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第88話 〜正月早々忙しない〜

「長谷川、こんなんしか無いわ」


 俺はお見合い写真の入りそうな封筒を持ってリビングに戻る。いつの間にかコダマと並んで座っとるおかんが長谷川に写真を突き返し、多分却下された事で項垂れとる後輩。


「長谷川?」


「せんぱぁい」


 お前何で泣きそうになっとんねん? あくまでもおかんとコダマが却下したまでの話……俺も却下するけども。


「何やかんやで嫁の言いなりなだけや、そんなんの都合で息子の人生左右されたない」


「俺らかて先輩のことちゃんと考えてますよぉ」


「せめててっぺの意志と噛み合うてからにしてくれるか?」


 分かりました。長谷川はデカい体を縮こませ、おかんに突き返された写真を受け取ってとぼとぼと帰っていった。

 ‎はぁ〜、俺らは三人揃って盛大なため息を吐く。しっかし一昨日の『かわい食堂』先代女将の話と言い今の事と言い、俺の思い知らんとこで勝手に盛り上がるんやめてほしいわ。


「この後婦人会の『七草粥試食会』の打ち合わせでそこいらのおばはん共が来んねんけど。何か思いやられそうやわ」


 おかんはさっき使うた湯呑みを洗うとる。


「てっぺ、避難がてら出掛けてきんか」


 あ〜俺家でゆっくりしたかってんけど……さっき神社で引いたおみくじも凶やったし。


「ならば私も共に参ろうぞ、デートであるな」


 コダマはニヤニヤしながら俺を見てくる、一緒に出るだけなら構わんけどそう言われると嫌や。


「あぁええやん、車でショッピングモールにでも行って時間潰してき」


 おかんもそれ乗るな。コダマは良い案だとすっかり私物化しとる和室に入っていく。


「さっさと支度して出とかんと、捕まったら終わりやで」


 まぁしゃあないか。俺も二階に上がって支度を済ませ、おばはん共が来んうちにコダマと地域最大都市にあるショッピングモールに行く事になった。

 


 でまぁショッピングモールは家族連れやカップルでそれなりに混んどった。かたや三十路越えの男二人、侘しいにも程があるな。


「てっぺよ、恋人同士であれば手を繋ぐものであろう」


「何でお前と繋がなあかんねん」

 

 もうこの手の展開に話持っていくんやめろや。


「もうてっぺったら恥ずかしがり屋さんなんだから」


「気持ち悪い、ほかすぞお前」


 嫌だ。コダマは結構な方向音痴やからそれでどうにか大人しくなる、金はむしろ潤沢に持っとるんやから誰かに聞けば帰れるんやけど、コイツ変なとこデリケートで知らん人間によう声掛けせんねん。それで世界中を飛び回れとった意味が俺には分からんのやけど。

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