第97話 〜早紀の迷い〜
サキ視点のお話です。
うちには最近彼氏が出来た。名前は八杉瑠偉さん、あのタヌキ親父の息子やけどめっちゃ紳士で男前やねん。初めて会うたその日に真っ赤なバラをプレゼントされ、接客が良かったと褒めてくれた上に結婚を前提としたお付き合いをしてほしいって告られてん。んでもうちバツイチやしタヌキ親父には嫌われとるからなかなか前途多難な気もすんねん。
瑠偉さんはデートん時も紳士でいっつも完璧なエスコートをしてくれはる、女としてはこういうんもの凄うときめくねんけど陣ちゃんはてっぺにもっと優しゅう接さんといかんとか言うてくんねん。
『息子の土下座姿を見せられるおばちゃんの身にもなってみ』
陣ちゃんがそう言うたからおばちゃんにもてっぺにも謝ったのに二人共まともに取り合うてくれん、コダマなんか居候のくせに『何を謝る?』ってクッソ生意気な事吐かしおってな。そんなん陣ちゃんに謝れ言われたからに決まっとるやん、それ以外何があんの? 悪いんはうちやのうててっぺやのに。
それ以来何が気に入らんのんか有岡家の連中うちを締め出して挨拶もマトモにしてくれへんねん、しかも最近てっぺに子持ちの女がちょろちょろしくさって目障りでしゃあない。子供放っぽって繁華街でホステスして客に色目使うとるあばずれやないか、ちょっとばっかし綺麗な顔しとるか知らんけどまぁ品の無い女でな、てっぺを軽うたぶらかして貢いでもらおういう魂胆なんちがうかな?アイツは腐っても公務員、収入は安定しとるし見てくれもまぁ悪ないしな。
『てっぺと一緒になるんはお前や、サキ』
最近陣ちゃんは事ある毎にそう言うてくる、うち歳下は対象外なんやけどぶっちゃけあのあばずれの毒牙には掛かってほしないねん。
『それは寂しい思うとる証拠や。お前にはてっペが、てっぺにはお前が必要やねん』
陣ちゃんはいつだって正しい事しか言わんから実はそうなんかも知れん、せやったらうち瑠偉さんとはどないしたらええんやろか?
『結婚式で盛大に振ってやればええ、それまではお前の美貌であの男を骨抜きにしてまい』
陣ちゃんはそう言うてニヤッと笑うてから誰も知らんあん時の真実いうやつを教えてくれた。
十五年前、てっぺが校則違反を犯して繁華街に出向いとった時にとある女が財布を盗まれた現場に立ち会うたらしい。てっぺは多分陣ちゃんやない事に気付いとったけど、タヌキ親父のせっこい茶番劇に翻弄されて有耶無耶にされてしもうたんやって。それに腹が立った陣ちゃんはわざと罪を認めてタヌキ親父を表向きは勝たしたったんや。低レベルな見栄とプライドに拘って未成年の陣ちゃんを陥れた八杉一家をうちは許さん、玲皇くんにまで恨みは無いけど真実は必ず暴かれるしお天道様はちゃんと見とんねん。こうなったらうちがみんなに真相を報しめたる、陣ちゃんかててっぺかてきっとそれを望んどるはずや。




