第4話 〜駄目僧侶→吟遊詩人?〜
あの後店屋もんで晩飯を済ませ、俺はとっとと風呂に入ってとっとと寝る事にした。おかんとコダマは居間で二人いつまでもとめどなく喋り倒しとった。パンの件は土曜日に作る事を約束させられ、それまでは厄介になると何故か偉そうに宣告してきやがった。
「悟りを開いた俺様にパンを施せるのだ、感謝するがいい」
翌朝一番、挨拶もそこそこに吐かしやがった台詞がコレや。
「嫌や、俺には何のメリットも無い」
デメリット以外何がある言うんや? お前のわがままで休日の貴重な三時間は潰れる、今日が木曜日やから確実に数日間の静寂が無くなる、そして有岡家のエンゲル係数が跳ね上がる、感謝どころか文句しか出てこんわ。
「てっぺよ、友に冷た過ぎやしないか?」
「いや別に友達やない」
俺友達認証されてたんや、悪い気はせんが嬉しくもない。
「じゃあ何だ? ソウルメイトか?」
「寧ろカルマメイトやな、お前は俺の邪魔しかせん」
「邪魔ではない、心の中で泣きながら試練を与え成長を促してやってるのだ」
要らんわそんなもん、ってかチベットでの修業がどうたらのくだりから喋り方変わっとるやないか。
「お前には俺の多大なる愛情が分からないのか?」
「知りとうもないわそんなもん、気持ち悪い事言うな」
何でいちいちホモっぽい言葉チョイスしてくんねん? 俺はマイノリティではない。お前そっちなら早めに言うてくれ、他を当たれと一網打尽にお断りしたるから。
「二人ともさっさと食いや、ええ加減片付かんわ」
この家で天下を取っているのはおかんである。俺たちは一切逆らう事無く黙々と食事を摂り、俺は支度をして普段通り職場に向かった。
この日帰宅するとおかんからコダマを同居人にするという地獄の宣告をされてしまった。何でも今は吟遊詩人とかいう肩書でSNSだの動画サイトだのに戯言だか作品だか分からんもんを投稿してそれなりの収入を得ているらしい。そう言えばだいぶ昔に幼馴染がそんなこと言うてたな……あの男その世界では結構な有名人で億単位のフォロワーがいるらしく、外タレの何某さんがフォローしただのでネットニュースの話題を掻っ攫った事もあるとか何とか。俺は奴の(多分)ふざけまくっているであろう代物は見た事も聞いた事も無いけどな。
「生活費入れてくれるんやからええやろ? デリケートなあの子にホテル生活は多分無理や」
確かに変なとこデリケートだったりするんは事実だが、あちこちを放浪しまくっとるコダマであれば寧ろホテル生活の方が気楽やろ? けどおかんは家の中が明るなってええわぁと楽しそうにしとるからさすがにそこに水はよう差さんかった。