表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

72/94

第70話 姉妹の関係

「……別に恥ずかしいなら隠せばいい。十二の娘ならそれが普通だ」


 あまりにも居たたまれなくなり、ジークが言う。


「そんな必要ないよ! 家族しかいないし!」

「マーキィ、気持ちは分かるが、世の中にはいきなり家族になれる者ばかりではないのだ。徐々に慣らしていけばいい」

「そっかー」


 マーキィは、少し残念そうに、引き下がる。


「だ、大丈夫、だから……!」


 だが、本人であるジーシェイが意を決したように、隠さずに歩いてくる。


「無理はしなくてもいいのだぞ?」

「大丈夫!」


 そう言いながら、勢いでジークの隣に座するジーシェイ。


「ふむ。私は最初から無理をしていなかった。だとすれば、私の方が上なのではないか」


 そう言いながら、反対側のジークの隣に陣取るオーヴォル。


「あ、ずるい!」


 いつもなら、逆が自分の場所だったので、居場所がなくなるマーキィ。


「オー!」

「断る」


「どいて!」

「他を当たるのだ」

「他……」


 ちらり、とジーシェイを見る。


「どーいーてー!」


 だがそれは一瞬だけで、やはり、オーヴォルの手を引っ張る。


「私はどかぬ。ここは私の場所だ」

「うにゃぁぁぁぁぁっ!」


 軽いオーヴォルは、半ば持ち上がってしまう。


「マーキィ、それにオーヴォル、ジーシェイ。少し話を聞いてくれんか?」


「うん!」

「うむ」

「う、うん……」


「私はお前たち五人を、全員等しく自分の娘だと思うつもりだ。もちろん、その時々によって誰に肩入れをするという事もあるが、基本的に等しく愛するつもりだ」

「そうなの?」

「もちろん分かっている」

「……うん」


「だから、お前たち同士もそうあって欲しいと思っている。これは別に強制ではないのだが」

「? ちょっと分からない」

「うむ」

「…………?」


 子供達には、遠回しな言い方は難しかったのだろう、首をひねる。

 オーヴォルも、おそらくは意味を理解せず答えているのだろう。


「これは難しいかも知れんが、お前らはみんな、姉妹なのだ。姉妹として仲良くして欲しい……いや、こういう言い方は難しいか。お互いに遠慮するな、という事だ」


 そうは言っても、難しいことは理解している。

 ついこの前まで会ったこともない他人なのだ。


 しかも、片やジークの実の娘、片や貴族の娘。

 互いに気を遣うのも、仕方がないことなのかも知れない。


 だが、それを承知の上で、その壁を乗り越えて欲しいのだ。

 それを、十代前半の少女たちに望むのは難しいのだろうか?

 いや、十代前半の、まだ子供と言っていい年齢だからこそ、行ける可能性があるのではないだろうか?


「つまり、パパの言うことってさ──」


 最初に口を開いたのは、マーキィ。

 最年長者でありながら、最も子供っぽい少女だ。


「こういうことだよね?」


 そう言うと、彼女は、反対のジーシェイの方へと移動する。


「ジーシェ、どいて!」

「……え? え!?」

「そこは私の場所だからどいて!」


「あ、はい……」

「違うでしょ!」

「……?」


 言う通りにしようと立ち上がりかけたジーシェイに、マーキィが怒る。


「パパの隣にいたいなら、ジーシェも嫌って言えばいいの! 姉妹って自分を主張してもいい相手なんだよ!」


 いや、そういうわけではない、お互いを尊重することも必要だ、などと、ジークは思ったがそれを口にする必要もないだろう。

 マーキィはいち早く、ジークの言っている意味に気付いたのだ。

 多少間違っていようがよしとしよう。


「じゃ、じゃあ、どきませんっ! 今日はここにいたいですっ!」

「なにを~?」


 その意思を汲み取るジーシェイ。

 マーキィは嬉しそうにその手を引っ張る。

 ジーシェイはそれに抵抗する。


「おいおい、暴れるなよ?」


 ジークはそう言いながら、幸せそうに笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ