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第51話 マーキィの友達

「マー、そう言えば今日、ルビアさんたちと遊ぶんでしょ?」

「そう言えばそうだっけ?」


 マーキィの食事中、エミルンが本人が忘れているであろう予定を指摘する。

 そして、やはり忘れていたようだ。


「ルビア、とは誰だ?」

「あ、えっと……マ、マーのお友達で、ヴィア男爵次女の子……」


 多少慣れては来ているのだが、ジークが不意に話しかけると、多少慌ててしまうエミルン。


「ふむ、マーキィにも友人がいたのだな」

「いるよ! 沢山いるよ!」

「そうなのか?」


 前に同年代が少ないと聞いていたが、そんなに沢山いるのだろうか?

 いや、オーヴォルを考えると、それは同年代と言える者ではないかも知れない。


「ちなみに、ルビア殿はいくつだ?」

「確か15歳?」


 同年代だった。

 14歳のマーキィとほぼ同じ歳の少女だった。


「それは珍しいな。今日は楽しんでくるといい」

「どうして他人事なの? パパも一緒に行くんだよ?」

「いや、それはないだろう」


 流石に子供同士の遊びに親がついて行くのは違うだろう。


「でも、今日はパパと遊ぶ日! パパとルビア遊ぶ!」

「それは流石に先方に悪い。遊ぶ日はまた別に」

「駄目! 今日遊ぶって決めた! 絶対今日遊ぶの!」


「……私はいいが、そのルビア殿に了承して貰ってからだ。そうでなければ先方に悪い」

「分かった! じゃ、行ってくる!」


 言うが早いか、マーキィは立ち上がり、出て行った。


「こら! 食器は片づけなさい!」


 エミルンが叱るが、マーキィは既に玄関に向かっていた。


「直接聞きに入くなら、そのまま遊んでくればいいのではないか?」


 ジークの言葉に、エミルンは返そうとして、気の利いた言葉が浮かばないのか、マーキィの食器をいそいそと片づけていた。



「いいって! 歓迎するって!」


 しばらくして、エミルンが走って戻ってきた。

 ずっと走っていたのだろうが、息すら乱れていない。

 この子の潜在能力(ポテンシャル)は、本当に魔法なのだろうか?


「そうか……」


 ジークとしては出来ればお断りして欲しかったのだが、了承されたのであれば仕方がない。

 少女たちの遊びの監視役とでも思い、覚悟を決める。


「じゃ、行くよ!」

「うむ」


 ジークはルビアという少女の待つ彼女の家、ヴィア男爵邸へと赴くことになった。


「ここだよ!」


 そこは、アルメル邸からほど近い、まあ確かに走ってものを聞けるくらいの距離にある屋敷だった。

 家族と数人の召使いのみが暮らすことのみを考えられ、今やその召使いもいないアルメル邸と比べ、おそらく大人数の召使いを抱え、更に急な客人の宿泊も歓迎していそうな大きな佇まいのヴェア男爵邸。


 屋敷としては格の違う大きさだった。

 ジークの経験上、大きな屋敷を構える者は、下々の者に優しく、そして、同じ貴族相手には敵味方を考えつつ、味方相手でも意地や見栄が伺えることが多かった。


 もちろん、前のベックのようにそうではないこともあるのだが、この家の者は一応は貴族であるマーキィの親である自分をどう見るのだろうか?

 15歳の少女には、自分の立場や周囲との比較というものが既に可能なはずだ。

 ルビアという少女は、どう出るだろう?


「こーんにーちわー!」


 マーキィがおおよそ貴族令嬢とは思えない呼び方で、屋敷の中に呼びかける。


「お待ちしておりました、マーキィ様と御尊父様」


 深々と頭を下げるのは、熟年の執事。

 貴人に仕え続けて歳を重ねたような男性だ。


「こんにちはー、ジルムさん!」

「ルビア様達はが奥でお待ちです」

「うん! さっき来たから知ってる!」


「ご案内いたします」

「いいよ、分かってるし!」


 そう言って、先に走っていく。


「ご迷惑をおかけしておるようで申し訳ありません。言って聞かせましょう」

「問題ございません。ご案内いたします」


 そう言って、ジークのみを誘導する。

 その屋敷は内装も派手ではなく、趣味のよい調度がそこかしこに並んでいる。

 成り上がりではない生粋の貴族の屋敷だ。


「こちらとなります」


 ドアを開け、手前で頭を下げる執事ジルム。


「ありがとうございます」


 それに礼を言い、奥に入るジーク。


「失礼いたします、ご迷惑を承知で参りました、マーキィの父ジークと申します。本日はお誘いいただきありがとうございました」


 少女とはいえ相手は貴族だ。

 ジークは貴族への礼に則り挨拶をする。


「ようこそお越しいただきました、ジーク様。歓迎いたしますわ」


 お茶会のようなテーブルの向こう。

 穏やかに微笑む少女は、マーキィの一つ上というだけには思えない物腰の穏やかな少女だった。

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