぴょん!」


 目が血走っているウサミミピョンが、かわいらしい声で叫びます。


「ではわたくしが先制攻撃いたしますわ」くるりとターンしたベビードールが必殺技をくりだした。「フリキュア・パンティシャワー!」


 公式グッズとして実際に販売されている、女児用パンツから成人女性向けのフリキュアおパンティまで、すべての下着ラインナップの宣伝もかねて、それら数十枚が脳筋ガムシャラ戦士のうえにふりそそぎます。

 が、当然ながら、そんなもので倒れるようなことはありません。わずかに「ん?」くらいの感じで一瞬だけ動きがとまりましたが、それだけです。


「ダメですわね。ゾウリムシ、お願いするわ」


 また歩きだした脳筋ガムシャラ戦士に、こんどはゾウリムシが必殺技をためします。


「フリキュア・グリーンティー!」キュアゾウリムシがつきだした人差し指から、ぴゅっと緑茶がとびだしました。妖精王国の茶畑からとれる品種の「ふり茶」です。

 これは脳筋ガムシャラ戦士をたおすどころか、そもそも届いていませんでした。ゾウリムシの前の地面をぬらしただけで、見方によってはゾウリムシのおもらしにもみえました。


「ふじゃけろぴょん! くそのやくにもたたないぴょん!」ウサミミピョンが度を越したことばを吐き出します。子供への悪影響など、みじんもかんがえておりません。


「やばいぴょん、もうおまえしかいないぴょん! おまえがたおせなかったら、おわりだぴょん!」


 ウサミミピョンにいわれたナックルは、あわてずさわがず、れいせいにへんじをしました。


「わたしたぶん、よゆーでたおせると思う」それは、キュアナックルとしての能力を把握できているからこそのセリフでした。ナックルはすでに、脳筋ガムシャラ戦士をたおせるという確信をえているのです。


「ほんじゃまあ、たおしてくるよ?」


 そういったナックルは、わずかに一度のちょうやくで、いっしゅんにして脳筋ガムシャラ戦士との距離をつめると……「ふんっ!」とかいって強烈なボディへのいちげきをたたきこみました。


『げぼおっ!』脳筋ガムシャラ戦士の巨体がくの字におれます。その、おじぎをしたかたちになった頭部に、こんどはこんしんのアッパーをくらわせます。


『ごっぱぁーん!』


 重低音なさけびをあげ、上空にぶっとんだ脳筋ガムシャラ戦士が、しばらくすると降ってきて仰向け大の字のかたちで地面にめりこみました。


 その時のしょうげきで、キュアゾウリムシがこけたけれど、だれも気にしなかった。


 そして、地面にはんぶんめりこんだまま動けない脳筋ガムシャラ戦士のうえにとびのるナックル。そのまま、でかい頭部をめっちゃくちゃにタコ殴ります。


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオララララララ!」


 最大耐久値をこえたダメージをこうむった脳筋ガムシャラ戦士は、その生命力であるガムシャラパワーが枯渇してしまい、ついには生きることをあきらめます。


『ショセンコノヨワムジョウナリ……』存在が消え失せる最後のしゅんかん、発せられる音がぐうぜん意味のあることばのようにきこえる。そんな現象とともに、闇の存在はほうかいした。


「(;´Д`)ハァハァ(;´Д`)ハァハァ……な?」キュアナックルがドヤ顔をしました。


「すげー、あいつやべぇ」こけて倒れたついでに横になって寝っころがったまま観戦していたゾウリムシがいいました。


「ザ・暴力という感じでしたわね」ベビードールはパンティをちらかしただけなのに、腕組みしてひと仕事終えた感をだしていやがる。


「や、やるじゃんぴょん……あの脳筋ガムシャラ戦士をボッコボコのベッコベコにしやがったぴょん。ほんとはちがうやちゅらだったけど、つよいやつでよかったぴょん……あれ?」


 ウサミミピョンはじぶんの言葉に違和感をおぼえましたが、その正体がベビードールとゾウリムシがやくたたずであるということにまでは、その時はきづきませんでした。というか、すっかりわすれておりました。


「まあいいぴょん、フリキュアになったおまえら、つぎはガムシャラ超次元にいって、超幻夢ガムシャラ次元王をしゃつがいするぴょん!」


「えー、やだー」ナックルはおことわりしました。


「いやいやいや、やだーはダメぴょん。超幻夢ガムシャラ次元王をバラさないと、ウサミミピョンたちの妖精王国は終わりぴょん!」


「なにそれ……勝手な」ナックルはウサミミピョンに不信感をしめしました。


「フリキュアはそのためのフリキュアなんだから、妖精王国をたすけろぴょん! はやくしないとみんな脳筋になるんだぴょん!」


「別にいいのでは? 命とられるわけじゃなし……」ナックルはそう思いました。


「とられるぴょん! たぶん死ぬの! おうちゃま死んじゃうのー! だからヤヴァーイのぉーっ!」ウサミミピョンはその場しのぎで、てきとうにうったえます。


「えー、でもなー……なんでわたしたちがそんな」


「そのガムシャラ超次元とやらに、温泉などはございますの?」


 とうとつなベビードールのしつもんに、ウサミミピョンは「おんしぇん? あるぴょん」といいました。この場合、ガムシャラ超次元=ガムシャラ超次元にのみこまれた妖精王国ということだとかんがえ、ウサミミピョンは妖精王国をおもいだしてこたえたのです。


「ありますの? でしたらまあ、ちょっと行ってみるのもいいかもしれませんわね(温泉なら、なんの不自然さもなくナックルとゾウリムシの裸体をおがめるわね!)……」


「それに、超幻夢ガムシャラ次元王をこなみじんにふきとばしぇば、きっとおうちゃまからごほうびがもらえるぴょん!」


「ごほうび……あちしほしい」ゾウリムシはよくぼうにみをまかせた。


「えー、しょーがないなー。ふたりが行くんだったら、わたしもまあ、暇だし?」


「きまりぴょん! それじゃあ妖精王国に戻……どうやって戻るぴょん?」


 ウサミミピョンはナックルにききました。


「しるか……って、あれ? あれれ、なんかキラキラきらりんフリりんごが連れてってくれるみたいだよ」


 キュアナックルは腰にぶらさがっていたキラキラきらりんフリりんごを手にもちます。するとキラキラきらりんフリりんごからはっせられたまばゆいかがやきが三人のフリキュアと一匹のウサミミピョンをつつみこみ━━。


 こうして、彼女たちはガムシャラ超時空にのみこまれた妖精王国へと旅立った。

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