第61話 〜スターが家に来とります〜
「こんばんは、昨日はご迷惑お掛けしました」
男性は俺に向け丁寧に頭を下げてくる。
「こちらこそ失礼な態度を取り申し訳ありません」
俺も頭を下げ、少し間を取ってから顔を上げる。ん? えっ? マジで? 随分雰囲気変わっとって昨夜は気付かんかったけど、この人俺ん中では超有名人やんけ!
「片平景悟さん?」
「知ってくれてたんだ、ただの過去の栄光だけど嬉しいな」
いえいえあなたのんはめっちゃハイレベルです! 片平さんは俺の三つ歳上で、東北の超野球名門校で甲子園出場も春夏三回果たしとるスター選手やったんやで!しかもU―18の日本代表にかて選ばれとるし大学野球でも花形選手で……あかん変な興奮してきて頭騒がしなってった。
「てっぺのそんな顔初めて見たぞ」
コダマは面白いもんでも見るような視線を向けてくるが、今お前を相手しとる場合やないねん。
「一度でも私に向けてほしいぞ、妬けるではないか」
気持ち悪いこと言うな、お前の発言は時々ホモっぽいねん。しかもそれを片平さんが居る前で……あ〜野球せん奴には分からんのやろなぁこの感動が!
「児玉君って有岡君の事相当好きなんだね」
片平さん、そこは一切広げんといてください。
「無論、てっぺにそのような顔をさせるお主は最早敵であるぞ」
「それは参ったな」
片平さんはコダマの言葉に気を害する訳でもなく普通に楽しんでらっしゃるが、こんな男と同類扱いされるんはかなり嫌や。
「お前さっきから気持ち悪いねん」
「何を言うか、私の多大なる愛情が伝わっておらぬのか?」
「知るかそんなもん。それより片平さん、わざわざ……」
ご丁寧にと言おうとしたところでおかんが口を挟んできた。
「それだけやないらしいんよてっぺ」
へっ? 俺こんなスターとの接点これ以外無いけど?
「で、あんたらいつまで突っ立っとんの?」
おかんにそう言われて俺はハッとなる。すんません俺が座らんばっかりにお客人を立たせっ放しにしとりました。俺が慌ててコダマの隣の椅子に座ると、それを見てから片平さんも椅子に座り直した。
「実は俺、君のこと知ってるんだ。一方的にだけど」
は? 何で? 俺超ど田舎高校の三流投手やってんで。
「まさか、何のご冗談ですか?」
「冗談じゃないんだけどね。君北野外大付相手に完封勝利したよね? アレ結構話題になったんだよ」
あ〜初戦の出来過ぎまぐれピッチング……あれ再現せぇ言われても絶対無理や。
「いえあんなんただの……」
「まぐれで勝てるほどのへぼチームじゃないよ、母校の大学野球部でも君をスカウトすることはその前から決まってたんだ」




