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第37話 師匠探しはまたも難しい

「父よ、それで、私の潜在能力(ポテンシャル)とは何だったのだ?」

「そうだな……」


 何と言えばいいだろう?

 オーヴォルの潜在能力(ポテンシャル)は、一言で言えば、怪力だ。


 だが、こう見えても十歳の少女。

 一般的な少女とは言動が異なるとはいえ、それは表面的な話であり、大きな違いなないだろう。

 そんな彼女に「お前の潜在能力(ポテンシャル)は怪力だ」と言うのは憚られる。

 だから、少し誤魔化して言うべきだろう。


「お前の潜在能力(ポテンシャル)は……力強い腕力からの、鋭い攻撃だ」


 だが、ジークも冒険と戦いに生きてきた身であり、学があるわけではない。

 ボキャブラリーも豊富というわけでもなく、彼の中で出来る限りニュアンスを避けたつもりだったが、ユーリィが苦笑しているのを見るに、失敗しているのだろう。


「ふむ……」


 オーヴォルが腕を組んで考える。

 様にはならないが、微笑ましかった。


「それは素晴らしい。鋭い攻撃なのだから凄いのだろうな」


 オーヴォルはおそらく喜んでいるのだろう。

 おそらく、よく分かっておらず、なんだか格好いい、という程度の理解だろう、ある意味誤魔化せたと言ってもいいだろう。


「そうだな、今後はそれを鍛えることにしようか」

「うむ。それでどうすればいいのだ?」

「それは……これから決める話だ」


 ふと、考えてみた。

 怪力の師。

 いや、ただの怪力なら、効率などの問題はあるだろうが一人で修得することも可能だろう。


 問題は、その怪力を使った戦闘の技を誰が教えるか、だ。

 ジークが教えられるだろうか?

 いや、腕力を武器にした攻撃法、というものを得意と言えるほどではない。

 そもそも、彼は若い頃から別に怪力ではないのだ。


 そして、これまで会って来た者たちの中にも怪力、という者は、気に留めるレベルではいなかった。

 いや大昔に巨大な武器を操る小柄な女戦士と親しくなったことはあるが、今どこで何をしているのかは分からない。


 それに、「大きな武器を軽々操る」事と「怪力」は似て非なるものだ。

 彼女を連れてきて、オーヴォルの師匠にしてもそれが正しい選択かも分からない。


 そもそも、他に腕力を売りにする者は技術のないものが多く、その剣技は非常に雑であることが多いから、大切な娘の師匠にするのは難しい。


「ユーリィ」

「言いたいことは分かる。彼女の師匠だな?」

「ああ、頼めるか?」


 ユーリィは腕を組んで考え、そして苦笑する。


「なかなか難しいとは思うが……分かった、探してみよう」

「頼む。私も探してみるし、当たっても見るが……」


 怪力を売りにした技など、それこそ本当に人間の技なのだろうか?

 人間の力など、鍛えても魔物には及ばないことが殆どだ。


 オーヴォルにはそんな稀有な素質がある。

 そう、稀有なのだ。

 そう考えると、怪力と技を売りにするのは、それこそ魔物の方が多いのではないだろうか?


 では、魔物にオーヴォルの師匠になってもらうのか?

 いやいや、それこそ、冗談ではない。

 大切な娘を魔物などには任せられない。


 難しい。

 これは、もしかするとこれまで姉妹の師匠を探してきた中で、一番の難問ではないだろうか?

 そう思うと、頭を抱えたくもなる。

 だが、それでも──。


「父よ、早く血を流すのだ」

「? 何故だ?」

「そのままでは抱擁が出来ん」


 オーヴォルが、万歳の手をしては引っ込めている。

 その様子は、とても微笑ましい。


「そうか……そうだな」


 可愛い、可愛いオーヴォル。

 この子のためなら、困難であっても師匠を見つけなければならない。

 そう思うジークだった。


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