第57話 〜真打ち降臨?〜
「それやったらそれで誠意言うもんがあるやろ?てっぺ」
この顔しとる時のサキちゃんはろくなこと言わん。
「……」
もちろん内容なんか聞いたらん、俺は無視したまませっせとお好み焼きを焼く。
「ものには言い方いうもんがある、帰ってほしいんなら土下座の一つくらいしてみんかい」
この人には何を言うても無駄なんか……顔だけ綺麗なケダモノに俺は心底失望した。もうどうでもええ、それで済むんならと俺は手に持ってたボウルを置いて腰を落とそうとすると腕を掴まれぐっと持ち上げられた。この感じやとおかんやない、コダマも移動してない、ってことは……。
「そんなことせんでええ、てっぺ」
「陣ちゃん?」
「今日は帰り、サキ」
「けど陣ちゃん」
サキちゃんはコロッと態度を変えてあの人を見上げとる。さっきの俺への視線も見事に隠して涙まで浮かべとるわ、もう俺には理解出来ん。
「てっぺの態度が悪かったから」
さっき『土下座せぇ』言うた女とは思えんぶりっ子口調になっとるやないか、コダマは冷たい視線をサキちゃんに向け、おかんは俺の真後ろで盛大なため息を吐いとる。
「いや根本的に俺が悪かってん、エラーメッセージの受信通知をてっぺの返信と勘違いしとったんや」
そのケータイどんだけ古いねんとは思うたけど、今ここではどうでもええことなんで黙っとく。あの人はサキちゃんをじっと見据え、今日は帰りと諭しとる。
「分かった」
どうやらあの人の言うことは今でもちゃんと聞くらしい、サキちゃんはしゅんとした表情で長窓に向かう。
「また来るわ陣ちゃん」
「当分その面晒しな、ここの家主は私や」
おかんはサキちゃんが外に出てスリッパを履いとる間にびしゃんと窓を閉め切り鍵をかけた。そして怒りの滲んだ笑顔を見せてから陣ちゃんと声を掛けた。
「悪いけどあんたの分あらへんわ、どっか外で済ませてくれるか?」
「おばちゃん?」
意外やとでも言いたげな顔をするあの人、正直俺もその言葉は意外やったから思わずおかんを見てしまう。窓も外におるサキちゃんにも聞こえとったみたいで俺よりも驚いた表情をしとる。コダマは……至って平常運転、機嫌良うお好み焼きを食うてはる。
「このところマトモに家でご飯食べはらんかったやろ? せやから今日は三人分しか用意してなかったてん、堪忍な」
おかんの容赦無いひと言にあの人は分かりましたと言うて家を出て行った。




