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第84話 魔法の真実

「どうした? 今のところ依頼はないが。シェラナの事か?」


 アルシェラから解放された後、その足でユーリィの元に向かうジーク。

 先ほどまで、長寿の幼女の相手をして、今度はまたもう数歳若い、いや三百年若い幼女の相手だ。


 魔法を使う者は長寿というのは常識だが、これほどまでに若い者が多いのはどういうことだろうか?

 前に軽く聞いたことがあるが、魔法の習得、研究には長い年月がかかるため、まずは自分の時を止める魔法を習得するのだろう。

 そして、若い分、早く習得したという証になるので子供が多いのだろう。


「そうだ、少し聞きたいことがあってな」

「ふむ、そろそろ治療に行かせてもよいと思ったのでな。まだ早かったか?」

「いや、その件に関してはそちらに任せる。そうではない、シェラナの成長の方だ」


 ジークは、娘たちの習得について聞いて回っていることを説明する。


「ふむ。確かに、シェラナは覚えが良い。私もそれが潜在能力(ポテンシャル)の所以であると理解している。本来なら、百年かかるところをどこまで圧縮できるかを考えておるが、少なくとも十年と言うことはないだろう」

「ふむ……」


 サルジス家もそうだったが、やはり魔法は長く時間がかかるのだろう。

 であるから、彼らも長寿になるべくしてなっているのだろう。


「……ん?」


 ふと、疑問に思うことがある。


「シェラナはこれから歳を老わなくなるのか?」


 そう、魔法を使う者は知り合いでもみんな若いまま歳を重ねている。

 それは、魔法には、習得に時間がかかるため、長寿とならなければ身につかないためだと聞いている。

 ならば、ユーリィはシェラナに最初に歳老いない魔法を教えるのではないか?


「そうなるな」

「そうか……」


 それは悲しいことではない。

 だが、彼女には妹たちがいる。

 マーキィは別にして、年々歳を重ねていくエミルンやオーヴォルを、彼女は若いまま見ていくのだ。


 その感覚がどのようなものか、ジークには分からない。

 だが、少なくともシェラナ自身はそうなることを覚悟しているのだろうか?


「これは魔法を使う者の宿命だ。最初に教えてある」


 ジークの表情から感じ取ったのか、マーキィが口を開く。


「勘違いしているようだが、長寿になることは別にそれを習得するわけではない。魔力を使うと自然に時が止まるのだ。であるから、魔法を使うのなら時は止まる」

「そうだったのか、それは知らなかった」


 魔法を使う上で時間が足りないから老いを止める魔法を習得するのだと思っていたが、そうではないようだ。


「魔力を行使することで、老いるための身体の動きを止めるようだ。私も専門ではないので、詳しくは知らんが、それは魔法を使う者の宿命だと師匠に聞いたし、あやつにもそう教えている」

「うまく出来ているものだな」


 魔法を扱えようになるには時間がかかる。

 だからこそ、魔法を使えば老いが止まる。

 誰が創った構造かは分からないが、良くできていると感心せざるを得ない。


「ま、いつか来る孤独に備えておけと言うしかないのだがな」


 ユーリィの言葉に自嘲が混じっているように見えたのは、気のせいだろうか。

 確かにアルシェラは孤独を抱えて暇を持て余していそうだった。

 あそこまで子供ではないにしろ、ユーリィにも同じような感情があるのかも知れない。


「ま、この街にいるのなら、それどころではないかも知れんがな」


 この街には、暇を持て余した貴族も多い。

 周囲には魔物も潜んでいる。

 魔法を使える、年長の者はそれらをまとめ、また、時には動かなければならない。


「そうか」


 シェラナは一人ではない。

 人は変わっていくが、この街に人が絶えることはない。


「ならば問題はないか」


 ジークが死んでからも、彼女の人生は長い。

 その全てをこの街は受け止めてくれるだろう。


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