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第87話 街一つ食べて来た妖魔

 全員に、緊張が走る。

 妖魔メルディア。

 この家の姉妹を食べて、その潜在能力(ポテンシャル)を奪おうとしている。


 前に来た時はジークが運よく倒した。

 だが、今回は同じようには出来ないだろう。


「あら、あなた、まだいたのね? それはご愁傷様」


 薄ら笑いのメルディア。

 ジークの事も当然認識している。


 当然だろう、この美しい姿を、醜悪な姿にまでさせて憎悪の言葉を吐いたのだ。

 それが何故か、今では、まるで弱く哀れな捕食対象者に相対するような表情を向けるメルディア。


「……どういうことだ?」

「だって、私はあなたに何の興味もないのに、あなたは殺されなければならないのだから」


 何の興味もない。

 それはそうだろう、ジークの才能は、とっくに開花して、枯れてしまったのだから。


「前にも同じようなことを聞いたな。その時は無様に負けたのは誰だ?」

「ふふっ、そうね。だから、私は強くなったわ。向こうの街で、街の全員を食べた。雑多な能力でも数食べれば強くなる。私の能力は格段に上がったわ」


「………………」

「ほら、真昼なのに私が現れられたのも、能力が強化されたおかげよ」


 自慢げに語る。

 やはり、暗いのは、メルディアの所以か。

 ある程度分かってはいたが、はっきり言われると、この妖魔が前とは比べ物にならないほど強化されていることを頭が理解してしまう。


「これは……もう……」

「どうするの? もうダメなの?」

「無理無理無理無理無理無理!」


 経験豊富なジークはこのような戦い前の舌戦は慣れているが、娘たちはそうではない。

 背後から明らかに動揺が広がる気配がする。

 街一つ滅ぼした妖魔が目の前にいて、その能力は圧倒的。


 このままでは、娘たちが恐怖に震えることだろう。

 怯える人間は短絡的な行動を取りやすい。

 そうなると、守り切れない。


「確かに能力は向上したようだな」


 ならば、煽り返して、形勢を変えるしかない。

 形だけでも。


「そうね、だから、もうあなたでは勝てないわ」

「昼を夜に変えるなど、魔力も相当使うのだろう。それをこんなに長時間出来てしまうのは見事としか言いようがない」


「ふふふ、分かってるじゃない。あなたは最初に殺してあげてもいいわ。苦しまなくて済むようにね」

「だが、そんなに魔力を使ってもよいのか? これから戦うのだぞ? これほどまで魔力を消費した状態で戦えるのか?」


「何を言っているの? この程度、何でもないわよ確かに膨大な魔力を消費するけれど、この程度──」

「自慢げに語ったという事は、この技はお前にとってもかなりの力を使う最高技術なのだろう。それを戦いの前に消費するという事は、その分お前が弱体化するという事だ。走り続けて疲労困憊の時の戦闘と、万全の状態での戦闘、どちらが強いかは言うまでもあるまい」


「あなたを倒すくらい、この程度の消費ではどうとでも──」

「残念だったな、格段に強くなっているのはお前だけではない。私も、格段に強くなっている。この五人の娘がいるからな!」


「…………っ!」

「倒してからでは言えぬから今言っておこう。お前の敗因は、敵を舐め切って魔力を消費してしまったことだ。大人しく夜に来ればよかったものをな」


 メルディアの表情が、一気に険しくなる。

 少なくとも、言葉では、何とか対等に返すことが出来た。

 娘たちの気持ちも少しは楽になったことだろう。


「……ちょっとおふざけが過ぎているようね」


 怒りを抑えるような表情の、メルディア。


「あなたは私が出来る一番苦しい方法で殺してあげる。あなたの方から殺してくれと頼むほどにね」


 味方を落ち着かせることは出来たが、敵はいきり立たせてしまったようだ。


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