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第17話 ついて来るのか?

「魔物退治?」

「はい、可能でしたらお願いいたしたいと存じまして」

「ふむ……」


 ジークは腕を組んで考える。

 アルメル邸の迎賓の間。

 慇懃な訪問者はジークを訪ねて来た。


 ここにジークが、いや魔物退治が出来そうな者がいることはまだ知っている者は少ないはずだ。

 その上で訪ねて来た彼が最初に言ったのは「ユーリィ殿のご紹介で参りました」とのことだった。


 そう言えばジークは彼女に、街を護る貢献をしたい、と言っていた。

 そこからちゃんと伝えてくれたのだろう。


「ちなみに魔物には見当はついているのですか?」

「はい、おそらく元はゴブリンだと思われますが」

「ゴブリンか……。まあ、野犬に毛が生えたレベルですね。数にもよりますが、問題ないと思います」


「それが、数はそう多くはないのですが、数匹知能の発達したものがおりまして、ほぼ人間に近い上、更に一匹、ボスと思われる個体は武器も使うとのことです」

「武器……。どのような武器か見当は付きますか?」

細身剣(レイピア)のようです」


細身剣(レイピア)か……」


 腕を組むジーク。


「あれ? あ、こ、こんにちは……」


 ジークとシェラナ、そして、客人が話していると、家族しかいないと思ってエミルンが来て慌てて隠れる。

 そして、壁の向こうからギリギリ挨拶をした。


「な、何があったの?」


 エミルンは、シェラナに訊く。


「お父さまにゴブリン退治の依頼があったのです」

「え?」


 話を聞いて、どうやらエミルンは興味を持ったようだ。


「それで、いかがですか?」

「その程度なら問題ないです。年老いたとはいえ、ゴブリンに負けることはないでしょう」

「ありがとうございます。では、詳細はまた事務所の方にお越しください」


「分かりました。わざわざお越しいただき、ありがとうございました」

「では、失礼いたします」

「ありがとうございました」


 シェラナが深々と頭を下げ、客人を送る。


「ゴブリン退治か。最近はよくやったものだな」


 先程ゴブリンを犬のようなものだ、と評したが、もちろんゴブリンと犬は違う。

 ただ、犬と同じように、彼らは人間に害をなす者もいれば、なさない者もいるのだ。

 特に群れとなると人を襲う事もある。


 更に、稀に知性を持つ者も現れるのだ。

 それらはゴブリンたちを従え、大軍を作って人の地を襲う事もある。


 だが、それはまだ、頭の悪いゴブリンだ。

 本当に賢いそれは、こっそりと作物や家畜を襲うのだ。

 そうして、人間に生活を続けさせ、新たな食糧を生産させて奪うのだ。


 だが、人間に全く危害がないわけではなく、奪いに来たゴブリンたちを追い返そうとすると、場合によっては襲われることもあるのだ。

 だから、下手に追い返すことも出来ない。


 であるから警備の出番なのだ。

 警備は追い払うだけではなく、その巣まで向かい全滅させて来るのが仕事だ。

 であるから、ジークのような冒険者にはちょうどいい仕事なのだ。


「あ、あのさ」

「何だ?」


 エミルンが遠慮がちにジークに言う。


「私も、連れて行ってくれない? その退治に」

「それは駄目だ。私は強くない。ゴブリンを退治をしつつ、お前を守ることは難しい」


 もちろんその程度は可能だとは思う。

 老いたとはいえ、ゴブリン相手に後れを取るジークではない。

 だが、このような場合に何があるかは分からないし、何かがあった場合、彼女を、無傷で守り切ることがどこまで出来るかどうか分からない。


「自分で出来る事はするから! お願い! 私も戦いを目の当たりで見たいの!」

「それは、確かに、見た方が剣術は向上するとは思うが……」


「連れて行っては貰えませんか?」


 今度はシェラナから頼まれる。


「何かあっても帰って来れば私も魔法医を学んでおりますし、手に負えなければ師匠にお願いすることも出来ます」

「だが、だからと言って──」

「それに──」


 シェラナが顔を寄せて来る


「いざとなれば、この子の潜在能力(ポテンシャル)を使うことも出来ますわ」

「それは……っ!?」


 小声でそう告げた後、シェラナはジークの頬にキスをする。

 顔を見ると悪戯に成功したように微笑んでいる。


「はあ……分かった。連れて行こう。だが、ある程度は自分の身を守るようにしてくれ」

「分かった! ありがとう!」


 嬉しそうに微笑むエミルン。


 その後後から来たマーキィやオーヴォルが来て一緒について行きたいと言われたが、それは断ることにした。


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